予備知識ゼロからでもわかる『永遠の0』 号泣必至の大ヒット作を徹底解剖!

原作は520万部を超えるベストセラー。豪華キャストの共演、VFXを駆使したリアルな戦闘シーンなどさまざまな魅力によって87億円を超える興収を記録した映画『永遠の0』。いま、この時代に生きていることに感謝したくなる、受け継いだ愛を次の世代へ伝えたくなる、あの感動をもう一度!(文:新谷 里映)

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なぜ『永遠の0』は大ヒットしたのか? その背景には、ヒットにつながる5つのポイントがあった。ストーリー、キャスト、映像、謎、主題歌のすべてが絶妙に紡がれるからこそ生まれた感動を徹底解剖! さらに、単なる歴史映画ではない愛の物語にも迫る!

百田尚樹『永遠の0』(太田出版)は太平洋戦争や特攻を描きながらも、その中心にあるのはひとりの人間の強い“愛”。だからこそ、発売当初は年配の男性が多かった読者層は徐々に変化し幅を広げ、女性や若者の読者を増やしていった。現在では累計520万部を超える国民的ベストラーとしてそのタイトルを刻んでいる。天才的な操縦技術持ちつつも生きて妻子のもとに帰ることに執着し続けた宮部久蔵(岡田准一)の家族を想う強い“愛”、仲間や部下の命を大切に想う“愛”が、孫の世代まで受け継がれていく。その愛の連鎖に、人は涙を流さずにはいられない!

確かな演技力で日本映画界になくてはならない存在の岡田准一が宮部を、彼の妻の松乃を井上真央が演じるほか、三浦春馬、濱田岳、新井浩文、染谷将太、三浦貴大、上田竜也、吹石一恵など、主役級の若手実力派俳優たちが脇を固め、さらに、田中泯、風吹ジュン、橋爪功、夏八木勲といったベテラン俳優たちがしっかりと支える。現代パートと60年前の戦時中パート、2つの時間軸でストーリーが進んでいくこともあり、たとえば、染谷将太の役柄が現代ではどのベテラン俳優が演じているのか──1つの役を年代の違う2人の俳優が演じている、そんな作品構成もみどころ!

現代から60年前にタイムスリップをして、まるで自分自身がゼロ戦に乗っているかのような臨場感があるからこそ宮部や若きパイロットたちの想いがリアルに伝わってくる。その戦闘シーンが出来上がるまでにはいくつもの苦労があった。特に光にこだわった山崎監督は、まずはヘリに乗って空撮でさまざまな映像素材を撮り、そこにコックピットにいる俳優の芝居部分を撮影していったそう。また、監督がこれまでに培ってきたVFX技術はゼロ戦の飛行に存分に活かされ、真珠湾やミッドウェーの戦いは歴史資料を元に忠実にVFXで映像化。戦闘シーンは本当にリアルだ!

天才的な操縦技術を持っていながらも「臆病者」と呼ばれた宮部久蔵。実祖父は本当はどんな人だったのか──孫の健太郎が姉と一緒に当時を知る人たちを訪ねていくなかで、宮部は、妻子を愛していたからこそ彼らのために生還したかったことや、部下を大切に思っていたからこそ特攻で命を落としていく彼らを救えないやるせなさがあったことが徐々に明かされていく。そして、なぜ最後の最後で宮部はなぜ“あの決断”をしたのか? 彼の本心は観客それぞれの受け取り方にゆだねられ、ラストシーンでの宮部が見せる喜怒哀楽すべてが混ざり合ったような表情から自分なりの答えを見つけることで、謎は着地できるはず!

エンディングで流れる主題歌「螢」は、映画に強く共感した桑田佳祐が書き下ろした愛にあふれるバラード。ゼロ戦と共に迷いなく敵地に向かっていく宮部の想いを自分なりに受け止めながらこの「螢」を聴くと、彼らのように命をかけて戦った人たちがいるからこそ今の私たちがいる、そんな気持ちで胸がいっぱいになる。それはやはり、宮部の家族や仲間を想う気持ち、それが一貫して映画のなかで描かれていたからで──。「青空は悲しい空〜」と歌詞にあるように、青空を見上げるとそこに宮部がいそうな、そんな気さえしてくる“泣ける”主題歌だ!

佐伯健太郎(三浦春馬)は、祖母・松乃の葬儀の日に、“血縁上の祖父”が別にいることを知らされる。実祖父である宮部久蔵(岡田准一)がどんな人なのか知りたい、という姉・慶子(吹石一恵)と一緒に60年前の太平洋戦争で宮部と共に戦争を経験した人たちのもとを訪ねることにする。そして、健太郎と慶子は実祖父の宮部が天才的な操縦技術を持ちゼロ戦パイロットとして戦っていたが、仲間からは「臆病者」と蔑まれ生還することに執着していた事実を知る。

戦争大作として異例の、87億円突破の大ヒットを記録した岡田准一主演の『永遠の0』。本作のメガホンをとり、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどで多くの観客を魅了してきた山崎貴監督に独占インタビュー。デジタル時代の申し子、山崎監督が『永遠の0』を語り尽くす。
(取材・写真:望月ふみ)

岡田くんは本当に宮部を生きていた

今回、ブルーレイ&DVDがリリースとなりますが、劇場公開も大ヒットを記録しました。

企画が動き始めた段階では、百田尚樹さんの原作もまだそこまでヒットしていなかったんです。それが作品を作っていくうちに、原作がベストセラーになっていった。これはいい風が吹いてきたなと(笑)。でも正直、ここまで映画が当たるとは思っていなかったですね。ただ僕は職業監督としてエンターテインメントを作っているとの意識を持っているので、多くの人に観ていただくことは望んでいました。

しかも幅広い層が足を運びました。

若い人たちにも観てもらいたいというのは、狙っていたことでした。ただ戦争映画ですからね。どうかなぁという気持ちもありましたけれど、第二次世界大戦というのは若者が犠牲になった戦争だと思っていたので、若者の映画にしたかったし、若者に観てもらいたかったんです。

「生きて帰りたい」と公言する主人公・宮部久蔵を岡田准一さんが演じました。狂気に飲み込まれていく様は、観ているこちら側も辛くなりました。

岡田くんはリアル宮部でした。クランクインした直後くらいから、狂気に駆られていく過程についてはポイントですからという話はしていました。一度、狂気に飲み込まれた状態にならないと、最後の決断はできないだろうから。岡田くんもそこがポイントだというのは分かっていたので、撮影日が近づくにしたがって痩せてくるし、目つきも険しくなってくる。ちょっと話しかけづらかったですね。本当に宮部を生きていたんじゃないかと思います。

今回、撮影に入る前に空撮に行かれたとか。

はい。宮部さんの職場じゃないですか、空の上は。だから宮部さんの職場訪問をしたかったんです。空にいるということがどういうことなのか、あるいは海面スレスレを飛ぶってどういうことなのか、まず体感したかった。空を飛んでいる映画を撮るのに、自分が飛ばずに撮るのはちょっとなと思ったので。奄美大島のほうに行ってヘリコプターで雲をかなり撮りました。無理を言ったと思いますが、わがままを通すところは通そうと。今回、空を撮るというのはすごく大事なことだったんです。超お高いタクシーに乗っているようなものでしたけど、そこは気づかないようにしました(笑)。

ARで「きゃ~」って言ってください(笑)

そもそも監督が映画やVFXに魅了されたきっかけは何だったのでしょうか。

最初は『ゴジラ』とか『ウルトラマン』なんかですよね。そこから70年代末期に『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』といったいまだに歴史に残るような素晴らしいVFX作品がいっぱいやってきた。そういうのを観ちゃうと自分らでもできるんじゃないかって勘違いしちゃうんですよ。それで中学の文化祭のときに8ミリで撮ったものを上映した。物珍しさと知り合いが出てるってことで大評判になりまして。実際には知り合いが出ているから笑えるというだけなんですよ。でも押すな押すなの大騒ぎになっているのを観て、人生が狂いました(笑)。いま思えば、僕がエンターテインメントにこだわるのは、その時の快感があるからかもしれません。

ブルーレイ、DVDがリリースになりますが、監督も豪華パッケージ版はご覧になられました?

いやー、(初回生産限定の)ブックレットが豪華ですよね。(実際に手に取りながら)すごい。とにかく立派でボリュームたっぷり。これは自分でも欲しいですね。あ、ARはご覧になりました?

はい、スマホで拝見しまして。おお~っと声を上げてしまいました。
※特典封入の“ARカード”では専用アプリをダウンロードし、カードにスマートフォンをかざすと空母・赤城や零戦が映し出される限定コンテンツを見ることができる

タブレットで見るとさらにすごいですよ。1日中でも見ていられますね。

“ARカード”は監督が監修されたとのことですが、こだわられた理由を教えてください。

BUMP OF CHICKENのライナーノーツにARを付ける作業をひと通り一緒にやって、それがすごくおもしろかったんです。デジタル時代の飛び出す絵本みたいで。これはいいと。そんなときに『永遠の0』のDVDが出るってことになって、ARで赤城を作れたらたまらないぞと(笑)。DVDを、しかも豪華版を買ってくれる人は自分にとって、大好きな人ですから、その方たちに「きゃ~」って言ってもらえたら嬉しいと思ったんです。

本当に「わ~!」っとなりました(笑)。

本編に関しては、心行くまで何度も観て欲しいですし、それに加えて(ARで)家に赤城がやってきますよっていう(笑)。写真も撮れますから、ぜひSNSにも投稿していただいて(笑)。最新テクノロジーに触れるチャンスでもありますし。『永遠の0』と最新テクノロジーがくっついている感じも不思議ですしね。ちなみにこの作品では零戦の実機を作りましたが、中の複雑な部品は3Dプリンターで作ったんですよ。

山崎貴

1964年6月12日生まれ、長野県出身。2000年、『ジュブナイル』で監督デビュー。05年に『ALWAYS 三丁目の夕日』で昭和の街並みをVFXで再現し、温かな人間ドラマを描いて各映画賞を総なめにした。ほか監督作に『BALLAD 名もなき恋のうた』『SPACE BATTLESHIP ヤマト』など。CG、VFXによる卓越した映像表現とドラマを両立させることのできる稀有な存在。公開待機作に『STAND BY ME ドラえもん』『寄生獣 PART1/ PART2』が控える。