子どもから大人まで日本中の“男子”が憧れる世紀の特撮ヒーロー『ウルトラマン』。1966年にテレビ放送が始まり、 今年で50年を迎える。そんな記念すべき年に公開され、大ヒットを記録した映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』でメガホンをとり、テレビシリーズ最新作『ウルトラマンオーブ』でもメイン監督を務める田口清隆監督と、『シン・ゴジラ』の公開が控える樋口真嗣監督との夢の対談が実現!『ウルトラマン』をこよなく愛する2人から果たして何が飛び出すのか?(文・坂田正樹)
昨年の『ウルトラマンX』に続き、シリーズ最新作『ウルトラマンオーブ』でもメガホンを取る田口清隆監督と、初のブルーレイ化で話題沸騰中の『ウルトラマンパワード』の制作に携わり、映画『シン・ゴジラ』の公開を目前に控えた樋口真嗣監督。特撮作品をこよなく愛する両雄が、愛してやまない「ウルトラマン」への熱き思い、さらには自身が携わった作品にまつわる裏話などを熱く語り合った。(取材・文・写真:坂田正樹)
田口:実は僕を特撮の世界に引き入れてくれたのは、樋口さんなんです。僕がただの特撮マニアの高校生だった頃、平成ガメラシリーズの特撮樋口組のメイキングを見て凄く面白くて、「これは絶対に特撮モノを仕事にする!」と決心しました。その後、(北海道から)上京して、特撮の勉強をするために日活芸術学院に入学したのですが、最初の現場が、樋口さんが特技監督を務める『さくや妖怪伝』という映画だったんです。これもご縁ですね。憧れの樋口さんとの初対面が監督と助監督見習いだったので、まさに僕の“師匠”です。
田口:メイキング映像って、面白いところだけをかいつまんで編集していると思っていたんですが、樋口さんの現場はみんなゲラゲラ笑いながらやっていて、本当に映像のままだったので逆に驚きました(笑)。
樋口:えぇ!? そうだった? 『さくや妖怪伝』の時は、僕の中でも屈指の緊張感あふれる現場だったんだけどなぁ。松坂慶子さんがミニチュアセットで大暴れする内容でしたからね。
田口:確かに、何かあったらお前責任取れないから松坂さんには近づくなとは言われていましたね(笑)。でも、「近づくな!」と言われているのに、「呼びに行け!」とも言われ、どうしていいかわからずスタジオと控え室の間で…ああ、そういえば、泣いていましたね!(笑)。まぁ、そんな苦労も含めて楽しくやらせていただきました。
樋口:うーん、なんか僕のことを「師匠」とか言ってますけど、一番好きな映画は『スペースゴジラ』なんでしょ? 二枚舌じゃん(笑)
田口:(慌てながら)いやいや! 自分が撮りたいと思う作品は(樋口監督が特技監督を務めた)『ガメラ2』で、酒を飲みながらワイワイ楽しめる作品が『スペースゴジラ』っていう意味ですよ。
樋口:なるほど…まぁ、いいか(笑)。田口君の印象、うーん、なんというか、最初の頃は、特撮が好きな人特有のダメさ加減というか、見ていて苦しかったですね。かつての自分を見るようで。僕も今でこそ「監督ですぜ」みたいな顔をしていますが、昔は本当に使えないただのマニアでしたから。あとは、僕なんか友達がいないタイプで、1人でなんとかやっていたんですが、田口君は大勢の仲間と一緒に作っていたので、同世代の希望の星になっている。そこが立派だなぁとは思いますね。
樋口:本当ですか!? 当時一緒にやっていたプロデューサーが「次はアメリカ進出だ!」とか急に言い出したんです(笑)。でも、実際に現地に乗り込んでみると、我々がやりたかったことが最初は全く表現できず、ミニチェアもあまりにも出来が悪かったので、「作り直せ!」となったのです。しかし、アメリカでの仕事の権限などもあって、アドバイスはできるけどその通りにやるかどうかはわからないという状況で悔しい思いをしました。そして、日本に帰って残念会をやったんですが、その帰りに脚本家の伊藤(和典)さんから、「シンちゃん(樋口監督の愛称)、こういうのあるけど、やんない?」って誘われたのが『ガメラ 大怪獣空中決戦』だったんです。つまり『ウルトラマンパワード』のリベンジが平成ガメラシリーズに繫がっているわけなんです。
田口:なるほど、そういう背景や樋口さんたちの思いを知った上で『ウルトラマンパワード』を観ると、より面白さが増しますね。
田口:作る時の目線ですね。メイン監督になる前ですが、「ウルフェス(ウルトラマンフェスティバル)」というイベントに行った時に、ヒーローショーで、子供たちが“本気”で(ウルトラマンを)応援している姿を目の当たりにしたんです。それまでは、怪獣映画は徹底的に怖くしたほうが面白いんじゃないかと思っていたんですが、「ウルフェス」で子供たちの姿を見た時に、少なくとも「ウルトラマン」で僕が考えていたことはやっちゃだめだと痛感したんです。子供たちが感動して、必死になって応援できる作品じゃなきゃだめなんだなと。そういう思いを持ち続けていたことが、今回の『ウルトラマンX』や『ウルトラマンオーブ』に繫がったと思います。
樋口:樋口:観せる設定年齢を低くして、そこを楽しませようとしている姿勢は、僕としても見ていて気持ちがいいね。
田口:ありがとうございます。「VSゴジラ」シリーズや樋口さんの平成ガメラシリーズなど、僕が子供の頃に観ていたあの気持ちをそのままストレートにぶつけられたと思います。そうやって作った『ウルトラマンX』が受け入れられて、「ウルフェス」のヒーローショーで真剣に応援している子供たちを見た時は、ぐっとこみ上げるものが…「ああ、間違ってなかったな」と。それを受けての『ウルトラマンオーブ』なんですが、とはいっても、同じことをやっても仕方がないので、どんどん変えていこうという思いはありますね。とにかく、「怪獣がでかくて怖くて、いったん絶望に追い込まれながらもウルトラマンに助けられる」それさえブレなければ、あとは何をやってもいいと最近思うようになってきました。
樋口:先輩たちが遺して下さった「ゴジラ」に携われるなんて最高に嬉しいこと。僕らが子供の頃、大好きだった作品を自分たちの手で作ることができる幸せ、「それだけでいいのか?」っていう気持ちもあるんですが、その喜びがあまりにも大き過ぎて何ものにも勝っちゃうんですよね。時には楽しく、時には苦しく、両面あると思いますが、先輩たちがいろんな思いを託した作品だからこそ、今でもこうして新たな企画が通るものになっている。だから僕たちも、次の世代に伝えていってあげたいなっていう気持ちで作りました。ぜひ、劇場へ足を運んでいただければと思います。
田口:『劇場版 ウルトラマンX』の上映をやっている時に、映画館へ行ったら、『ウルトラマンX』と『シン・ゴジラ』のポスターが並んで貼ってあったんですね。凄く感動して。それこそ、樋口さんの作品を観て、この世界に入ってきた僕が「ウルトラマン」の監督になって、師匠である樋口さんの作品と隣同士になっているわけですから。もう、1人ではしゃいで、写真撮って、画像を樋口さんに送りました(笑)。『ウルトラマンオーブ』のオンエアが始まり、『シン・ゴジラ』も公開されるということで、これもまた凄い縁だなと。樋口さんが僕の中から何かを見出だしてくれて、僕を監督に引き上げてくれた、という思いもあるので感慨ひとしおです。ぜひ、両作品とも観てこの特撮祭りにみんな参加して下さい!
『ウルトラマン』のフジ・アキコ隊員役で特撮番組におけるヒロイン像を確立させた桜井浩子と、『ウルトラセブン』の風来坊、モロボシ・ダン役で強烈な個性を発揮した森次晃嗣。昭和『ウルトラマン』を語る上で欠くことのできない二人のレジェンドが、古き良き時代の思い出や、撮影にまつわる裏話、さらにはこれから「ウルトラマンシリーズ」を演じる役者たちへの思いなどを熱く語り合った。(取材・文・写真:坂田正樹)
森次:毎朝5時半に起きて、(撮影現場に行って)帰ってくるのが夜の11時くらいという生活を1年間やっていました。若かったからできたけど、とにかく大変だったね。3畳くらいでいいからスタジオに僕が寝泊まりできる部屋を作ってくれたら楽だったな(笑)。
森次:いやいや、そんな時間はないですよ。ちょっとでも空きができたら、イベントに呼ばれて、隊員服とヘルメットをバッグに詰めて一人で現場へ行っていました。だから特別なことは何もしていません。ただ、役づくりとして、モロボシ・ダンは宇宙人ですから、人間よりもキレがあったほうがいいと思って、呼ばれたらサッと振り向くとか、常に機敏な動きを意識して演じていたのは確かですね。
桜井:『ウルトラQ』は白黒で始まったんですが、『ウルトラマン』は第1話からカラーだったんですね。ところが、スタッフ全員がカラー初体験なので、何もお手本がない。そこで、私の顔を使って、何度もカメラテストをやりました。隊員服がオレンジだったので、口紅の色を明るいオレンジ、濃いオレンジ、いろいろ試して塗り替えたり、髪の毛も栗色に染め変えたり、ファンデーションもピンク系、ベージュ系、オークル系、それこそ全部試して、本当にツラの皮が厚くないと女優なんかやっていけないと思うくらい(笑)。結局、3日間もカメラテストに費やしました。それが一番辛かったですね。あと、思い出といえば、寝た記憶がほとんどないんです。あまりにも眠くてお風呂に入らず寝ちゃって、そのまま出演したこともありました。フランス映画のように髪の毛を「ふわぁ~」とさせたかったのに、洗ってないので「ペタッ」となってできない。あれはちょっと嫌でしたね(笑)。
桜井:本当ですか(笑)? でも、やはり“初代”というのは、深くて重いものだとはよく言われていました。なろうと思ってもなれないし、代わりがいないわけですよね。だから、「君がきちんとやりなさい」と上の方から言われて、「やるしかない!」という感じで、覚悟を持ってやっていました。ウルトラマンシリーズが、姿を変えて、時代を超えて、人気が継続するためには“初代”が良くなければと思っていましたから。
森次:初代はやっぱり大変だったと思うよ。特撮ものっていうのは、実験的なところがあるじゃないですか。それを『ウルトラマン』がやってきて、ある程度、出来上がったところに『ウルトラセブン』があるわけだから、僕はラッキーだったと思う。さらに言えば、全ての基になった『ウルトラQ』は一番大変だったと思うよ。
森次:端的に言えば、常にカッコイイところだよね。夢みたいなものを子供たちに与えていかなくちゃいけないからね。まぁ、『ウルトラセブン』は、子供には難しい内容だったかもしれないけど(笑)。とにかく、カッコ良くて夢を与えてくれるヒーロー、これに尽きるね。
桜井:「仏作って魂入れず」という言葉がありますが、初代『ウルトラマン』は「仏作って魂込める」という感じでした。「仏を作る」というのは『ウルトラマン』を造形した人たちで、「魂を込めた」のは、脚本家であり、演出家であり、スタッフ全員であり、その中に私たち演者もいるわけです。初代がその土台をしっかり作り上げ、その後を継いだ人たちもその意志を受け継いだからこそ何十年たっても子供たちから愛される作品になっているのはないでしょうか。。
森次:とにかく、余計なことは考えずに「ウルトラマン」を一生懸命やる。演じるというよりも「ウルトラマン」でいること。「ウルトラマン」として“生きる”ことが大切だと思う。シンプルだけれど、これを実践することは難しい。
桜井:これからヒロインを演じる女の子たちに言いたいのは、大人の芝居を身につけてほしい。満島ひかりさんと『ウルトラマンマックス』で共演した時に、満島さんから「エモーショナルな芝居ができる女優になりたい」って言われて、「あなたならなれるわよ」って励ましたら、飛び越えられちゃって、賞をいっぱい獲って(笑)。ああいう女優さんになってほしいですね。「ウルトラマン」を一つの過程にして、大人の芝居をきちんとやって、大きく羽ばたいてほしいなと思います。
森次:60歳まで変身していたからね。僕の人生にとってかけがえのないもの、もはや分身です。でも、さすがにもう出たくはないかな(笑)。
桜井:黒部(進)さんやお兄さん(森次さん)をはじめ、本当に多くの人と出会えて、仲間と呼べる人がたくさんできました。人生のほんの2年ちょっとの濃厚な日々が、まさかこういうことになるとは思わなかった。「ウルトラマン」に携わって本当に良かったなと心から思いますね。
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©円谷プロ
©2016「劇場版 ウルトラマンX」製作委員会
©円谷プロ ©ウルトラマンオーブ製作委員会・テレビ東京