福島第1原発での作業員“体験”を描く漫画『いちえふ』、原作者「デマは否定したい」

『いちえふ』竜田一人氏にインタビュー!

『いちえふ』竜田一人氏にインタビュー!(C)竜田一人「いちえふ」/モーニング

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 東京電力福島第1原発で作業員として働いていた漫画家・竜田一人氏が描く原発ルポ漫画『いちえふ』。昨年、新人賞MANGA OPENの大賞受賞作として「モーニング」に掲載され、国内外で大反響を呼んだ本作がついに単行本化された。第1巻の発売に際して、竜田一人氏に取材する機会を得た。

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 「いちえふ(1F)」――それは東京電力福島第1原発の略称だ。Fは福島、1は第一。現地の作業員や地元住民は福島第一原発のことを「フクイチ」ではなく、「いちえふ」と呼ぶ。

 竜田一人氏が福島第一原発に作業員として従事したのは、2012年6月からの半年間だ。最初からルポ漫画を描くためではなく、あくまでも「仕事探しの一環」だったという。

 29歳で漫画家デビューしたものの、売れない日々が続き、他の仕事をして生活してきた。いくつもの仕事を転々としていたある日、東日本大震災が発生。「どうせ仕事を探すなら、震災で被害を受けた被災地で働きたい」と思った。特に福島にこだわっていたわけではなかったが、たまたまたどり着いたのが福島第一原発だった。

 「自分でいろいろ調べてみたところ、どうも世間で言われているほど危険な場所じゃなさそうだと。だったら行ってみたいと思いました。漫画を描くつもりで行ったわけではありませんでしたが、やっぱり根は漫画家なので、興味深い体験ができるなら描こうかなとは思っていました」。

 作業員として現場に入り、竜田氏がその目で見た「いちえふ」の現状は、細かい部分まで余すところなく本作に描かれている。福島第一原発のルポはこれまでにも多数発表されているが、漫画という表現方法が持つ情報量はやはり圧倒的だ。

 『いちえふ』の最大の特徴は、原発の是非について論じていないこと。あくまでも現場の一作業員としての視点から、福島第一原発の日常を淡々と描いていく。「取材」ではなく「体験」を綴っているのだ。

 「フラットに描こうという意識は特になかったのですが、見てきたことを描くだけだと、これくらいのトーンになるのかなと思います。主張ではなく、あくまでも記録です。ただし、福島第一原発についてのデマや都市伝説については、ちゃんと否定していこうと思いました。というのも、福島について世間で言われていることや、メディアで報道されている内容と、実際に中で見た世界がぜんぜん違っていたのです。福島はこの世の地獄ではなく、普通の職場でした。誰もが馬鹿な話でもしながら、笑顔で仕事をしているのです」。

 そんな竜田氏の思いを表すかのように、「いちえふ」の単行本には「これは『フクシマの真実』を暴く漫画ではない」というキャッチコピーが添えられている。

 「震災以降、真実という言葉が安っぽくなってしまいました。真実なんて"お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな"というレベルの言葉にすぎません。私も本作について、自分から『これが真実です』というつもりはない。ただ私が見てきた『現実』であることは間違いありません」。

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