『未成年だけどコドモじゃない』原作者・水波風南インタビュー
『今日、恋をはじめます』など数々の大ヒット少女漫画を生み出した水波風南の『未成年だけどコドモじゃない』が、豪華キャストで映画化となった。中島健人、平祐奈、知念侑李の3人が“みせコド”の究極の三角関係を、スクリーンを舞台に新たに表現しているが、原作者の水波自身も「どのシーンもおすすめなんですよね。印象的なシーンが全部なので、選べなくて困りますね。最初から最後まで全部(笑)」と完成した作品に太鼓判を押す。女子が憧れる夢のような世界観ながらリアルな恋愛模様を描く映画“みせコド”について話を聞く。
――皆さんそれぞれキャラクターにはまっていて、女子が憧れる夢のような世界でありながらリアルでもあるという印象を受けましたが、映画を観た感想はいかがですか?
水波:前半がコメディー調なのでポンポンいろいろなことが起こっていくけれど、ラストはそれぞれの気持ちがしっかり伝わってくるようで、「よかったね!」っていう恋愛を見せてくれた感じがしました。コメディーだけに寄らないし、恋愛だけしっとりやっているわけでもない。そのバランスがよかったですね。ずっと飽きずに幸せな気持ちで観られました。たるんでいるところがまったくないので、どのシーンもおすすめなんですよね。印象的なシーンが全部なので、選べなくて困りますね。最初から最後まで全部(笑)。
キャラクターについても全員個性的なので、普通の人が言わないようなセリフを言いますよね。たとえばヒロインの香琳であれば、「よくってよ」みたいなことを言う。でも平祐奈さんが言うと普通なら上ずベリしてしまいそうな言葉でも、彼女が本当に自分の意思で言っているようなハマリ方がすごかったです。本当に香琳として育ってきたかのような見え方がすごかったですね。
――その香琳がひたむきな想いを寄せる学園の王子様・尚を中島健人さんが演じていて、もともと王子様キャラでもあるだけに、ハマリようが尋常ではなかったです。
水波:尚は当初、政略結婚ということもあって「恋愛ではない」とツンツンしていますが、中島健人さんの笑顔の破壊力がすごいですよね(笑)。ちょっと細かい点ですが、中島さんが悩ましい表情をしている時の指の動作がすごくて見入っていました。怒鳴ってしまった後のハッとして謝るところ、セリフとして「オレってカッコいいかな?」って言うこともなかなか難しいと思いますが、とにかく声が素
敵なので全部のシーン、キメのシーンでカッコよく聞こえちゃうんですよね。トラウマで怒鳴ってしまったり、五十鈴に対峙するシーンではしっかりと男らしくて、触れてはいけない感じもしっかりと出してくれている。尚がスクリーンで笑っているだけで、「あ、笑ってくれた」って原作者なのに思いました(笑)。もっと笑っている姿が観たいから、香琳がもっと笑うようなことを言わないかなって。
――生みの親なのに(笑)。一方で、五十鈴役の知念侑李さんも、いままで見せたことがないような、クールとジェントルが同居したようなセレブを好演していました。
水波:五十鈴は超お金持ちの設定なので見た目がセレブである必要があるのですが、知念さんがしっかりクリアされて、立ち振る舞いも完璧だと思いました。香琳が幼なじみで大好きという気持ちが、すごく柔らかい表情で伝わってくる。すぐに助けに行くところからも伝わってきて、キャラクターが本当にいきていますよね。だからトンデモ設定なのにリアルに感じられて、そこがすごくよかったですね。でもセレブのシチュエーションでは、とことんセレブ(笑)! 使用人の数もいっぱいいて迫力があって、香琳を拉致するシーンも面白かったですよね。
――その拉致のシーンでも、映画ならではの細かい<遊び>があって楽しいですよね。
水波:そうですね。香琳の拉致の瞬間を観ている釣りのおじさんがいて、立ち上がって「なんだ? なんだ?」みたいな様子を引きの映像で見せたり、ボロ屋のシーンでは面白い子どもたちが必ずいて、おじいさんもずっと座ったままで(笑)。そういう細かいところまで面白いので、何回観ても画面の端まで楽しめる映画だなって思いました。
――また、胸キュンなシーンもありますが、登場人物の心情をリアルに掘り下げているので、シーンとしてとても説得力があって、観ていて驚いてしまいました。
水波:ドライヤーで髪を乾かすシーンも単にドキドキなシーンを入れただけじゃなくて、男の人に怒鳴られたら女の人はすごく怖いし、ちょっと落ち込んでいるところに「おいで」と言う流れもすごくいいですよね。秘密の恋っぽい演出もたくさんあって、学食でうどんを違う席で食べるけれども、いただきますは同時にするシーンは、すごくいいと思いました。ふたりで洗濯物を干すとか高校生夫婦感みたいなものも随所に出ているので、観ていてこういう生活を送ってみたいと思うシーンがたくさんあったので、観ていて楽しいですよね。

――ところで、撮影現場にも行かれたそうですね。3人の様子は、いかがでしたか?
水波:オフで話をしている3人が、キャラクターのままに見えました(笑)。本番が始まった瞬間にキャラクターに入るのではなく、3人で談笑している姿もキャラクターがそのまま話しているみたいな感じで、自然にマッチしていると思いましたね。
――実写化が決まった当初は、率直にどういうことを思いましたか?
水波:もしも実写化した場合、それこそ香琳の「よくってよ」とか、だいぶ変えられちゃうと思っていました。でも、ものすごく原作を汲み取ってくださって忠実になっていて、キャストの方々も素晴らしい演技をしてくださったので、わたしの作品でわたしの作品ではないような。監督の演出もいい効果になっていて、何度でも観たくなる作品だと思いましたね。
――今回の映画化で、一番良かったことは何でしょうか?
水波:完成するまで、ずっとどこかで仕上がった映像を観てみないと、と思っていましたが、完成した映画がよかったので、それが一番よかったことですね。反対によくなかった場合でも、それでもこうしてこういう話をしなくちゃいけないじゃないですか(笑)。それは困るなあと、正直思っていました。もしも面白くなかった場合、心にもやもやしたものを抱えながらインタビューなどを受けなくちゃいけないのかなって思っていましたが、よかったです。トンデモないセリフも少なくないですが、それがリアルにマッチングしていたので、より幸せな気持ちになりました。心からおすすめもできるので、それが一番の幸せですね。
――それでは、原作のファンの方々は、期待していいですよね?
水波:そうですね(笑)。もともと中島さんは王子様のキャラですが、「みせコド」の中では王子様がもしも自分と一緒に暮らしたら、こういう素を見せてくれるのかもっていう感じがわかると思います。日常を垣間見たような、でも寄り添っていけたらすごく幸せみたいな疑似体験もできるように仕上がっていて、そこもすごくよかったですね。リアルな中高生が観て、学生結婚を送れたらと思う一方、日常生活のリアルな厳しさも垣間見えて、それは面白いですよね。主題歌であるHey! Say! JUMPの『White Love』曲も、今後のウェディング・ソングになるんじゃないかなってくらいいい曲なので、多くの方々に観てほしいです。
(取材・文・写真:鴇田崇)
『未成年だけどコドモじゃない』は12月23日より全国公開。

『今日、恋をはじめます』など数々の大ヒット少女漫画を生み出している水波風南の同名漫画の実写映画化。Sexy Zoneの中島健人を主演に迎え、ヒロインに平祐奈、そしてHey! Say! JUMPの知念侑李が恋のライバルとして参戦する。成績優秀、スポーツ万能な学校一のイケメン・鶴木尚(中島健人)は、高校の王子様。そんな尚にひとめぼれした世間知らずなお嬢様・折山香琳(平祐奈)。16歳の誕生日、香琳が両親からプレゼントされたのは、片想いの尚との“結婚”。大好きな尚との2人きりの新婚生活に心ときめかせる香琳だったが、現実は甘くなかった…。
『未成年だけどコドモじゃない』は12月23日より全国公開。
[原作者・水波風南]
『レンアイ至上主義』『蜜×蜜ドロップス』『泡恋』(「Sho‐Comi」連載中)などを手掛ける人気漫画家。『今日、恋をはじめます』は、2012年に武井咲、松坂桃李を主演に迎え実写化映画化された。
(C)2017 「みせコド」製作委員会 (C)2012 水波風南/小学館
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