<週末のおすすめビデオ>『ダンケルク』にみるクリストファー・ノーラン監督のこだわり

『ダンケルク』にみるクリストファー・ノーラン監督のこだわり

『ダンケルク』にみるクリストファー・ノーラン監督のこだわり(C)AFLO

 新作が発表されるたびに「次はどんな世界観なのだろう」と期待させる映画作家の一人であるクリストファー・ノーラン監督。過去にも数々の“問題作”を世に送り出しているが、最新作『ダンケルク』でも圧倒的な映像と、これまで想像し得ない形で戦争の醜さを描いている。

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 ノーラン監督と言えば、商業映画デビュー作『フォロウィング』で、バラバラに展開する時間軸を、最後収束させる計算しつくした脚本やストーリー展開に唸らされ、次作『メメント』では、さらに斬新な時系列展開で緊張感あふれるサスペンスを作り出し、世界的に大きな注目を集めた。

 その後も、『バットマン』シリーズや『インセプション』、『インターステラー』など、常に斬新なアイデアと映像でファンを魅了してきた。そして『ダンケルク』では、自身初めて史実に基づく戦争というテーマを手掛けたことでも話題になったが、その表現方法がとても斬新だった。なんと、戦争映画にも関わらず、敵が登場しないのだ。

 『ダンケルク』は第2次大戦中のフランス、ダンケルクが舞台。ナチス・ドイツ軍がフランス侵攻を行った1940年5月24日~6月4日までに起こった戦闘が描かれているが、本作では、敵兵であるドイツ軍は登場しない。つまり、敵との接触シーンがないため、戦争映画にありがちな、血みどろのシーンは一切出てこない。その意味では、恐ろしいほどにエグイ描写が多かったメル・ギブソン監督の『ハクソー・リッジ』とは真逆の戦争映画と言えるだろう。

 さらに言えば、ノーラン監督は本作を戦争映画という位置づけではなく、サスペンス映画と捉えていると話していた。その言葉通り、目を覆いたくなるような描写はないものの、陸・海・空という3つの視点から描かれる張り詰めた戦場の緊張感は最後まで継続されている。そして、戦争の悲惨さもしっかりと心に刻まれる。

 もう一つの特徴が、作品全体を通して「チクタクチクタク」とBGMが流れている点だ。本作は、ドイツ軍からの撤退を描いた作品であり、最大の敵は“時間”なのだ。このBGMも映画に緊張感を与えるうえで、非常に効果的に働いている。自然と追い詰められたような感覚になるのだ。

 壮大な映像描写は「映画館でこそ!」と思われるかもしれない。もちろん、ノーラン監督作品は、大スクリーンでこそ体感できる要素も非常に多いが、音や構図など、徹底した細部へのこだわりを再度じっくり観てみるのも一興だ。(文:磯部正和)

 映画『ダンケルク』はブルーレイ&DVD発売・レンタル中、デジタル配信中。

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