優秀な女性を主人公にした刑事ドラマ「クローザー」と「リゾーリ&アイルズ」。「クローザー」の主人公ブレンダ・ジョンソンはCIAで訓練を受け、どんな難事件でも粘り強い捜査をもとに容疑者から自白を引き出して事件をクローズさせるプロフェッショナル。一方の「リゾーリ&アイルズ」のリゾーリはボストン市警唯一の女刑事で、常に冷静沈着な検死官の親友アイルズと協力し合い、事件を解決に導いていく。そんな彼女たちに共通しているのが、仕事に対してとてつもなく熱心であるということ。事件規模の大小にかかわらず、食事やショッピング、ヨガスクール、クリスマス休暇など、あらゆるプライベートを放り出し、事件現場に急行。精神状態が最悪であっても、いつもの気丈さで事件に立ち向かう。そう、男ばかりの刑事社会のなかで、彼女たちは女性ゆえの差別や妨害を受けながらも、自分の実力を認めさせるには、人一倍の努力が必要なのだ。だからこそ、“私のヤマ”というリゾーリの言葉に象徴されるように、事件に対する執念は誰よりも強く、犯人検挙率も高い。このように男顔負けの彼女たちだが、なぜかめっぽう弱いのが母親。例えば、ブレンダは半ば強引とも思える母親の行動を止められず、リゾーリは屈強な男性でも物怖じせず、犯人逮捕時の格闘だってお手の物。それなのに、刑事の仕事を快く思っていない母親からの小言レベルで父親や弟に助け船を求めることが多く、自分の趣味に合わない洋服でも、母親が気に入れば購入と、強さと弱さの二面性が彼女たちをより魅力的にしているのである。

難事件をクローズさせる手腕を買われてアトランタ市警から引き抜かれた“尋問”のプロ。仕事はできるが、スイーツ中毒で方向音痴。

タフでクールなボストン市警唯一の女刑事。「外科医」と呼ばれる殺人犯ホイトに襲われ、今もそのトラウマに悩まされている。

マサチューセッツ州の主任検視官。上流階級の出で、いつもファッションに気を遣い才色兼備だが変わり者。

秀逸なクライム・サスペンスとして名高い「クローザー」と「リゾーリ&アイルズ」。それゆえ、凶悪事件が多かったり、自身も犯罪に巻き込まれたり等、何かと共通点が多いのだが、決定的にこの2作品が違う点がある。それが、階級の違いによる捜査の進め方だ。ブレンダはロサンゼルス市警本部長補佐で重大犯罪課のチーフ。もちろん、彼女は積極的に捜査に参加し、容疑者を自白に追い込む尋問は彼女の専売特許というほど中心になって活躍するのだが、重大犯罪課のトップである以上、捜査を指揮し、部下に仕事を割り振るといった現場レベルでの仕事はもちろんのこと、上に立つ者としての責任も自然と課せられてくる。それゆえ、事件の謎解き以外にも、色々と悩まされることが多いのである。

一方の「リゾーリ&アイルズ」のリゾーリはいち刑事で、上司から指示される立場。そのため、捜査方針を巡って上司に歯向かったり、FBIにすら食ってかかることもしばしば。だが、表面的には部下なのだから従わなくてはいけない。そんなとき、彼女の良き支えとなってくれるのが、検死官のアイルズだ。正反対の性格だが親友の2人は、本音をズバズバ言い合い、ときに反発しながら、捜査をすすめていく。「クローザー」では滅多に見られない、女性同士ならではの会話が華を添えているのである。同じクライム・サスペンスのジャンルであり、女性が主人公という大きな共通点を持つ2作。しかし、違った面白さを持つ作品として、どちらも楽しいのだ。