テレビドラマのなかで、最もエキサイティングなSFと称され、世界中に熱狂的なファンを持つ「FRINGE/フリンジ」のフォース・シーズンが10月3日に発売される。それを記念し、フォース・シーズンの見どころを紹介していこう。そして、不可思議な事件を発端に、いくつもの謎や脅威、複雑な時間軸などが明らかになっていく、製作総指揮を務めるJ.J.エイブラムスらしさがぎっしり詰まったこれまでの「フリンジ」を振り返った。これを読めば、シーズン4はさらに面白くなるはずだ。(文:安保有紀子)
「こちらの世界」と「もうひとつの世界」を行き来できるパイプを通し、どちらか1つの世界を壊せば、両方の世界が消滅してしまうと、両方のウォルターやオリビアたちに訴えていたピーターが、忽然と姿を消して幕を閉じたシーズン3。どうなる!? ピーター! と思っていたら、なんと、シーズン4では、誰もがピーターのことを覚えていないどころか、存在自体が消去された状態でスタートする。それゆえ、ウォルターはファースト・シーズン最初の精神が不安定な状態に戻っており、現場に出ることも少なくなっていた。そして、オリビアには新しい相棒リンカーンができていた。そんなとき、ピーターが湖から復活。彼だけはすべての事情を把握しているため、周囲から怪しまれるが、その知識を買われ、フリンジ・チーに加わることに。この新参者的ピーターとお馴染みのメンバーは関係性を築いていくわけだが、その過程がファースト・シーズンをほうふつとさせ、見どころの1つと言えるだろう。
そして、驚くべきことに、ハイブリットをさらに進化させたシェイプシフターが登場するのだ。それはDNAレベルで変化し、有機体そのもの。かつ、1つの装置で何人もの人間に成り代われ、追跡は不可能という代物だった。さらに、どちらの世界でも開発できる技術を持ち合わせていなかった……。では、それを開発したのはいったい誰なのか。意外な人物が登場し、さらなる黒幕の可能性も浮上と、フォース・シーズンにして、「フリンジ」はとてつもない広がりを見せていく。とはいえ、思わずのけぞってしまうようなリアルな描写はファースト・シーズンから変わらず、不可思議な事件も起こりまくっている。単発の事件を楽しみつつ、より複雑になった時間軸の物語を理解するため、じっくり鑑賞することをオススメしたい。
国際線旅客機627便の乗員・乗客全員の肉体が溶け落ち、骨だけになるという奇怪な事件が発生。FBI捜査官のオリビア・ダナムは、精神を病んだ風変わりな天才科学者のウォルター・ビショップと、ビショップの息子でIQ190の天才ピーターを仲間に入れ、真相究明のために奔走する。だが、このような不可思議な出来事は今回が初めてではなく、数十年前から世界中で頻発していたことが判明。その後も、次々と不可思議な事件が発生し、オリビアたちが立ち向かう。
もうひとつの世界でウィリアム・ベルと出会い、自分たちが暮らす“こちらの世界”へと戻って来たオリビア。当初は記憶を失っていたが、徐々に記憶を取り戻し、機械と有機体のハイブリッドがもうひとつの世界から送り込まれていること、2つの世界を隔てている扉を開け、こちらの世界を破滅させようとしている人物を蘇えらせようとしていることも思い出す。だが、とき既におそし。その人物はハイブリッドの手により蘇えってしまった――。
連れ去られたピーターを取り戻すため、もうひとつの世界へと行ったウォルターとオリビア。無事ピーターは取り戻したものの、元の世界へ戻ってくる際、もうひとつの世界のオリビアと入れ替わってしまった。もうひとつの世界のオリビアは誰にも気付かれず、上手く立ち回る一方、こちらの世界のオリビアは洗脳され、実験台となっていた。その後、それぞれのオリビアは自分たちの世界へと戻るが、オリビアの精神は不安定で、ウォルターはベルなしで事件は解決できないと言い始めてしまう。
ワーナー・ブラザースから「FRINGE / フリンジ」のオーディションを受けてみないかと電話をもらったの。私の前にすでに何人かオーディションをしていたらしくて、役についての細かい指示もあったわ。ゴールドコースト(オーストラリア)にあるワーナー・ブラザースのオフィスで午前中にオーディションを受けんだけど、その翌朝には電話があって、契約交渉が始まったの。でもまだ、正式なオファーはない状態でね。
-正式なオファーがない時点で契約交渉が始まったのですか。私も知らなかったんだけれど、そういうやり方なのよ。オーストラリアではまずはオファーが先なので、その時点で自分が求められていることがわかるんだけど(笑)。そのあと交渉を進めてすぐにこの役が正式に決まったの。もう大興奮だったわ!翌日には飛行機に乗って、ロサンゼルスでちょうど映画「スター・トレック』撮影中だったJ・J・エイブラムスに会いに行ったの。今まで一度も行ったことのない大規模なスタジオにあったセットのスターシップ・エンタープライズのコントロールルーム中で待っていたら、エイブラムスが現れて『お会いできて嬉しいよ』声をかけてくれて…とってもシュールな体験だったわ(笑)」。
-その後、撮影がスタートし現在は大人気ドラマとなりましたが、あなた自身オリビア役をどのようにとらえていますか。オリビアはとても誠実な人だと思うわ。ここまで誠実な人には出会ったことがないし、そのような役を演じたこともこれまでなかった。彼女は大きな責任を負っているにも関わらず、正しいと思うことを成し遂げようと常に努力を惜しまない。人々を守り、自分に可能な限りの仕事をしなければということしか頭にないの。競争心が激しく、いつも機敏に動き、男性と対等に張り合い、仕事が大好きで、行動する前にじっくり考えるタイプではなく、戦闘機のパイロットのように虚勢を張っているところがあるの(笑)。
それはないわ。よく聞かれるのだけれど…。
-心霊体験も?ないわね。これは私に限ったことではないとは思うけど、眠る瞬間に亡くなった人やずっと話をする機会がなかった人の話す声がはっきりと聞こえるということはあるでしょう。でもそれは自分の記憶がそうさせているのだと思うわ。
-では、このドラマ出演するようになってから超自然的体験について考え方はかわりましたか。うーん…そういうことはないわね。「フリンジ」の中で起きる現象や出来事は、題材のほとんどが科学との結びつきが深いから、ドラマの中に出てくることのほとんどが、(科学的に)起こりうることについてだと思うわ。時々、実際に起こりうるのはどれかというのを想像するんだけど、“これは本当に起こるかもしれないことなのね”と感心させられるのよ。それは、ドラマの脚本家は常に新聞や雑誌をチェックしていて、そういうところからヒントを得ているからね(笑)。