『スパイスより愛を込めて。』瀬木監督&ゴーゴーカレー創業者が語る“カレー愛” 「カレーで元気を届けたい!」
提供:映画「スパイスより愛を込めて。」
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“カレーの聖地”と呼ばれる石川県・金沢を舞台にした青春映画『スパイスより愛を込めて。』が公開される。悩み、もがきながらも、カレーを通して絆を育んでいく高校生たちの姿を描く、みずみずしい1作として完成しているが、なぜ映画のメインテーマに「カレー」を選んだのか? その真意を探るべく、本作の瀬木直貴監督と、“金沢カレー”ブームの火付け役となった「ゴーゴーカレー」の創業者である宮森宏和氏に直撃。本作の見どころと、劇中にも登場する石川県独自のカレー文化やカレー愛について語ってもらった。
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カレーの聖地・金沢は「とにかく“カレー愛”が強い」
本作は、人口10万人あたりのカレー店が多い都道府県ランキングで3年連続1位に輝いた石川県・金沢を舞台に、「この世からスパイスが消えてしまった…」という事態に直面した世界で繰り広げられる青春群像劇。母のカレーをこよなく愛し、スパイス不足の謎に迫っていく高校生・蓮を『耳をすませば』やNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』といった話題作への出演が相次ぐ中川翼が演じ、蓮の同級生で希少なスパイスの香りをまとう不思議な少女・莉久役を芽島みずきが務める。さらに、田中直樹、横山めぐみ、加藤雅也ら個性豊かなキャストが映画を彩る。
――『カラアゲ☆USA』や『ラーメン侍』など、瀬木監督はこれまでも“食”がテーマの映画を作られていますが、今回、金沢の「カレー」にフォーカスしたきっかけを教えてください。
瀬木:僕自身、カレーはゲームやアニメ、コスプレと同じように、日本を代表する“文化”だと感じていましたので、以前から「カレーにフォーカスした映画を作ってみたい」という思いを持っていました。そんな時に、僕が以前作った『恋のしずく』というお酒の映画を宮森会長が観てくださったことをきっかけに交流がはじまり、「カレーの映画。しかも金沢のカレーを題材にした映画を作りたい」という思いが自然と湧いてきました。
宮森:僕はもともと、「カレーの映画があったらいいな」という漠然とした思いがありました。瀬木さんと出会って、いろいろとお話させていただくなかで、「本当にカレーの映画が実現するかもしれない」とイメージできるようになりましたが、まさかこんなに早く実現するとは(笑)。カレーは日本の国民食と言われていますし、みんなが大好きなカレーを題材とした映画ができることで、日本はもとより世界中に元気を届けられるのではないかと思っていました。
――石川県金沢市でオールロケが行われたとのことですが、“カレーの聖地”を訪れた印象はいかがでしたか。
瀬木:金沢市が人口比で1番カレー店の多い街というのは知っていましたが、実際に訪れてみると、地元のみなさんの“カレー愛”がとても強いなと思いました。カフェやバーなどカレー店以外のお店で出てくるカレーのクオリティーも高いですし、こちらから質問しなくてもずっとカレーの話をしているんです(笑)。とにかくカレーに対する熱量が半端ないなと感じました。あとは、金沢は古い街並みが残っている場所ですが、そういった古都とカレーのイメージのギャップもとても魅力的に感じました。
――宮森さんは、金沢のご出身です。やはり、周囲のカレー熱の高さを感じることはありますか?
宮森:僕は小さな頃からカレーをよく食べていましたし、当たり前のようにいつもカレーの話をしていたので、「金沢がカレーの街」だとは正直気づいていませんでした(笑)。それくらい僕らにとって、カレーは身近なもの。“金沢カレー”の元祖といえば「ターバンカレー」さんがありますが、これまで「ターバンカレー」さんをはじめ、いろいろなカレー屋さんが頑張ってこられたからこそ、金沢でカレーが市民権を得られたのではないかと感じていますし、「金沢=カレーの街」と全国的に認知されるほど有名になれたのではないかと思います。
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カレーが持っている“力”とは?
――瀬木監督は、以前から「大のスパイスマニア」とおっしゃっておりましたが、本作を通して、新たにカレーの魅力を再発見したことはありますか?
瀬木:撮影前にスパイスについても、改めて勉強をしました。スパイスにはクミンやカルダモン、ターメリックなどいろいろな種類がありますが、その一つずつに複数の作用があり、それらがお互いのデメリットを打ち消し合ったり、逆にいいところを引き出したりしながら、複雑に絡み合ってカレーが出来上がっていく。ものすごく奥が深い、まるで壮大な宇宙のようだなと私は思いました。
――2003年に「ゴーゴーカレー」を創業されてから間もなく20周年ですが、宮森さんは今でも新しいカレーの魅力に気づくことはありますか?
宮森:もちろんあります! 今、わかっているカレーの可能性なんてまだまだ一部だと思いますよ。以前、老人福祉施設の方から、カレーの日はお年寄りの方もみなさんテンションが上がって、カレー談義になるのがお約束だという話を聞いたことがあるのですが、カレーって大袈裟ではなく、みんなを笑顔にする力があると思うんです。あと、これから宇宙に行く人も増えると思いますが、宇宙食としてもカレーはパウチなどで、おいしく手軽に食べられる。そういった意味でも、未来に向けていろいろな可能性を探っていけるのがカレーの世界だなと思っています。
瀬木:「カレーを食べると、カレー談義になる」というお話、よくわかります(笑)。カレーの思い出って家庭の思い出でもあると思っていて、「自分の家ではこうだった」とか話したくなる。そんな食べ物ってなかなかないと思います。
宮森:そうなんですよね。先日ある方のブログを見ていたら、「亡くなったお母さんのカレーを再現したくてずっと取り組んできたけれど、やっと近いものができるようになった」「カレーは、お母さんからもらったラブレターのようなものだ」と書いてあったんです。カレーは世代を超えて、心にも素敵な思い出を残すものなのかなと感じています。
――本作の公開記念として、カレーフェス「かなざわカレーパーク2023」が初開催されるそうですが(※5月13日、14日に開催済み)、当日もみなさんカレー談義で盛り上がりそうですね。
宮森:このイベントは、金沢カレーだけではなく、日本全国の有名カレー店、いわばカレー界の「アベンジャーズ」が、金沢に集結します(笑)。ランキングをつけるようなイベントではないので、カレー好きな人たちが集まって、交流を図り、カレー愛でつながるような場所になればいいなと思っています。今回は金沢で開催しますが、今後は過疎と言われるような場所でも開催して、カレーで町おこしができたらいいなと思っています。
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「スパイス=人間」多様性の時代に送り出す、映画に込めた思い
――劇中でも、それぞれ個性的な高校生たちがカレーを通して絆を育んでいきます。
瀬木:僕はスパイスと人間って同じだなと思ったんです。先ほど、カレーはスパイスがお互いに作用し合って出来上がっていくというお話をしましたが、人間も、お互いのマイナス部分を補い合ったり、お互いのよさを引き出し合ったりしながら生きている。「それぞれに役割がある」という意味でも、スパイスと人間をなぞらえることができますよね。LGBTQに対しての社会的な関心が高まり、理解も少しずつ深まりつつある時代に、「この世界はいろいろな人が重なり合って生きているんだ」ということを提案できる映画にしたいなと思っていました。
――コロナ禍で激変した生活シーンの1つに「食」があると思いますが、本作の「カレーを作る、食べるシーン」を見ていると「食」を通じたコミュニケーションの大切さを改めて感じました。
瀬木:「みんなで一緒にご飯を食べることが、喜びにつながる」ということも描きたかったんです。本作の撮影もコロナ禍に行われたため、大人数での撮影はNGで、みんなで集まって食事をすることもできませんでした。でも、撮影最終日に「ゴーゴーカレー」さんのご厚意で、ケータリングのカレーを食べることができたんです。小春日和の温かな日で、キャストやスタッフみんなが笑顔でカレーを食べている、その瞬間が今でも忘れられません。「これはカレーの力だな」と実感しました。
宮森:役者のみなさんも、カレーの話ばかりしていましたよね(笑)! おかわりも進んで、僕も「カレーの力ってすごいな」と改めて感じていました。実は、コロナ禍で僕自身もいろいろな“考え方”が変わって、東京から金沢に帰ったんです。先人たちが残してきてくれた伝統が受け継がれている金沢という街の魅力や、カレーの価値を見つめ直す機会になりました。これからもカレーや食を通して、日本だけでなく世界中の人が元気になれるようなことができればと思います。
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映画『スパイスより愛を込めて。』は、6月2日(金)より公開。
(C)2023「スパイスより愛を込めて。」製作委員会
取材・文:成田おり枝、クランクイン!編集部/写真:高野広美
『スパイスより愛を込めて。』クランクイン!作品情報
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