キタニタツヤ、変わらぬライブ観と進化する表現 “歌を届ける”意識に変化 そして自主企画対バン「Hugs」にかける思い 第6弾に海外バンドを誘致した理由とは?
PR:キタニタツヤ「TATSUYA KITANI Presents “Hugs Vol.6”」

4月より放送開始となった話題のTVアニメ『日本三國』。そのオープニングを飾る楽曲「火種」を手がけたのがキタニタツヤだ。自身名義での作品はもちろん、作家としての楽曲提供やアーティストとのコラボレーションなど、ジャンルやフィールドを越えて発揮される卓越した音楽センスは、多くのリスナーを惹きつけてやまない。7月にはGLION ARENA KOBE、東京ガーデンシアターで自主企画対バンイベント「Hugs Vol.6」を開催。音楽シーンで常に注目を集めるキタニタツヤが、クランクイン!初登場。
新曲「火種」「れびてーしょん」に自信アリ
――現在放送されているアニメ2作品でキタニさんの楽曲が使用されています。『日本三國』のオープニングテーマが「火種」、『NEEDY GIRL OVERDOSE』のエンディングテーマが「れびてーしょん」です。ご自身としてこの2曲の手応えはいかがですか?
キタニ:自分のキャリアの中で一番いい曲が書けてるぞと、それぞれ自信がちゃんとありますね。しかも、まったく別ジャンルの曲ですし。自分の中のネタが切れていないというか(笑)、そのこともすごく嬉しいです。
――『日本三國』は原作からのファンだそうですが、楽曲制作にあたってプレッシャーを感じる部分はありませんでした?
キタニ:あー確かにそうだな。『日本三國』ファンとしての自分が、シンガーソングライターとしての自分に対してアンチコメントを書くみたいなところはあったかもしれないです。「おまえ、こんな素晴らしい作品に対して、しょうもない曲作るんじゃねえぞ」みたいな(笑)。納得のいかない曲を書いたら後々、原作ファンとしての自分が落ち込み、悲しむことになるぞっていう。そんな感覚ですかね。だから、いつも以上に楽曲に対してのジャッジは厳しくなっていたと思います。
――和のテイストとラテンを想起させるリズムが融合するサウンドに力強い決意が滲む楽曲は、『日本三國』という作品にしっかりと寄り添いつつ、聴き手の気持ちも鼓舞してくれるものでもあります。
キタニ:そうですね。この曲を聴いてくれた人が、グッと気合いが入る感覚になってくれたらすごく嬉しいです。
――一方の「れびてーしょん」は、エレクトロ的なサウンドがクセになる仕上がりで。ある種、サウンドが淡々としているからこそ、そこに乗るメロの良さが際立っているなと。
キタニ:「火種」もそうなんですけど、この「れびてーしょん」も最近、毎日欠かさず聴いてますね。自分でもめっちゃ気に入っちゃってて(笑)、ずーっと聴いてます。自分の中には、すごく寂しくて胸がキュッとなる自分だけのツボみたいなものが明確にあって。「れびてーしょん」は、そのツボを押してくれるサウンドなんですよね。だから毎日、繰り返し聴いちゃうんだと思う。この曲を通して自分と同じようなグッとくる感覚を味わってくれる人が世界にどのくらいいるのかはわからないですけど、自分にとっては「こういうの好きだわ」と心から思える権化のような曲なんですよね。
――インターネット世界についての思いを紡いだ歌詞の内容にグッとくる人も多そうです。
キタニ:そうですね。たぶんきっと聴く人ごとにいろんなことを思ってくれるんじゃないかなと思います。
――キタニさんは様々なタイアップ楽曲を世に送り出していますが、制作をする上でノンタイアップ曲との違いを感じる部分もありますか?
キタニ:タイアップ曲の場合は、平たく言えばキャッチーさみたいなところをより意識しますよね。ここはもっとわかりやすい言葉にしなければいけない、とか。要は聴いてくれる人たちのイメージをノンタイアップよりは広めに取る感覚。こんな人も聴くかもしれないなっていう“if”をめっちゃ考えるんですよ。逆にノンタイアップ曲の場合は、そこはそれほど考えず、自分を純粋に喜ばすための割合が高めになっている。そこの比率が一番大きな違いかもしれないですね。もちろんノンタイアップ曲であっても、他者をまったく気にしないわけではないんですけど。
――聴き手の幅を広く取りながらの曲作りは難しいものでもありますか?
キタニ:うん。こんな人も聴くかもなっていうことを考えながら、いいメロディ、いい歌詞を書かなければいけないので、そこは毎回すごく時間がかかりますね。そこの規制がいい意味で緩むノンタイアップのほうが、曲ができるのは断然早いです。100人中、15人くらいしか気に入ってくれないかもしれないなっていう曲であっても、ノンタイアップであれば「俺が好きだからいいわ」って思えるところがあるので(笑)。
――アプローチが少し違う2つの制作スタイルがあることで、クリエイターとしてのバランスが取れるところもあるのかもしれないですよね。
キタニ:あー、確かにそれはあると思いますね。2つがあることで自分の精神衛生が整うみたいな感じ。ずっと張り詰めた曲作りをするわけではなく、時には気楽に作れる瞬間があってこそ、どちらも楽しめるっていう。
ドームで空を飛びたい(笑)変わらぬライブ観と進化した見せ方
――では話のテーマを少し変えて、キタニさんのライブ観についても聞かせてください。活動を続けてきた中で、ライブに対しての思いが変化してきたところってありますか?
キタニ:ライブ観か…。そこはあんまり変わってない気がするな。ライブって、自分が家で一生懸命作った音楽を発表し、聴いてもらう場なんですよ。そこでファンからリアルタイムの反応をもらい、それが次に曲を書くときのヒントになる。その一連の流れは、ライブを始めた当初から変わってないですからね。だから、僕の場合は基本的にライブのことを考えて曲を作りますし。ライブのことを一切考えずに曲を作ることはほぼないです。
――例えばタイアップ曲であっても、どこかでライブのことはイメージしている?
キタニ:そうですね。めっちゃ考えてる。この曲はライブでこういう立ち位置の曲になるだろうな、じゃあこういう装置が曲の中には必要だなとか、そういうことをすごく考えながら作っているので。
――ライブにおける歌に関してはどうですか?
キタニ:どうだろうな。上手になったとは思いますけど(笑)、基本的には変わってないような気もする。あ、でも意識の変化はあるかな。元々、自分は3ピースバンドでベースボーカルをやっていたので、歌の比重は演奏よりちょっと下ぐらいの気持ちだったんですよ。その感覚はソロのキタニタツヤとして活動し始めたときにもまだちょっとあった。演奏と歌は50:50だよね、どっちも聴いてもらうために頑張るぞ、みたいな。でも今はその気持ちがちょっと変わってきたというか。結局、みんなが聴くのって歌だと思うんですよ。だからといって演奏をサボるというわけではまったくないんですけど、それだけ歌を聴かれるんだったら歌のことにリソースを多く使わないとダメじゃんみたいに思うようになったんです。例えば死ぬほど体調が悪いときだったら、歌に全部の集中をつぎ込まないと上手な歌を歌うことはできないから、ためらいなくそういう気持ちの切り替えができるようになりましたし。極論、歌だけでもちゃんとできていれば、まずはいいって思うようになったんですよね。それは昔だったらありえなかったことなので。
――なるほど。
キタニ:自分の場合、ライブであってもちゃんと歌詞を聴き取って欲しいんですよ。そこに重きを置いていない人たちももちろんいるとは思うんですけど、自分は初めて曲を聴く人にも歌詞をちゃんと聴いてほしい。いい曲だけど曲名がわからないときに、聴き取れた歌詞を元にGoogle検索して曲名を探すことってあるじゃないですか。
――よくやりますね。
キタニ:あれ、僕もめっちゃやるんですよ(笑)。だから、そういうときにちゃんと探してもらえるように、歌詞はちゃんと聴こえなきゃダメだなっていう思いもあって。聴いてくれた人に何か爪痕を残すためにはちゃんと歌詞を届けなければならない。そういう意味でもちゃんと歌を聴かせないとなぁって、最近はすごく思いますね。
――キタニさんはライブハウスからキャリアをスタートさせ、昨年には初のアリーナツアーを経験されました。会場の規模が大きくなってきたことで、見せ方にも変化が生まれそうですよね。
キタニ:会場が大きくなると、できる演出が増えることが一番素晴らしいなと思っていて。結局、音楽のライブであっても音楽だけでできることって限度があるじゃないですか。人間の受容する情報の中で視覚が一番多くを占めるから、その視覚の面白さは追求したいんですよね。とは言え、俺が一人で動き回ってもできることも限られているので、その視覚的要素をもっと上に上げてくれる演出があるのだったら、それは取り入れていきたいなと。
――大きな会場であれば、その選択肢は増えますもんね。
キタニ:そうそう。演出が増えれば、その分いいライブになると自分は思っているので、会場はデカければデカいほうがいい。だから今はなるべく大きなところでやりたいですね。お客さんとの距離が近いほうがいいって言い出すことも今後またあるかもしれないですけど(笑)、でも今は大きいステージに立つほうが嬉しいし、やりがいも感じてますね。去年のアリーナツアーが、そう思うきっかけをくれました。
――立ってみたいステージも明確にあります?
キタニ:立ちたい場所か。まあでも東京ドームを単独できる人間にはなりたいなと思います。それくらいかな。ドームでできるようになれたらいいですね。
――ドームであればいろんな演出ができそうですもんね。
キタニ:何ができるかは正直よくわからないし、現状アイデアがあるわけではないんですけどね。あ、でも自分は高いところ好きなんで、空は飛びたいと思いますけど(笑)。
――あははは。ドームでフライングしますか。
キタニ:やっぱ高いところから歌ってみたいじゃないですか。気持ちよさそう。ただ、ライブで空を飛ぶっていうのはどうしてもアイドルカルチャーの中に存在しているものだから、自分みたいなシンガーソングライターが自然に空を飛ぶ在り方を見つけないとなとは思いますけどね。それが見つかったらめっちゃ嬉しい(笑)。
日韓台4組が集う「Hugs Vol.6」は「ナメられないパフォーマンスを」
――そんなキタニさんの次のライブが発表されていますね。7月に神戸と東京で開催される自主企画対バンイベント「Hugs Vol.6」です。2019年にスタートした「Hugs」も今回で6回目。当初、どんな思いを持ってこのイベントを立ち上げたんですか?
キタニ:その当時の僕はボーカロイドカルチャーから出てきたアーティストという印象を強く持たれていたんですよ。で、そういうカルチャーから出てきたアーティストは、基本的にはあんまりライブをしてなかったし、そもそも顔も出さない人が多くて。でも自分の場合はそうではなく、ボカロPとしての活動と並行して普通にバンドとしてライブハウスにも立っていたので、キタニタツヤとしてもライブはしたかったんですよね。だから、その姿勢をわかりやすく示したかったんです。
――対バンイベントにしたのはどうしてだったんですか?
キタニ:自分は元々、バンドサウンドが好きだし、好きなバンドもたくさんいたので、そういう人たちとの繋がりを作り、普通に友達になりたかったんですよ(笑)。さらに、対バン相手のファンの人たちに、自分はこういう音楽をやってますよ、こんなライブをするんですよっていうことも知って欲しかった。だからあえて自分の出自に近い界隈ではなく、ファン層がちょっと被らないアーティストに声をかけるようにしたんですよね。
――ライブタイトルにはどんな意味を込めたんですか?
キタニ:“Hug”というのは“抱擁”という意味なので、他のバンド、アーティストの人たち、あるいはそのファンの人たちと抱擁を交わして仲良くなりたい。そんな気持ちでタイトルを決めましたね。
――対バン相手に対して、戦うという感情にはならないですか?
キタニ:あー、ちょっと力が入っちゃうところは確かにありますね(笑)。フェスなんかでもそうなんですけど、この場にいる半分以上の人は俺のことを知らないんだろうなっていう思いでステージに立つ感覚があって。半ば思い込みみたいなところもあるんですけど(笑)、でもそういった状況に対して「かましてやるぞ」みたいな、通常の2割増しほど攻撃的な気持ちにはなるかな。根底には「戦うぞ」の気持ちはやっぱりあるんだと思います。そういう気持ちはなくならないほうがきっといいだろうなという思いもあるんですよ。自分のパフォーマンスを下げないためには、ちょっと反骨精神みたいな感情を持っていた方がいいなと。そうじゃないと漫然としたライブになってしまいそうだから。
――今回の「Hugs Vol.6」はこれまでの歴史を見ても、かなりおもしろい内容になっていると思います。特筆すべきは台湾と韓国のアーティストを招いているところで。

キタニ:そうですね。自分自身、いつかは海外のバンドと対バンしてみたいという思いはずっとあったんですよ。それが昨年やった初めてのアジアツアーをきっかけに実現した感じで。「別に海外のバンドを呼んじゃダメってことないよね?」と思えるようになった。台湾と韓国はそれぞれインディーズシーンがめちゃくちゃおもしろいし、今回ご一緒する2バンドはアジアツアーの中でコミュニケーションを取ることもできていたので、あらためて対バンのオファーをさせてもらいました。で、今回はそこにまったく関係ない日本のアーティストをブツけるっていうのもおもしろいところだと思います。組み合わせ自体にまったく意味はないんですけどね。
――日本のオーディエンスたちに海外のいいバンドをプレゼンしたいという思いもあったんですか?
キタニ:もちろんありますね。たぶん今まで聴いたことなかったって思う人も多いと思うので、自分のファンにそういった海外のシーンを知って欲しいなって。
――初日となる7月5日・GLION ARENA KOBE公演は、台湾のバンド・イルカポリスと日本のEveさんとの対バンです。
イルカポリス 海豚刑警
キタニ:まずイルカポリスは、メンバーそれぞれが全然違う方向のファッションをしていて、みんなそれぞれ変なんですよ(笑)。見た目も音楽もすごくポップで面白いし、曲によっては日本語で歌ったりする瞬間もあったりして。風土が関係しているのかもしれないけど、日本のインディーズとは違って、ちょっと明るさがあるような気もしますね。日本の音楽しか知らない人でもきやすく聴ける感じだけど、でもやっぱり異国の音楽だなって雰囲気もあって、そこが不思議。僕自身、イルカポリスをきっかけに台湾のいろんなバンドをディグったので、みんなにとってもいい入口になるんじゃないかな。
――Eveさんとはこれまでも交流がありますよね。
Eve
キタニ:ライブでも共演したことがありますしね。ただ、対バンは今回が初なので、すごく楽しみ。Eveさんとは年齢も近いし、聴いてきた音楽も自分と近しい気がしているので、いろんな部分でシンパシーがめっちゃあります。ほんと大好き。
――7月17日の東京ガーデンシアター公演は、韓国のバンド、Silica Gelと、日本のamazarashiとの対バンですね。
Silica Gel
キタニ:Silica Gelは2年前くらいに出た「Tik Tak Tok」という曲のMVをYouTubeで観たのをきっかけに知ったんですよね。その曲はサイケデリックロックの影響を感じさせつつも、すごく聴きやすいK-POP。なんですけど、半分くらいがギターソロで(笑)。僕、ギターソロが全然好きじゃないんですけど、そのギターソロは全然退屈じゃなくて不思議と全部聴けてしまって。むしろ「もっと弾いてくれ!」と思っちゃうくらい(笑)。それをきっかけにハマったバンドなんで、今回のライブでもぜひギターに注目して欲しいですね。日本のシーンに類するバンドが見当たらない、すごくおもしろいバンドですよ。
――amazarashiはどうですか?
amazarashi
キタニ:amazarashiは学生の頃からずっと大好きなんですよね。やっぱり秋田ひろむさんの書く歌詞がとにかく素晴らしいし、出羽良彰さんのアレンジもめちゃくちゃ好き。歌詞もサウンドも好きってことは、もう全部が好きって話ですよね(笑)。本当に替えの効かないアーティスト。ライブに行くたびに涙しちゃうので、今回の対バンも本当に楽しみです。
――バラエティに富んだ4組との対バン。キタニさんはどう戦おうと思ってますか?
キタニ:どうだろうなぁ。やっぱりナメられないパフォーマンスをしたいですよね(笑)。たくさん攻撃的な曲をやりたいとは思っていますけど。
――対バン相手によってセットリストも結構変わってきそうですよね。
キタニ:めちゃくちゃ変えますね。自分には本当にいろんなジャンルの楽曲があるんで、そこから対バン相手のファンの人も気に入ってもらえそうなものを柔軟に選んでいきたいなと。曲の人気を度外視して選曲することも全然ありますからね。楽しみにしていてほしいです。
公演情報 キタニタツヤ「TATSUYA KITANI Presents “Hugs Vol.6”」
2026年7月5日 (日)
神戸 GLION ARENA KOBE
Guest :Eve/イルカポリス 海豚刑警
2026年7月17日 (金)
有明 東京ガーデンシアター
Guest :amazarashi/Silica Gel
チケット
アリーナスタンディング
9,800円(税込)
- 小学生以上チケット必要。
- 未就学児入場不可。
- 整理番号順での入場。
スタンド指定席
9,800円(税込)
- 小学生以上チケット必要。
- 未就学児入場不可。
- 保護者1名につき、未就学児1名まで膝上での入場無料。
- 座席を使用する場合はチケット必要。
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取材・文:もりひでゆき
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