話題の「恐怖心展」がヤバすぎた! 音とニオイでも“恐怖”を浴びれるイヤな空間広がる〈取材レポ〉
東京・名古屋で約10万人が来場した展覧会「行方不明展」を手掛けた、気鋭のホラー作家・梨と、株式会社闇、『イシナガキクエを探しています』『飯沼一家に謝罪します』などで知られるテレビ東京プロデューサーの大森時生が手掛ける「恐怖心展」が、東京・渋谷にある渋谷BEAMギャラリーで開催中。SNSでは「来てよかった」「自分の怖いものが分かった」「面白かった」と早速話題で、土日はすでにチケットが完売している枠もでてきている。「うだる暑さでどこにも行けないわ~」とお悩みの皆さん、渋谷でゾクッとするのはいかが? 本展示の魅力の一部をピックアップして紹介する。
【写真】<閲覧注意>先端、人形、視線、ドリームコア あなたの恐怖を刺激する「恐怖心展」を体験
■「うわ、最悪(笑)」と拒絶される展示も
現在開催中の「恐怖心展」は、「先端」「閉所」「視線」といった、さまざまなものに対して抱く「恐怖心」をテーマにした展覧会。エレベーターで会場に到着すると、外の暑さとのギャップのせいか、不気味なくらいにひんやりと冷たい空気を感じる。
半透明の不気味なカーテン
まず驚いたのは、空間の作り方。順路を仕切っているのは壁ではなく、黒沢清の映画に出てきそうな、半透明のぶ厚いカーテンのようなもの。向こう側にいる別のゲストのシルエットがぬっと出てきたり消えたりするので、人の気配になんとなく心が落ち着かない。逆もまた然りで、展示を見ようとカーテンに近づけば、筆者自身も誰かを驚かせている可能性がある。わたしたちゲストが誰かの「恐怖心」を刺激しているかもしれない演出に、序盤から感動を覚える。
さまざまな恐怖心を体験可能
展示は大きく分けて4つのエリアで構成される。“注射”や“毛髪”といった<「存在」に対する恐怖>から、“視線”や“老化”などの<「社会」に対する恐怖>、“高所”や“閉所”などの<「空間」に対する恐怖>、“死”や“幸せ”など<「概念」に対する恐怖>まで、さまざまな恐怖を目の当たりにし、「恐怖心とは何か」を改めて考えていく内容だ。
「なにこれ?」と思ったら髪の毛!!
お化け屋敷のように誰かが脅かしてくることはないので突如叫び声が上がるなどはないが、時折「これめっちゃイヤ!!」と強い拒絶の声が聞こえてくるのが面白い。ホラー映画やお化け屋敷と違って恐怖が向こうからやってくるのではなく、「これはなんだろう?」と説明文や映像を覗き込んだ先に自分の恐怖が待ち構えているので、思わぬ形で恐怖心をあぶり出される人もいるかもしれない。一方で「え~? どこが~?」と全く刺さっていない人もいるのもユニーク。
本展覧会に際して放送されているTXQ FICTION第3弾『魔法少女山田』(テレビ東京)でも、魔法少女を怖がる少女と分からない人々が描かれていたが、その状況がリアルに体験できるのが本展覧会なのだ。
ヘッドフォンで音が聞ける展示も
しかも、ありがたいのか、迷惑なのか…「恐怖心展」ではヘッドフォンで「恐怖心」を生む音を聞くことができる体験や、「恐怖心」がよみがえってきそうなニオイをかげる体験など、没入感たっぷりに「恐怖心」を知れる展示も多数用意されている。
筆者も勇気が出なかった「臭気測定器」
中でも「うわ、最悪(笑)」と通り過ぎる人が多かったのが、ニオイに対する恐怖の展示で、手を近づけたり息を吹きかけることでニオイを数値化する「臭気測定器」が置いてある。筆者含め現実を受け入れたくない人たちが、そそくさと次々に通り過ぎていった。また個人的には金属をこする音が流れるヘッドフォンは、装着することができなかった。もともとホラーが好きなので怖いものには慣れていたはずだが、無意識に避けていたいろんな角度の恐怖が次々と呼び起こされていく。
廃棄に対する恐怖心を表現した「ごみの山」 ※くさい
しかし「イヤだな」では終わらず、4つに分けられた「恐怖心」を順に追っていくことで、厄介な感情ではあるものの、人間にとって大事な感情なのではないかと思えてくる。と思いきや、廃棄に対する恐怖心を表現した「ごみの山」が鼻をつまみたくなるニオイを放っていて、やっぱり恐怖心は克服しなきゃな…と真逆の考えも浮かぶ。
展示物ガチャ
そんな思いを抱えながらたどり着いた出口のショップには、「展示物ガチャ」なるものが。全13種類でガチャオリジナルの作品あり。恐怖心を持ち帰ることができる。
「恐怖心展」は渋谷BEAMギャラリーで開催中
一過性の恐怖ではなく「あれはどういう意味だったのだろうか」「これでいいのだろうか」「隣の人はなんであんな顔をしたのだろう」と“考えすぎる”というお土産付きの本展覧会。ちょっとした好奇心だったはずが、思いがけず、深い沼に足を突っ込んでしまったようだ。あなたの心には一体何が残るだろうか? はたまた何も感じないか…。数多の「恐怖心」と対峙(たいじ)し、その真相を確かめてみては?