櫻坂46、“ノンストップ公演”が映した現在地 総合力でたどり着いた“最高地点”

「櫻坂46の最高地点を目に焼き付けてください!」。キャプテンの松田里奈は、「5th TOUR 2025 “Addiction”」ツアーファイナル、京セラドーム大阪公演でBuddies(櫻坂46ファン)にそう呼びかけた。MCをほとんど挟まず、ノンストップで駆け抜けた本編2時間40分。その光景は、まさに“最高地点”と呼ぶに相応しいものだった。
【写真】“ほぼMCなし” 圧巻のパフォーマンスを見せた櫻坂46(ライブフォト43枚)
本ツアーは4月から5月にかけて愛知・福岡・広島のアリーナで6公演を行い、7月24日から26日には東京ドーム3公演、さらに8月23日・24日には京セラドーム大阪2公演を実施。全11公演で計26万人を動員し、グループ初の京セラドーム公演には両日で計8万人が集まった。
迎えた24日のファイナルは、アンコールを含めて3時間10分。本編は2時間40分に及んだが、その間にMCが入ったのはわずか1回、3分足らずにすぎない。途切れることなく畳み掛けるパフォーマンスにより、観客は終始高い熱量の中に引き込まれた。
最後の曲「櫻坂の詩」の中で松田は、「改名してからは、前が見えづらいこともあったし、櫻坂の色ってどんな色だろうって、たくさん模索してきました。でも諦めずに、櫻坂に全力で向き合ってきたから、こうして今の櫻坂46があります」と思いの内を明かした。
松田が話したように、2021年に行われた「1st TOUR 2021」の頃は、まだ楽曲も少なく、ライブの見せ方も模索していたように思う。だが、翌年の「2nd TOUR 2022 “As you know?”」からは、現在の“ライブの櫻坂46”のスタイルを作り上げ、年々洗練させ続けてきた。
24日のセットリストを見ても、その進化は明らかだ。「Start over!」「承認欲求」といったパフォーマンスを突き詰めた楽曲がある一方で、「マンホールの蓋の上」「もう一曲 欲しいのかい?」のようにライブで盛り上がるための楽曲も増えた。「TOKYO SNOW」のようにしっとりと聴かせる曲もあれば、今回初披露となった「真夏の大統領」のようなキュートな楽曲もある。楽曲の多彩さが緩急を生み出し、最後まで多様な色を描き出した。
ライブでは「TEAM SAKURAZAKA46」と表示されるように、ステージはメンバーの力だけで成り立っているわけではない。照明、映像、美術、そしてメンバーのパフォーマンスが融合して初めて完成する。この“総合力”が櫻坂46のライブの魅力だ。
昨年発売された『SWITCH Vol.42 No.7 特集 坂道白書』のインタビューの中で、櫻坂46のライブスタッフは、次のように語っている。「ライブチームにアーティストに対する愛情が無い限り、ライブは、ただ可愛い女の子が歌って踊るだけのなんでもない音楽イベントになってしまいます。ただ、櫻坂46は常にスタッフのことを考えてくれています。そして、気遣ってくれます。スタッフの仕事に協力してくれます。それが、僕らスタッフのモチベーションの全てです。だから櫻坂46のライブはこだわりを持って作ることができます」。
こうした互いの信頼関係があってこそ、今回のようにノンストップで見せ切るという異例のスタイルを実現できたのだろう。櫻坂46は、パフォーマンスだけでなくチーム全体の総合力で現在の“最高地点”にたどり着いた。
ライブの最後には、13thシングルのリリースと、来年4月に「5th YEAR ANNIVERSARY LIVE」をこれまでのZOZOマリンスタジアムから移し、新たな地で開催することが発表された。
ラストの曲「櫻坂の詩」の中で、松田は「一緒にまだ見たことのない景色を見に行きましょう」「Buddiesのみんな、準備はいい?」と呼びかけた。Buddiesは、その“準備”がすでにできているはずだ。(文:堀タツヤ)