ケネス・ブラナー×ミシェル・ヨーの演技合戦がアツい! 鳥肌モノの濃密ミステリー『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の魅力
提供:ウォルト・ディズニー・ジャパン
映画『オリエント急行殺人事件』『ナイル殺人事件』に続く、アガサ・クリスティ原作、ケネス・ブラナー監督・主演で贈る「名探偵ポアロ」シリーズ最新作『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』が15日に公開される。世界一の名探偵エルキュール・ポアロ(ケネス)が今回、水上都市ベネチアで依頼されたのは、「死者の声が話せる」という霊能者の“超常現象”の正体を暴くこと。“世界最高の霊能者”レイノルズ役を『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞主演女優賞を獲得したミシェル・ヨーが務めており、名実ともに世界屈指の俳優と言えるケネスとミシェルによる珠玉の演技合戦も見どころの1つだ。また圧倒的映像美を作り出すケネスの作家性、考察止まらぬミステリーなど、103分間スクリーンにくぎ付けにさせる要素もたっぷり。秋にふさわしい濃厚で濃密なミステリー映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の魅力を紹介する。
ケネスVSミシェル 両者譲らぬ迫真の対決
『オリエント急行殺人事件』のクライマックスで、ポアロが「うそを重ねればだませると思ったか。だが、だませぬ者が二人いる。その二人とは、神とエルキュール・ポアロだ」と容疑者たちに語りかけるシーンだけでも、ケネスの演技力は十二分に伝わるだろう。「神か、俺か」…ともすると自信過剰な人になってしまうこのセリフに、ケネスは深い説得力を持たせ、スクリーンを突き抜けるのではないかと思うほどの気迫を見せる。同作冒頭では、道に落ちていた動物のふんを踏んづけたポアロが、「バランスが悪い」とまだ無事であった逆側の足も汚すという行き過ぎた完璧主義っぷりを披露する場面も描かれたが、両足うんちまみれな人と同一人物と思えぬ迫力で犯人を追及していき、ケネスの芝居の振り幅に改めて驚かされた。
“ローレンス・オリヴィエの再来”との呼び名を持ち、シェイクスピア役者として名をはせたケネスは、幼いころから演技を学び、王立演技学校を首席で卒業するほどの実力者。監督・脚本・主演を務め、アカデミー賞監督賞・主演男優賞にノミネートされた『ヘンリー五世』や、ローレンス・オリヴィエを演じ、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『マリリン 7日間の恋』などさまざまな作品に出演し、特に『ハリー・ポッターと秘密の部屋』のギルデロイ・ロックハート役では強烈なインパクトを残した。日本でも老若男女問わずなじみ深いキャラクターだろう。
そんなケネスの最大の魅力は、シリアスな役からコミカルな役まで見事に演じ分ける変幻自在さ。クリストファー・ノーラン監督作『TENET テネット』では極悪人アンドレイ・セイターにふんしたが、「ロックハートとセイターとポアロが同じ俳優なの全く分からなかった」など、SNSでもその役の幅の広さに驚きの声が上がっている。
前述した通り、過去の「名探偵ポアロ」シリーズでも、ポアロの天才と奇人の二面性を違和感なく演じきっているケネス。そして今回の『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』でも、ポアロの新たな一面を披露している。1937年を舞台にした前作『ナイル殺人事件』から10年の年月が経った本作では、ポアロが隠居生活を送っていることが発覚。老いてしわも増え、以前ほどの覇気もないポアロの姿は、『オリエント急行殺人事件』での「神か俺か」発言からほど遠い人物にさえも見える。
レイノルズ役のミシェル・ヨー (C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
そんなポアロを探偵復帰させるきっかけとなるのが、ミシェル演じるレイノルズだ。物語を動かすだけでなく、一線を退いたポアロの探偵心に火をつけるという重要な役割も担うレイノルズを、ミシェルは見事に演じきっている。「女性の皆さん。もう誰にも『全盛期を過ぎている』なんて言わせないでください。諦めないで!」と、アジア人として初のアカデミー賞主演女優賞を獲得した際に披露した、女性たちを鼓舞するスピーチを体現するように、ミシェルはまだまだ進化を止めない。
ミシェルは唯一無二の経歴の持ち主で、子どものころはバレリーナを目指すもケガで挫折し、俳優の道に進むが結婚で一度引退。復帰後も再び引退を考えるほどの大ケガをしてしまうなど、数奇な人生を送ってきた。そんな彼女は『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』のウェイ・リン役に大抜てきされ、ハリウッド進出。近年では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』以外に、『クレイジー・リッチ!』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』に出演し、力強く華やかな存在感を示してきた。
彼女のキャリア初期の代名詞といえば、やはりアクション。『ポリス・ストーリー3』では走行中の列車にバイクで飛び乗るなど派手なスタントをこなし、主演のジャッキー・チェンにプレッシャーを与えたこともある。ジャッキーは「もうクレイジーなスタントはやめてくれ」「君ができると、僕はもっとうまくやらないといけなくなる」とミシェルに懇願するほど押しつぶされていたのだとか。
今回の『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』はミステリーなので、アクション作品ではないが、とはいえ無関係ではない。ミシェルの身体能力が片りんを示している場面がある。それはハロウィーンの夜に行われる降霊会のシーンでのこと。降霊会の最中、レイノルズ(ミシェル)は、突如、ものすごいスピードで、座っていたイスごとぐるぐると回り、顔を恐ろしく歪めながら、亡くなったアリシアの言葉を話し出す。アクションといえば、誰かを攻撃する動作に注目されがちだが、ブレない軸で姿勢を保ち続ける姿にも身体能力の高さが表れる。憑依され、この世のものとは思えない異様さを表現するレイノルズの姿は、思わず固唾(かたず)をのんでしまうほどの人間離れした気味悪さ。これまでポアロのペースで進んでいた物語が、レイノルズに侵食されていき、両者一歩も譲らぬ演技合戦が繰り広げられる。この思わず鳥肌が立つツーショットを実現できるのは、過去作でも旬な役者やベテラン勢まで数々の豪華キャストでそろえてきた「名探偵ポアロ」シリーズならではの強みだろう。
ケネスの映像美に鳥肌止まらず
また「名探偵ポアロ」シリーズは、ケネス監督作『シンデレラ』などでも見られた、彼の洗練された感性から生まれる映像美も魅力だ。『オリエント急行殺人事件』では雪に覆われていく脱線した列車や、きらびやかで空虚な一等車の世界を、『ナイル殺人事件』ではセットで再現したというアブ・シンベル神殿や豪華客船をダイナミックに映し出してきた。
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
そして今回の『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』の舞台は、ミステリアスで美しい水上の迷宮都市ベネチア。流浪の日々を送るポアロは、霊能者レイノルズの“超常現象”を見破るため、子供の亡霊が出現するという、謎めいた屋敷での降霊会に参加することに。「死者の声を話せる」と断言するレイノルズは果たして本物なのかトリックなのか…。卓越した推理力を駆使するポアロは見極めることができるのだろうか―。
屋敷ではさまざまな超常現象が起こり、招待客が人間には不可能と思われる方法で殺害されてしまう。犯人が本当に実在するかさえ不明な殺人事件に戸惑いながらも、“合理的な答えがある”と信じて挑むポアロ。しかし、超常現象は容赦なく襲い掛かり、遂にはポアロの命すらも狙われてしまう。この難解な殺人事件の犯人は、果たして“人間”か“亡霊”か?
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
人の心の小さなほころびまで見逃さない、人間ドラマも色濃く描いたケネス版「名探偵ポアロ」シリーズ。『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』は、ケネスとミシェルの名演が生み出す名探偵と霊媒師の対決、ケネスの画作り、ベネチアの街の美しさ、先の読めない考察しがいのあるミステリーなど、どこをとっても極上で、秋の夜長に反すうしたくなる良い後味が残る。劇場の大スクリーン、大音量で堪能すると、さらに濃密な時間を過ごせることだろう。
映画『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』は15日より劇場公開。
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
文:阿部桜子
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