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僕たち、私たちの『俺たちの旅』ファン座談会 <映画『五十年目の俺たちの旅』公開記念>

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P R:五十年目の俺たちの旅

(左から)グズ六、真弓、オメダ、カースケ
(左から)グズ六、真弓、オメダ、カースケ(C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会

 1975年10月から日本テレビ系列で放送された『俺たちの旅』は、中村雅俊演じるカースケ(津村浩介)、秋野太作演じるグズ六(熊沢伸六)、田中健演じるオメダ(中谷隆夫)による青春群像劇。不朽の名作が放送開始50年を迎え、彼らの「今」を描く最新作『五十年目の俺たちの旅』が、2026年1月9日より全国公開されます。50年の歴史とともに、たくさんのファンを連れて旅を続けてきた本作の公開を記念して、熱烈な作品愛をもつ『俺旅』好きが集まり、作品への想いを存分に語ってもらいました。

【動画】ナレーションは監督・中村雅俊が担当! 『五十年目の俺たちの旅』本予告

『俺たちの旅』ファン座談会 参加者プロフィール
ペリー荻野(ぺりーおぎの):グズ六推し「修学旅行は国会議事堂より井の頭公園!」
ライター。1962年生まれ。コラムニスト。大学在学中よりラジオパーソナリティ兼放送作家として活動。テレビ、時代劇、商業演劇についてのコラムを多く手がける。毎日新聞、時事通信、ハヤカワミステリーマガジンなどで連載中。

高島幹雄(たかしまみきお):カースケ推し「どこに行っても小説本を手放さなかった」
ライター。1965年生まれ。岡田奈々50周年『青春のアルバム 復刻CDボックス』を企画制作。『俺たちの旅SPコンサート』『五十年目の俺たちの旅』の各パンフレット編集。ライター仕事は雑誌『昭和40年男』。全国100局のコミュニティFMで毎週放送『週刊メディア通信』のパーソナリティー兼スタッフなど。

用田邦憲(もちだくにのり):洋子推し「思春期の入り口で出会ったのが…俺旅」
ライター。1970年生まれ。主に映画パンフレットや、Blu‐ray/DVDの封入ブックレットの編集・執筆などを担当。配信コンテンツやイベントの企画・構成なども手がける。近年の主な仕事に『Gメン’75 DVDコレクション』(デアゴスティーニ/全119号)、『スケバン刑事』シリーズBlu-ray BOX(東映ビデオ)がある。

岡本圭三(おかもとけいぞう):オメダ推し「作品への憧れで東京の大学に」
制作プロダクション勤務。1968年生まれ。1997年角川書店入社。数多くのBlu‐ray/DVD制作に従事。その後映画の企画・プロデュースに携わる。主な作品は『チワワちゃん』『ヤクザと家族 The Family』『見える子ちゃん』など。2025年より現職。

■『俺たちの旅』にハマり続けるファンが集合!

ペリー荻野(以下、ペリー):本日は『俺たちの旅』にハマり続ける人生を送るメンバーが集まりました。まずは、高島さん、持参の私物が素晴らしいですね。

高島幹雄(以下、高島):プチ自慢なんですけど、2000年代序盤に『俺たちの旅』で使われた歌を集めたCDを考えて制作したんですよ。「俺たちの旅・青春の詩−俺たちシリーズ主題歌・挿入歌集−」っていうCDです。放映当時に2枚出ていたサントラ盤のLPレコードを初CD化したんです。

一同:おおっ。

高島:それと学生の時に読みふけった鎌田敏夫さんが書いた『俺たちの旅』の文庫本ですね。『十年目の再会』の頃に、もう海へ行こうがどこ行こうが、持ち歩いて読んでたんですよ。

ペリー:かなり人生に影響を受けている感じが。

当時の井の頭公園にて (C)ユニオン映画
高島:井の頭公園の近くに住みたいと思ったんですよ。なかなかいい物件がなかったんで、高井戸に10年間住んでチャリで井の頭公園まで行って、「旅」気分を味わうっていうのをやってましたね。

岡本圭三(以下、岡本):気持ちはよくわかります。

ペリー:「井の頭公園」をこのドラマで知った視聴者も多かったですよね。修学旅行先が東京だった地方の女子中学生としては、国会議事堂より、井の頭公園と新宿にあるというあの噴水に行かせてくれ!!と思ってました。

用田邦憲(以下、用田):当時、あの噴水は底がドロドロだったそうですね。 オープニング、よく観たら中村雅俊さんがズボッとハマるところまで映っていて(笑)。

ペリー:用田さんは、「昭和傑作テレビドラマDVDコレクション」をはじめ、『俺たちの旅』の出版物に多数関わっていますよね。

用田:一番最初は「俺たちの旅 DVD BOOK」(全2巻)でした。70年生まれなので、ドラマはリアルタイムでは見てなくて、ちょうど『十年目』スペシャルのタイミングの再放送あたりで、初めて観たと思うんですね。当時でも珍しいじゃないですか、十年前のドラマの新作やるっていうのが。僕も思春期の入り口だったせいか、当時はいわゆる青春ドラマの類をたくさん観ていたんですけど、それらの中でも、続編ができるほどの作品って、どんなものだったんだろうって。そういう興味で観ているうちに、ハマってしまいました。

ペリー:初回にいきなり洋子の部室での着替えシーンが出て、思春期視聴者はドキドキですよ。

(左から)カースケ、洋子 (C)ユニオン映画
岡本:僕も小学校高学年で多分夕方の再放送で見た記憶があって、初回のインパクトはもちろんあるんですけど、やっぱり全体的にはまりました。なんとなく東京への憧れ、東京の大学に行きたいと思うきっかけになったと思います。

高島:小学生の時、六年生の放送委員が自分のレコードを持ってきてかけてたんですよ。主題歌だけでなく「ただお前がいい」も流してたのをよく覚えてます。あと林間学校のガリ版刷の歌本に山口百恵とか、「およげ!たいやきくん」といっしょに『俺たちの旅』(以下、しばしば『旅』と略します)の主題歌も載ってた。男子にとって『仮面ライダー』とか『ウルトラマン』などと同じヒーローみたいな存在だったのが、『俺たちの勲章』の雅俊さんと松田優作さんで、それが終わってすぐに『俺たちの旅』が始まった。あの当時って、ドラマで割とキャラが立ってるのって、やっぱ先生か刑事だった。あと石立鉄男さんのドラマ。そこに『旅』の3人が出てきたので、ませた小学生は大変でした。

ペリー:今までの青春ドラマと違うというのは、すぐわかりましたよね。鎌田先生も語られているように、高校生のような爽やかさもなければ、社会人のよう大人の悩みもない、中途半端なところが新しかった。プロデューサーの岡田晋吉さんにお聞きしたのは、現役の大学生ではなく、その下の中高生がターゲットだったとおっしゃってました。我々はまんまターゲットだったわけです。

岡本:3人は明日の食事がないくらいの生活しているけど、楽しそうなんですよね。なんか貧乏でもいい、ひもじい生活も別に悪くないって思ったのは事実ですね。

(左から)オメダ、カースケ、グズ六 (C)ユニオン映画

高島:確かに楽しそうなんですよね(笑)。

用田:僕も会社員からフリーになったのは、あんまり世の中の常識に合わせなくていいなとかって思ったんです。カースケたちも思ったような人生を生きてないかもしれないけど、信じられる友達がいて、価値観をずっと同じままで生きてきてる。自分も有形無形で影響を受けているんだろうなと思います。

■ドラマ『俺たちの旅』の好きな回&人物は?

ペリー:ドラマの中で好きな回といえば。

高島:絞れないですけど、まずは第7話、ワカメ(森川正太)初登場の回ですね。『旅』って、あの3人というイメージですけど、途中からワカメ含めた4人の物語になっていくんですよね。ターニングポイントだなと思いました。

(左から)グズ六、ワカメ、オメダ、カースケ (C)ユニオン映画

岡本:ワカメが自殺を図ると、みんなが仕事を休んで、あの「いろは食堂」すら休ませるんですよ。それからワカメをきっかけに最後にみんなで便利屋「なんとかする会社」を起業するでしょ。大学時代もいいんだけど、4人で仕事をするって、そういうドラマってまずないですよね。

高島:あと石橋正次さんの玉三郎が死んじゃう14話「馬鹿がひとりで死んだのです」。ドラマで使われてた雅俊さんの「猫背のあいつ」という曲があって、歌詞の中でも学校時代の親友が出てきて、ヤクザになって最後死んじゃうんですよ。あの歌詞の通りに進行していくんだなと思いました。

岡本:死ぬ前に玉三郎がみんなに料理を振る舞うでしょ。そういう多幸感のあとに消えてしまう。どうしても玉三郎の回は忘れられないですよね。

高島:あともうひとつ、岡田奈々さんの22話「少女はせつなく恋を知るのです」ですね。岡田奈々さん、めっちゃ可愛いし(笑)。ドラマの中の「青春の坂道」は、真弓の心情に合わせて歌詞が「きみ」のところを「あなた」に変えて歌われてるんですよ。そのバージョンは、岡田奈々さんのデビュー50周年のCDボックスに入れたんです。

(左から)カースケ、オメダ、真弓 (C)ユニオン映画

ペリー:さすがすぎる! そんなみなさんの思い入れがある人物は。

高島:なりたくてもなれないから、憧れとしてはカースケ。大人になるとやっぱりグズ六に憧れますよね。あんないい奥さんがいていいなよあって(笑)。

用田:僕は洋子さんに思い入れがあります。今回の映画でも、洋子さんはとても重要な存在として描かれている。やっぱり洋子さんの存在ってすごいなと。また金沢碧さんがもう、あの役にピッタリなんですよね。とにかく、あんな女性に人生を懸けて愛されたカースケは、本当に幸せだと思いますよ…。

洋子 (C)ユニオン映画
ペリー:3人の周辺の女性たちは、みんな魅力的。桃井かおり、浜美枝、檀ふみ、竹下景子、丘みつ子…しっかりしてるんですよね。私はいろいろ言うけど、グズ六を支え続ける紀子さんの大きさがおとなになってわかってきました。それだけにオメダの母(八千草薫)が、オメダと真弓の父(岡田英次)に「私だって会いたいわよ」と泣く場面が印象的でした。料理屋を切り盛りしてひとりでふたりの子を育てている、こんなしっかりした人も「会いたい」って泣くんだなと。

岡本:セリフで言うと、穂積隆信さんがいるグズ六の会社の元部長が焼き鳥屋を始めたときに「今までのビクビクしてる人生はもう嫌だと思う」みたいなことを言う。それもいいなと思いました。

用田:散文詩があったのも大きいですよね。「ただお前がいい」と散文詩のラストで、まあスッキリした、実はスッキリしてないんじゃないかみたいな回もあるんだけど(笑)、なんかそれで洗い流してしまう。あれは一つの発明だと思ってます。でも、あのやり方が万能かというとそうでもなくて、やっぱり『俺たちの旅』だから、あの世界だからうまくいったような気がするんですよね。そこがまた不思議なんですけど。

■50年前のドラマシリーズが初映画化!

映画『五十年目の俺たちの旅』ポスタービジュアル (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
用田:仕事上、噂は聞いていたんですけど、あんまり期待しすぎないようにしていました。あ、それは内容に対してじゃなく、仮に何らかの事情で完成しなかったときに、がっかりしたくなかったんです。50年前のドラマを映画化するという企画が立ち上がるだけでも奇跡ですからね。また、うっかり周囲に喋ってしまうのも怖かったので(笑)、自分の中でも、なるべく忘れるようにしていました。

ペリー:心の中の宝箱を大切にしている少年のようですね。

高島:僕は四十年目のスペシャルドラマがなかったっていう引っかかりが割とありました。実は岡田奈々さんの50周年のCDを作る際、スタッフ間で発売日をいつにするか検討することになったとき「映画」という言葉が出てきたんですが、僕はそれが『俺たちの旅』とは知らなかった。だから、五十年目の映画化の話は「マジか!!」でしたね。

ペリー:私も奇跡的だと思いました。岡本さんは映画の出資者というお立場ですよね。

岡本:会社が出資しているんです。今回、五十年目で映画化が実現すると聞いて、びっくりしつつ、あまりにも感動して、意味なくクランクインの撮影現場まで行きましたから。

ペリー:それからたびたび現場に行かれていたとか。

岡本:趣味です趣味(笑)。僕にとっては、雅俊さんってやっぱアイドルなんですよね。『われら青春!』があって、『俺たちの旅』『ゆうひが丘の総理大臣』『青春ド真ん中!』の雅俊さんが監督するっていうのが感動でした。亡くなった斎藤光正監督が作られた俺たちイズムを継承者として監督されるわけですから。

ペリー:鎌田先生も雅俊さんが監督やるから映画が実現できたとおっしゃってましたね。その他の監督だったら、ドラマの映像を使うのを嫌がったりするかもしれないが、彼は本当に真髄を知ってるから大丈夫だと。

(左から)脚本・鎌田敏夫、中村雅俊 (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
■『五十年目の俺たちの旅』は「同窓会ドラマじゃない」

ペリー:この映画は、オープニングからこれまでの『俺たちの旅』とは違うサスペンスタッチです。しかも洋子が生きてる!?という情報が入る。鎌田先生は、このシーンを思いついたから、脚本ができたとおっしゃってますが、岡田奈々さんは、台本を読んですごく悩まれたそうです。実際、こりゃ悩むわっていう役ですよね。

真弓 (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
高島:今までのキャラクターとちょっと変わってますよね。

用田:僕は新作がこれまでのようなテレビスペシャルじゃなく、映画でよかったと思います。今のテレビのコンプライアンスだと、元々の『旅』の世界をストレートに出しにくいとも思うから、変に手加減したものじゃなく、映画でここまでのことをやってくれたんだなっていうのが一番大きかったです。鎌田さんも今回、いろいろな場で発言されていますけど、大事なのは、「今」の彼らの物語。10年後、20年後、30年後のドラマでもその時の話だった。50年後もその精神は貫かれてました。同窓会ドラマじゃないんだって。

ペリー:確かに同窓会ドラマじゃないですね。

用田:でも一方で、もちろん回想シーンもたくさん出てくる。何がすごいって、50年前と40年前と30年前と20年前、それぞれの回想シーンは、当たり前ですけど、当時の「本人」たちが演じたものなんんですよね。そんな作品って、他にない(笑)。それだけでも、重みが違います。日本という国、社会の、半世紀での移り変わりも感じることができますし。

ペリー:男女雇用機会均等法も働き方改革もない時代。内閣府の資料でも1975年は日本で専業主婦の割合が一番高かったとあって、仕事も結婚も今とはイメージが違います。

高島:やたら殴り合うしね。

ペリー:でも、カルチャーショックを受けるのもいいと思いますよ。こんなに価値観が違う世界で真剣に生きてた人がいたんだって、若い人にも新鮮に感じられると思う。音楽とかファッションも含めて、ドラマを見てない世代の人にお薦めしたいですね。自分の親たちはこんな無茶な人たちに夢中になっていたのかって(笑)。

岡本:僕はあの「五十年目の答え合わせ」っていうキャッチコピーはぴったりくるなって思いますね。カースケは新しい仕事をしているし、グズ六は紀子さんと働いてるし、オメダは悩んでる。とにかく3人がブレてないっていうところが嬉しかったですね。だって映画でも、結構、無茶苦茶な行動するじゃないですか。

(左から)カースケ、オメダ (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
ペリー:家族からしたらとんでもないですよ。相変わらずかって。

岡本:ブレてない(笑)。

高島:映画の感想としてはピンポイントですけど、僕はどうしても音を気にして見ちゃうんです。BGMはトランザムの曲をカヴァーしてるなとか、雅俊さんの挿入歌は90年代のアルバムの曲だなとか。音楽の印象も強いドラマなんですよ。

ペリー:映画のキャスト、オメダの娘役の前田亜季さんも弱っちい娘じゃないところが、気持ちよかったですね。女子目線で見たら、本当に困った人たちでしょう。でも、ブレないのはやっぱり脚本の力だと思いました。もう年取ったしとか、上手くまとめようとか、そういう言い訳をしない。

(左から)オメダの娘・神崎真理、カースケ (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
岡本:人生を楽しむためにずっと今まで頑張ってきた。答え合わせをみんなで見られるのは喜びです。スピンオフもいいですよね。

高島:だとしたら、真弓かなあ。

ペリー:『旅』は、続く。映画からまた続いていくんですね。

(左から)オメダ、カースケ、グズ六 (C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
※高島幹雄の「高」は正確には「はしごだか」

『五十年目の俺たちの旅』は、2026年1月9日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー。


映画『五十年目の俺たちの旅』本予告

取材・文:ペリー荻野

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