松田美由紀「これまでの経験がすべてつながった」 念願の初監督作『カラノウツワ』で感じた手応え
P R: MIRRORLIAR FILMS PROJECT
クリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』。1月16日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定で上映されるシーズン8までに、著名クリエイターから一般公募まで、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した57本の短編映画が劇場公開。今回クランクインでは、シーズン8を彩る6作品の監督にインタビューを実施。第1回目は、女優をはじめ、歌手、写真家、映像作家と幅広いフィールドで才能を発揮させている松田美由紀に、初監督作品『カラノウツワ』制作秘話について語ってもらった。
■息子の友人が経験した実話が下敷きに
──松田さんは今作で初めて劇場公開映画の監督を務めますが、『MIRRORLIAR FILMS』へのオファーはいつ頃受けたんでしょうか?
随分前から話は出ていたんですが、今回やっと実現できました。私はもともと映像を作っていて、映画を撮るなら最初は短編からと考えていたので、とてもうれしかったです。
──ストーリーのアイデア自体は、すごく前から温めていたとお聞きしました。
実は、息子の友人が経験した実話をもとにしているんです。ドラマティックにアレンジはしましたが、年配の女性が「私には財産がある」とほのめかして、若い男性を誘惑するという軸は同じ。「そんなことが現実にあるんだ」とすごく面白く感じて、ストーリーとして描いてみたいと思いました。
──文子と土井のキャラクターシートを拝見しましたが、劇中で描かれない設定までびっしりと書き込まれていて驚きました。
「もっとこの2人の話を長編で見たい」と言われたらいつでも作れます! それくらい自分の中で人物像ができあがっています。裏ストーリーは、土井は親が刑務所に入っていて「人殺しの子供」と言われながら育ってきた人。そして文子は大金持ちから転落した女性です。文子はお金という魅力しか自尊心がないので、相手をお金で引っ張り合うしかできない寂しさ。そんな、2人の孤独を描きたいと思いました。
──ストーリーが進んでも2人の本心がなかなか見えてこず、ハラハラしながら観ていました。
短編だからこそ、単純にしたくなかったんです。おばあさんと子供が遊んでいる姿を2人がチラッと見たり、猫がじゃれ合う様子を文子がとてもクールに見ていたり…いろんな解釈ができるよう、含みを持たせています。やっぱり映画って、観る人の想像をかき立てるものであるべきだと思うんです。作品を観たある友人には「すべてがおばけだったのかと思った」と言われて、ああ、そう捉える人もいるんだなと。観る人の想像力によって、いろいろな可能性が広がる15分間にすることが理想でした。
──まさにそういう作品に仕上がっていると思います。私は最初「土井は文子の生き別れの息子なのかな?」と想像していました。
それも考えました。人って、距離感が急にグッと近づく瞬間がありますよね。例えば「え、あなたも〇〇生まれ?」みたいに、共通点を知ることで一気に親近感が湧いたり。そんな瞬間を描きたいと思って撮ったのが、喫茶店で2人が同時に角砂糖をかじるというシーンです。
■44年来の友人・原田美枝子は「本当に純粋で可憐で、素敵な人」
──角砂糖をかじる人は滅多にいないので印象的でしたが、そういう意図があったんですね。キャストの原田美枝子さん、佐藤緋美さんはミステリアスな雰囲気が役にぴったりでした。松田監督は44年来の仲である原田さんをずっと撮りたいと思っていたそうですが、それはなぜですか?
美枝子は10代の頃からの友人なんですけど、本当に純粋で可憐で、すてきな人なんです。プライベートな付き合いのほうが長かったけど、今回俳優としての原田美枝子としっかり向き合い、一筋縄ではいかない役者だということがわかって、すごくうれしかったですね。こだわりをしっかり持っている役者が好きなんですが、美枝子はすべての瞬間において文子だったし、1つひとつのシーンをちゃんと考えてくれていることがよくわかりました。
──メイキングで原田さんは「2日間の撮影だったけど、1ヶ月くらいに感じました」とおっしゃっていましたね。
とにかく時間がなくてぎゅっと撮影したので、すごく疲れたと思います。「このくらいの作品を2日で撮れると思わないでほしい」とこぼしていましたね(笑)。でも絶対に手を抜かないと決めていたので、そんな中でも光や画角などには徹底的にこだわり抜きました。
──佐藤さんはご一緒してみていかがでしたか。
やはりサラブレッドですよね。普通のDNAではないことをひしひし感じました。ミュージシャンと俳優って、似ているようで全く違う生き物なんですよ。アーティストは自分を表現する職業で、俳優は監督の考えていることを具現化する人。緋美くんはどっちも持っている印象だけど、今回はアーティストの部分を抑えて、俳優に徹してくれ感謝してます。
──演技はキャストに委ねるのではなく、松田監督が細かくディレクションしたのでしょうか?
私がすべて、具体的な動きや背景にある感情などを説明しました。長年俳優をやってきたので、俳優の同意語をもってますから。やりやすかったかと。緋美くんは本当に純粋で優しい子で。土井という役は、演じるのがとても難しいと思うんですよ。文子と40歳も離れているけど「もしかしたら恋仲になるかもしれない」と思わせなきゃいけないから。性的でなく、感覚でその雰囲気を出してくれました。
■これまでの経験がすべて繋がった
──ロケを行った岡山には、どんな印象を持ちましたか?
アートな香りがするというか、美意識が高い印象がありますね。私のイメージに合うロケーションを岡山で探してもらったら、文子の家も喫茶店も、理想的な場所が見つかってうれしかったです。実は最初と中盤に出てくる喫茶店は、2つとも同じお店なんですよ。あと、文子の家のそばで電車が走っている雰囲気も本当に素晴らしくて、電車の音は絶対に録りたいと思いました。
──どのカットも美しく、そして感情が立ち上ってくるような印象を持ちました。特に手応えを感じたシーンは?
たくさんありすぎますが、美枝子が喫茶店に座った画を見た瞬間に「いい作品ができるな」と確信しました。横顔がモナ・リザみたいで、本当に美しかったんですよね。私は長く写真家としても活動してきたのですが、自分の写真の質感を映像でどれだけ出せるかというのも、今回意識したポイントです。しっかり自分の好きな色が撮れていてうれしかったし、「自分の画が撮れたな」と思ったので、今後もこうしたタッチで続けていきたいです。
──次回作に向けて、もう動き出しているんですか?
はい、長編を作っている最中です。ラブストーリーも撮りたいし、今っぽい不良の若者も撮ってみたいし…と、いろいろ思い描いています。もう64歳ですけど、『カラノウツワ』をきっかけに、「死ぬまで映画を撮りたい」というスイッチが入りました。私はこれまでの人生で写真家、歌手、アートディレクター、俳優など本当にいろんなことをやってきたけど、映画作りを始めてみて、それらの経験が全部つながったような感覚を覚えたんです。「ああ、やっと辿り着いた」とすごくうれしくて。ここで映画監督としてのキャリアが始まったので、今後もたくさん撮っていきたいです。
『MIRRORLIAR FILMS Season8』は、1月16日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定上映。
(C)2025 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
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