節田朋一郎監督、悔しさをバネに続ける映像制作 『愛骨』は“変な人を真面目に見る”世界観を大事に
P R: MIRRORLIAR FILMS PROJECT
クリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』。1月16日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定で上映されるシーズン8までに、著名クリエイターから一般公募まで、俳優、映画監督、漫画家、ミュージシャンなどが監督した57本の短編映画が劇場公開。今回クランクインでは、シーズン8を彩る6作品の監督にインタビューを実施。第3回目は『愛骨』の節田朋一郎監督に、本作のお気に入りシーンや見どころを語ってもらった。
■悔しさをバネに続ける映像制作
──まずは節田監督のこれまでのキャリアについてお聞かせください。
普段は広告制作会社に勤めていて、TVコマーシャルや広告系のショートムービーを作っています。5年前くらいに、自主制作で短編映画を作り始めました。コロナ禍で仕事がなくなってしまった際、せっかくスタッフのスケジュールを押さえていたので、急遽短い脚本を書いて『必要と不必要』という作品を作ったのですが、それが東京国際映画祭の「Amazon Prime Videoテイクワン賞」でファイナリストに選んでいただけたんです。でも上映の際に失敗してしまって…。「このままでは終われない」とスタッフと意気込んで、そこから毎年作品を作り続けてきた感じです。
──悔しさがバネになったと。2023年に制作された『愛骨』は、『深骨』という30分の短編のスピンオフ作品ですが、2つの作品には共通するシーンもありつつ、少し視点が異なる構成になっていますね。
はい。実は最初に作ろうと考えていたのは『愛骨』のほうだったんです。男女がすれ違う恋愛ものを作りたかったのですが、男女がどこまで行っても噛み合わず、脚本を決着させられなくて(笑)。試しに女子高生のキャラクターを置いてみたら筆が進んだので、女子高生が軸になっている『深骨』を書き上げて、キャラクターの深みが増してから『愛骨』もまとめていった…という順番です。撮影も2作同時に行っているので、バージョン違いの2作品という感覚ですね。
──『愛骨』に続けて『深骨』を観たら、キャラクターの思考をより深く理解できて面白かったです。“骨”をキーアイテムとしたのは、骨好きの弟さんの存在がきっかけになったそうですね。
僕の弟が深海魚や骨を好きで、よく話を聞いていたんですが、話していることがよく理解できなくて(笑)。でも、僕が理解できない世界を面白いと熱弁している人間を見ている…その感覚が面白いと感じたんです。そういう人を描きたいと思って、『愛骨』の小林先生が生まれました。
■ギリギリでセリフを変えた「生きることに迷いなどありません」
──『愛骨』ではリアリティがありつつ、どこかリリカルなセリフがすてきだと感じました。
会話のリズムは意識しています。いいことを言っているようなシーンも、あまりストレートにやりすぎると少し恥ずかしくなってしまうので、少しふわっと表現することが多いですね。それがいい雰囲気を作ってくれていると思います。
──根津茂尚さん演じる小林先生、安川まりさん演じる同僚教師のまりこ、宮原俐々帆さん演じる女子高生というキャスト3人のバランスも絶妙でした。キャスティングはどのように行いましたか?
僕は演劇がすごく好きでよく観に行くんですが、そこで根津さんと知り合い、今までの作品でもお世話になっていたんです。安川さんも舞台で拝見していて、この役をぜひお願いしたいと思い、事務所から直接オファーしました。宮原さんは安川さんの事務所の紹介ですが、以前参加した映画祭のある作品で主演をされていて、雰囲気がすてきな方だと思っていたんですよね。舞台で活躍されている根津さんと安川さんの中に、舞台経験のない宮原さんが入ることで、いい感じに“差”が生まれて、それがうまく教師と生徒の年齢差を浮き立たせていたと思います。
──演技についてはどんなディレクションを?
基本的にはおまかせです。キャスト陣には本読みのときに「ここはこういう雰囲気で」とイメージをお伝えしたのですが、現場に入ってからは、その方自身が捉えたものを出していただきました。
──監督が特に気に入っているシーンはありますか。
まりこ先生が「私、手術するんです」と小林に伝えるシーンは、しっかりと“溜め”を作って、「小津映画みたいにやってください」とリクエストしました。そうしたらスタッフも乗ってくれて、映像が上がってきたら、バックにひぐらしの鳴き声が入っていて(笑)。めちゃくちゃいい雰囲気になっていてうれしかったですね。
──言われてみれば、小津映画の雰囲気がありますね。
厳密に言えば違うのですが(笑)、大人な2人のイメージですね。そして、女子高生が2人の教師からいろいろなことを受け取る関係性も、すごくいい感じに撮れたなと。女子高生は深海魚みたいなキャラクターにしたかったんです。存在はしているけど、見たことはないし、いるかいないかわからないようなキャラクターというか、少し死に近い存在。海外の映画祭で「彼女は幽霊なのか?」と言われたこともありました。小林と女子高生が骨格標本を一緒に作りながら、小林が「生きることに迷いなどありません」と言うシーンは、とても気に入っています。
──あのシーンはライティングも素敵ですよね。雰囲気もあいまって、小林のセリフが胸に響きました。
実は撮影時間ギリギリでライトを立てられなかったので、スタンドライトのみで撮ったという裏話があります。結果的にきれいに撮れていて安心しました。最初に台本を書いているときは「生きることは迷ってばかりです」というセリフにしていて、悩みに悩んで最後に変えたのですが、「迷いなどありません」にしてよかったと思っています。
■「そこにいてくれるだけでいい」と感じることがテーマ
──『愛骨』を『MIRRORLIAR FILMS』へ応募しようと考えた理由は?
『MIRRORLIAR FILMS』のことはもちろん以前から存じ上げていて、チャンスがあれば参加したいと思っていました。コンペにたくさん出すために30分の『深骨』と15分の『愛骨』の2本を作ったようなところもあるので、こうして選出いただいて、著名な方々と並ばせていただけて、めちゃくちゃうれしいです。
──『MIRRORLIAR FILMS』に参加して、今後の作品制作に向けてどんな刺激を受けましたか。
自分のやってきたことをぶらさずに作っていくほうがいいんだな、と改めて思いました。映像や色合い、画角など、監督それぞれにこだわりがあると思いますが、それを僕が今から真似ても追いつくわけはないので、自分の色を見失わないようにしたいですね。僕がいつも意識しているのは、“変な人を真面目に見る”世界観なんです。「まともな人」と一口に言っても、誰しも少しずつどこかが変じゃないですか。“変な人を真面目に見る”感覚を、今後も大事に突き詰めていきたいです。
──最後に、劇場で観てくださる方へメッセージをお願いします。
すれ違う2人の話を書こうと作り始めた『愛骨』ですが、制作中に自分が感じたのは、「たとえすれ違ってしまっても、そこにその人がいることがうれしい」ということでした。皆さんにも隣にいる方の存在の大切さを改めて感じていただいて、「そこにいてくれるだけで、生きていてくれるだけでいい」というこの作品の根源にあるテーマを、感じてくださったらうれしいです。
『MIRRORLIAR FILMS Season8』は、1月16日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国の劇場で2週間限定上映。
(C)2025 MIRRORLIAR FILMS PROJECT
取材・文:岸野恵加
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