『葬送のフリーレン』は「ものすごい作品」 種崎敦美&岡本信彦が語る“フリーレン”の真っ白な魅力

インタビュー
2023年9月29日 07:00

■勇者パーティーは“みんなでとれば”正解になる

――ヒンメルら勇者パーティーの回想は順を追って語られるわけではなく、断片的にさまざまなエピソードが出てきます。そういう展開の仕方だと演じる方は大変なのではと思いました。

岡本:僕も大変そうだなと思って、初回の収録は結構身構えて現場に入った気がします。本作で求められていたのはナチュラルさだったのですが、ヒンメルの場合どうしたらいいんだろうって思い悩みながら、最初は演じました。ただ、種崎さんやハイター役の東地宏樹さん、アイゼン役の上田燿司さんら勇者パーティーの面々と掛け合ったとき、何とかなる気がして。みんなで一緒にとれば、それがもう正解になるんだろうなと思ったんです。

勇者パーティー  (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会
――まさに勇者パーティーのようです。

岡本:ですね。今まで声優をやってきて、エゴかもしれませんが「俺はこれやってやったぜ」「これはよくやったよな」という気持ちになることが多かったんです。でもヒンメルを演じているときはそれがなくて。そのおかげと言ったら変かもしれませんが、本作は一つの作品として冷静に見られるんです。自分がヒンメルをやっているとはまるで感じずに見られるんですよね。

種崎:私も「みんなで掛け合えばもうパーティーは出来上がる…!」という感覚でした。スタッフの皆さんも、みんなで作ったその空気や、自然に出てきたものを大事にしてくれていた気がします。

作中で、フリーレンは変化もしているのですが、1000年以上生きている中で変わらない、ブレない部分も芯にあるなと思います。なので、例え回想で時系列がどれだけ飛ぼうとも、その芯にある部分を忘れずにいれば、あとは「1000年も生きてるんだからどんな日があってもいいじゃない」と思えるようになって、それからは気持ちが楽になりました。

――ブレない部分というのはどういうところ?

種崎:原作を読んだとき真っ白な子だなって。透明というより、真っ白。その真っ白なところが真ん中で、どこか抜けていてかわいらしいところがその次の面、そして外側にあるのが、「人間を知ろう」と変化していく部分なのかなと私は思います。

■もしも1000年生きられたらどうする?

――フリーレンは1000年生きる中で、飽きることなく新しい魔法を身に付けようとします。もしお二人がフリーレンのように長い時間を生きることができたら、ずっと声優の仕事を続けていたいですか?

岡本:声優もやりたいですよね。1000年あったら例えば週3日は休んでどこかへ旅行に行ってみるとか、仕事のスタンスもだいぶ変わりそうな気がします。どちらかと言うと、声優であり続けることの難しさに直面しそうな気がしますね。

種崎:私は1000年あったら違う仕事をすると思います。きっと身体能力も衰えない、つまりは喉が衰えることもないだろうから、いい状態のまま声優をやって、その後は修業が必要なものとか、全然違う仕事をやりたいです。

岡本:修行… 寿司職人とか?

種崎:和菓子職人もいいなって。もちろん、声優がいいんですよ。ちっちゃい頃から、声優になることしか考えていなかったから。だからこそ、それ以外のことを全力でやってみたいんです。

種﨑敦美
――フリーレンはヒンメルら勇者パーティーから少なからず影響を受けています。お二人も同じように、影響を与えられた出来事はありましたか?

岡本:海外に行って言語の壁にぶち当たったときや文化の違いを感じたとき、自分のなかの常識が覆ることがあります。死生観で言えば、明確に命が大事だなと思ったのがバンジージャンプをしたときですね。僕は物理的に危険だよというときでも、危機感が薄いタイプなんです。良くも悪くも恐怖をあまり感じることがなかったんですよね。だから、バンジージャンプも平気だと思っていたのですが、覚悟を決めないと踏み出せませんでした。恐怖体験をしたことで改めて命は大事だなと感じたんです。

種崎:テレビアニメデビュー作『となりの怪物くん』の打ち上げの帰り際、副監督をされていた長沼範裕さんから「また一緒に仕事したいから、絶対消えないでよ!」と声をかけていただいたんです。私はその頃はほとんど仕事をしていなかったのですが、その言葉がずっと頭と心にあって「消えてなるものか、消えてはならぬ」と奮い立たせてくれていたように思います。そして長沼さんとはその数年後、『魔法使いの嫁』という作品で、監督と主人公としてご一緒することができたんです。

岡本:「また一緒に仕事がしたいから」って、すごくいい言葉ですね。

岡本信彦
――最後に、改めて本作の注目ポイントを教えてください!

岡本:本作は1000年の時を生きてきたエルフのフリーレンから見た“人”というのを、僕たちも俯瞰(ふかん)的に見られる作品だと思います。一分一秒を大切にしなきゃと、本当の意味で生きる活力になる作品ですね。いろいろなメッセージが散りばめられていますが、どこを拾っても一級品ですので、ぜひ楽しんでください。

種崎:私は今作のキャラクターの目が本当に大好きなのですが、目線や、口元、間(ま)、セリフがない部分にも、たくさんの繊細なものが詰まっています。原作を大切に忠実に描きながらも、原作に描かれていない部分もアニメーションスタッフの皆様が繊細にすてきに膨らませてくださっているのでぜひ楽しみにしていてください。原作を読まれている方はもちろん、アニメで本作に初めて触れる方も、まずはただただ作品を見てほしい、感じてほしいと思います。

※種崎敦美の「崎」はたつさきが正式表記

2ページ(全2ページ中)

この記事の写真を見る

イチオシ!

葬送のフリーレン

アニメ

声優

岡本信彦

種﨑敦美

取材

M.TOKU(ライター)

インタビュー

あわせて読みたい

[ADVERTISEMENT]

公式アカウント

おすすめフォト

【行きたい】今読まれている記事

【欲しい】今読まれている記事

【イチオシ】今読まれている記事