聖児セミョーノフ&秋吉久美子「哲学が一致」 エディット・ピアフ没後60年記念公演『ピアフとコクトーへのオマージュ』への思い
提供:舞台『ピアフとコクトーへのオマージュ』
聖児セミョーノフと秋吉久美子が出演する舞台『ピアフとコクトーへのオマージュ』が開催される。本公演は2022年4月に上演され、好評を博した舞台の再々演だ。12月16日にロームシアター京都、12月27日、28日には紀伊國屋ホールにて上演が決定している。今回クランクイン!は、ひと足早くリハーサルに潜入し、聖児セミョーノフと秋吉久美子にインタビューを実施した。
■歌あり、舞踏ありの重厚な音楽詩舞劇
『ピアフとコクトーへのオマージュ』は、共に没後60年を迎えたシャンソン歌手のエディット・ピアフと詩人のジャン・コクトーへのオマージュ作品だ。第一部では音楽劇『あなたはエディット・ピアフを知っていますか?』、第二部では新作の音楽詩舞劇『ジャン・コクトーからの手紙』、第三部ではキャスト全員による『スペシャル・シャンソン・ショー』が上演される。主演にはシャンソン歌手としてパリでも劇場公演を成功させた聖児セミョーノフが、共演にはドラマ・映画で活躍し、数々の映画賞を受賞する秋吉久美子がメインキャストに名を連ね、豪華キャストで偉大なるアーティストへオマージュを捧ぐ。歌あり、舞踏ありの重厚な芝居の世界を楽しめる作品となっている。
■秋吉「聖児さんは同じ思いを分かち合える人」
――再演することになった経緯を教えてください。
聖児セミョーノフ(以下、聖児):20代、30代の方にもピアフのことを知ってほしいという思いから、昨年4月に、『あなたはエディット・ピアフを知っていますか?』という舞台を作りました。初演と再演を合わせて全11公演をやったところ、好評をいただきました。今年は、エディット・ピアフの没後60年になります。また、再来年の2025年には生誕110年を迎えることに。ピアフとしてはかなり盛り上がっていくタイミングです。フランス以上にシャンソンが愛されてきた日本で、最も有名なシャンソン歌手・ピアフの没後60年に何もないのは寂しいと思っていたところ、日本の演劇の聖地とも言われる紀伊國屋ホールで上演できる機会を頂き、ピアフのためにもやらせてもらおうと思いました。再演にあたっては、素晴らしい表現者である秋吉さんが出演してくださいます。
――今回のキャスティングで秋吉さんに依頼した理由は?
聖児:秋吉さんはお芝居はもちろん、普段お話しなさる様子まで素晴らしい方です。ご自身の話す内容に哲学があり、自分の意思を持って話すところがとてもフランスっぽいと思いました。フランス人の女優さんは自分の思想、哲学がある方が多いのですが、秋吉さんもそういう意味で“自分の意思”を持っています。初めてお目にかかったときにも、政治、宗教にはじまり、ありとあらゆることをご自身の言葉でナチュラルに議論していて、それが役の存在と強く繋がりを感じたことから、秋吉さんに出演して欲しいと思いました。
――秋吉さんが演じる麻生礼子についても教えてください。
聖児:秋吉さんにお願いした麻生礼子という役は、ピアフに色々なことを教えたレイモン・アッソという音楽家から着想を得ています。レイモン・アッソの指導で、ピアフはスターになっていく。だからレイモン・アッソは、知的で、自分の考えがあって、それをピアフにきちんと教育できる人ということになります。麻生礼子とレイモン・アッソは性別も違うし関係性も違うけれど、知的で哲学的で、自分の考えがある女優さんということで秋吉さんにお願いしました。
――聖児さんから依頼が受けたとき、秋吉さんはどう思われましたか?
秋吉:“誠実さ”の強引さを感じました(笑)。聖児さんは飾っていない人。素敵なことをたくさん言って頂いたことは、ありがたく受け取りました。私は、表現者として在る中で、時には気持ちが伝わらないと感じることもありますが、それは、ありとあらゆる表現者が感じることかもしれません。誰もががっかりし、時には失望しながら、また希望を持って表現を続けているのだと思います。私にもがっかりする経験がありましたが、聖児さんからの言葉を受けて、同じ思いを分かち合える人がいると感じて嬉しかったですね。
――運命的な繋がりだったのですね。
秋吉:私はミュージカルや舞台で歌ったことはありませんでした。でも聖児さんは、私が歌えると思っていたらしくて。だから練習は一から始めて、今日が3回目。お引き受けする条件として、「とことんレッスンをしてください」と聖児さんにお伝えしました。聖児さんのレッスンは、細かいところから大元に行くのではなく、大元を理解すれば細かいところはクリアできるという考え方。短時間のレッスンの中で、聖児さんのこの考え方は私の考え方と一致していました。
聖児:はじめて秋吉さんと話した時に、「『バラ色の人生』はパリがナチスに占領されているときに作られた歌だけれど、そんな状況下でもロマンティックな歌を歌うのがフランス魂だ」と話されていて。一番大事なところを掴んでいらしたので、これは大丈夫だと思いました。
秋吉:哲学が一致すればあとは積み重ねですね。
――本作の見どころを教えていただければと思います。
聖児:これは、あるバーでの一夜の物語です。派手なことは何もないけれど、クサクサしていた主人公が人からの優しさを重ねることにより、ささやかに明日を夢見ることができるという物語。そして100年前に生きたピアフの人生も、じわっと知ることができます。ピアフの愛や、バーに集う人の愛が少しでもお客さんに伝わるといいなと思っています。
秋吉:私がお稽古の中で感じたスピリッツや、音楽のエクスタシーもありながら、お芝居もありという中で、エディット・ピアフの自伝をみんなで解釈していきます。そこには舞踏も取り入れられており、独特の面白さがあるのではないかと思いますね。今、世界全体が地球温暖化や戦争など、闇に走りやすい時代です。そんな中で、彼女の精神性を学び、みんなで音楽のエクスタシーを分かち合って良い時間を過ごすことで、また勇気を持って前に進めるのではないでしょうか。
舞台『ピアフとコクトーへのオマージュ』は、京都・ロームシアター京都にて12月16日、東京・紀伊國屋ホールにて12月27日・28日上演。
舞台『ピアフとコクトーへのオマージュ』公式サイト>
取材・文:Nana Numoto
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