映像革命が生んだ青春のリアル!劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』—CGでしか描けない“あの日の煌めき”を体感せよ【後編】
P R:松竹

愛媛県松山市の美しい自然と、ボート競技に挑む女子高校生たちの青春を描く『がんばっていきまっしょい』。本作を観たとき、心が震えるような感動を覚えた。CGを駆使した映像美が、愛媛の自然の息吹やボート競技の躍動感をこれほどまでにリアルに表現できるとは驚きであった。CGは冷たく機械的だという先入観を持つ人も少なくない。しかし、本作はそのイメージを覆す作品であり、CGの持つ可能性を最大限に引き出しつつも、温かみや息遣いが感じられる仕上がりとなっている。本稿では、CGによる臨場感やキャラクターデザインの工夫、シネマスコープで描かれる青春の深みなどに焦点を当てつつ、この作品がCG技術の新たな可能性を示す一作であることについても掘り下げる。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』公式サイト >■圧倒的な映像美で表現される愛媛の自然
櫻木優平監督は、脚本の制作段階から愛媛県松山市を幾度も訪れ、徹底したロケハンを行うことで作品に豊かなリアリティを注ぎ込んでいる。松山の街並みや広がる自然、地元の人々の温かさを肌で感じ取り、これらを細やかに描写することで、観客がまるで作品の中に飛び込んだような臨場感を得られる仕上がりとなっている。
本作が舞台とする松山の風景は、ただの背景として描かれているのではなく、キャラクターたちの心の成長や葛藤と調和し、彼女たちの青春を彩る重要な要素として息づいている。観客は、松山の自然とともにキャラクターたちが抱える思いや挑戦を感じ取り、心の中で彼女たちの物語に寄り添っていくことができるのだ。
広がる空とその下で静かに息づく自然が、まるで登場人物たちの心情を代弁するかのように画面に広がり、胸の奥に静かで力強い感動が押し寄せてきた。この風景は、ただ「美しい」と形容するだけでは足りない。観る者の心に響き、どこか懐かしさすら感じさせる力を持っている。松山の自然が、青春の喜びや苦悩を映し出すスクリーンそのものとなり、観客を物語の中心へと深く引き込んでいくのだ。
さらに、この作品はアニメツーリズムの観点からも注目されている。作品で描かれる風景や地元のスポットは、ファンにとって「聖地」となり、実際にその場を訪れることでキャラクターたちが感じた空気や風景をリアルに味わうことができる。
アニメの舞台を訪れる「聖地巡礼」は今や一大観光トレンドとなっており、松山もこの作品を通じてアニメファンを惹きつける観光地として新たな注目を集めるだろう。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■CGの進化が生んだ、未体験のボート競技シーン!
本作のボート競技シーンは、CG技術を駆使してスピード感や緊張感を圧倒的に表現している。例えば、ボートが水面を切り裂くときの波しぶきが細やかに描かれ、光の反射によって水面がきらめくさまがリアルに再現されている。これにより、まるで自分がボートの中にいるかのような臨場感が観客に伝わってくる。舞台全体を3Dで構築することにより、競技のスピードと共に、選手たちが一瞬の判断で動く緊張感が観る者に鮮やかに伝わってくる。
このボート競技シーンのリアルさと迫力には驚かされる。水面の輝きやオールが水を掻く際の動き、立ち上る波しぶきなど、細部まで徹底的に描かれた映像は、観る者をその場に引き込む力を持っている。競技の緊張感が伝わるどころか、画面の中の選手たちと呼吸や鼓動を共にしているような感覚に陥る。大会シーンの激しさと臨場感には思わず息を呑み、スクリーンから目を離せなくなるだろう。
ボート競技は、全員が同じリズムでオールを漕がなければ進まない、チームの一体感が試されるスポーツである。この一体感がCGで精密に描写されており、ボートの滑らかな動きが、選手たちの努力とチームワークを視覚的に伝えてくれる。特に、終盤の大会シーンでは、ライバルチームとの白熱した競り合いが緻密に描かれ、その場の緊張感や焦燥感が痛いほど伝わってくる。観客もまた、ボートの揺れや水面の波動と一緒に心が揺さぶられる感覚を覚えるはずだ。
さらに、CGによる描写は単なる視覚効果を超えて、選手たちの身体の動きや筋肉の緊張、表情の変化にまで及んでいる。オールを漕ぐたびに肩や腕にかかる負荷が細かく描かれ、その「重さ」まで感じられる演出は圧巻である。このリアルさが、スポーツの持つダイナミズムや熱量を生々しく伝え、ボート競技そのものの魅力を存分に引き出している。
この作品がCGで描き出したボート競技は、まさに未体験の領域であり、観る者の心を強く揺さぶる。映画を観終わった後には、その余韻と感動が長く心に残るだろう。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■「そこにいる」感を追求したキャラクターデザインの妙
キャラクターデザインを手がけた西田亜沙子氏は、監督から「普通の女の子たちを描いてほしい」というオーダーを受け、実在感を大切にしたデザインにこだわった。制服や髪型は、シンプルで自然なラインが意識され、日常の中でふと目にするような親しみやすい雰囲気を持っている。凝りすぎず、あえて抑制の効いたデザインにすることで、彼女たちが本当にその街に暮らしているようなリアルな存在感が感じられるのだ。
このデザインの妙には思わず感心させられる。画面に映るキャラクターたちがアニメーションという枠を超え、現実のどこかに本当に存在しているような感覚を覚えるからだ。制服のシワの入り方や髪の動きに至るまで、どこかで見たことがあるような自然さがあり、観ている間は完全に作品世界に没入してしまう。特に、キャラクターの日常芝居が丁寧に描かれており、何気ない仕草や動作にまでリアリティが宿っているのが印象的だ。その細やかな表現は、まるで実写を見ているかのような錯覚を覚えるほどである。
さらに、各キャラクターのシルエットにも細心の注意が払われており、影だけでも誰かわかるような工夫が随所に施されている。主人公・村上悦子の落ち着いた雰囲気、佐伯姫の優しさ、高橋梨衣奈の溌剌としたエネルギーなど、それぞれの性格がシルエットからも感じ取れるように作られている。このような細部への配慮が、キャラクターの個性を自然に際立たせ、観客にとって親しみやすく、同時に心に残る存在となっている。
この「実在感」を意識したデザインは、物語の舞台である愛媛・松山の風景とも見事に調和している。キャラクターたちがその街で生活し、日々を送っている姿が想像できるほどの説得力がある。加えて、実写的な表現を採り入れた動きや芝居の積み重ねが、この実在感をより一層高めている。結果として、作品全体に深いリアリティが宿り、観客の心に静かで力強い余韻を残している。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■シネマスコープで体感する青春の大迫力!
『がんばっていきまっしょい』では、視界が大きく広がる「シネマスコープ」というワイドスクリーン形式を採用しており、このフォーマットが観客の没入感を一層高めている。シネマスコープは、キャラクターたちの繊細な心情や物語のスケール感を視覚的に引き立て、彼女たちの青春の瞬間をよりダイナミックに表現している。
広大な松山の自然やボート競技の躍動感が、画面いっぱいに広がることで圧倒的なスケール感が生まれ、まるでその場に立っているかのような感覚を観客に与えている。特に水面が太陽の光を反射するシーンでは、目の前に広がる景色が実写さながらのリアリティを持ち、彼女たちの青春の輝きが鮮やかに伝わってくる。
類似の手法として、新海誠監督の『すずめの戸締まり』もシネマスコープを採用し、風景の広がりとキャラクターの心の動きを緻密にリンクさせている。『すずめの戸締まり』では、日本各地の壮大な自然や都市風景が画面いっぱいに広がることで、視覚的な奥行きと現実感をもたらし、観客に「その場にいる」感覚を与えている。本作『がんばっていきまっしょい』でも同様に、広がる水面や松山の豊かな風景が大きく映し出され、観る者の心を掴んで離さない。
特にボートを漕ぐシーンは圧巻だ。シネマスコープならではの広がりが、彼女たちの努力やチームワークの美しさを一層引き立てている。水面が光を反射する中、ボートが滑らかに進んでいく様子は、青春の輝きそのものであり、観客は自然と「自分も一緒にボートを漕いでいる」という感覚に引き込まれる。この臨場感と躍動感は、シネマスコープというフォーマットが持つ可能性を存分に活かしたものであり、映画全体に深い余韻をもたらしている。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
■映像美と共鳴する青春の瞬間
『がんばっていきまっしょい』は、映像美と緻密なCG技術、そしてキャラクターの細やかな描写が調和し、青春のひとときを鮮やかに映し出す作品だ。愛媛の自然に溶け込むようなリアルな舞台設定と、実写を思わせる繊細な演出が、観る者を物語の中へと静かに誘い込む。
スクリーンに広がる愛媛の風景には、ただ美しいだけでなく、心にそっと響く温かさがある。広がる空や水面の輝きが、キャラクターたちの心情とともに生き生きと描かれ、その瞬間が観る者に深く語りかけてくる。青春という、かけがえのない時間の儚さや輝きを、まるで自分の中に再び取り戻したかのように感じさせてくれる。
映画館の大きなスクリーンで味わうからこそ、この作品の魅力がより深く心に届く。美しい映像とともに流れる彼女たちの物語に触れたとき、静かに心が満たされ、何か大切なものを思い出させてくれる。観終わった後には、きっと優しい余韻が胸の奥に広がるはずだ。この特別なひとときを、ぜひ劇場で体感してほしい。
劇場アニメ『がんばっていきまっしょい』場面写真(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』は大ヒット上映中。
(C)がんばっていきまっしょい製作委員会
文:吉野庫之介/クランクイン!編集部
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