『エルピス』眞栄田郷敦に注目集まる! 高い演技力で“拓朗の変化”を見事に表現
■拓朗の“覚醒”を丁寧に表現する眞栄田
自らの過去と向き合ったことで、拓朗はまるで別人になった。“チェリー”こと大山さくら(三浦透子)に、冤罪(えんざい)事件の真相究明を投げられた時は、“弁護士の息子”といった感じの爽やかなスタイルだった拓朗。恵那に救いを求める時の“強い目力”が話題になっていたが、現在の目力とは異なる。序盤は、赤ちゃんが生まれて初めて触れるものをジッと見つめているような…、あるいは、どうにかして親にすがっているような、そんなあどけなく、頼りない瞳だった。
そして、拓朗は1つ目の変化をする。希望だと思ってすがっていた恵那が、母と同じタイプの人間なのかもしれない…と察して、絶望した第4話。そこからは、無精ひげを生やし、髪もボサボサになった姿を見せるようになる。
『エルピス―希望、あるいは災い―』第8話より (C)カンテレ
母が嫌いそうなヒゲを伸ばしたのも、彼なりの覚悟だったのだろう。自分の正義だけは信じたい。自分の足で、希望をつかみとりたい。“覚醒”する前とした後の変化を、眞栄田は分かりやすく、でも決して大袈裟ではなく丁寧に表現していた。だからこそ、人ってこんなに変わってしまうんだ…と恐ろしくなるのと同時に、リアルさを感じ取ることができたのだと思う。
しかし、大洋テレビをクビになったあとは、また第1話の坊っちゃんスタイルに逆戻り。「(実家に)置いている代わりに、格好だけはちゃんとして」と母に言われたことで、すべてが整えられてしまった。でも、序盤の瞳とはまた違う。拓朗はもう、他人にすがって生きてきた若造ではない。世の中の汚い部分を見た上で、すべての責任を自分とると決めた大人の男へと変化した。ビジュアル面ではほぼ同じであるにもかかわらず、瞳やただずまい、話し方でこんなにも違いを見せつけられる眞栄田の表現力には脱帽である。
さて、『エルピス』はどのような結末を迎えるのだろうか。これまで、たくさんもがいて成長してきた拓朗が、希望を見出せるラストになることを、願ってやまない。