『ジョーカー』『IT/イット』、秋はピエロ映画が見逃せない!

特集・レポート
2019年10月11日 08:00
『ジョーカー』『IT/イット』、秋はピエロ映画が見逃せない!
『ジョーカー』&『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』  2019 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved.TM&(C)DC Comics/(C)2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.ALL RIGHTS RESERVED.

 この秋、アメリカから2大ピエロが、日本に上陸します。映画『ジョーカー』のジョーカーと『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』のペニーワイズです。どちらもピエロの装いで、ワーナー・ブラザース出身、さらに孤独であるなど、共通点がたくさんあります。『ジョーカー』も『IT/イット』も、この秋見るなら間違い無しの傑作。今回は、この2作品を紐解いていきます。


■現代社会に警鐘を鳴らす『ジョーカー』

 現代社会って、なんとなく“生きづらさ”を感じている人が多いですよね。インターネットで炎上してしまえば、不特定多数の人から誹謗中傷が届き、さらに半永久的に残ってしまうため、1つ1つの言動に、細心の注意を払わなければいけません。

 また、弱者を守ったり、マイノリティーの権利を尊重したりと、意識改革が進んだ面もありますが、正しさが重視される中で、歪んだ正義感に振り回される機会も増えました。しかも、“他人の人生評論家”と言いましょうか、ちょっと首を突っ込みすぎる人も、多数見受けられるように…。

 さらに、皆が正しくいようと心がけ、たくさん気を遣ったり、神経を張り巡らし、窮屈さを感じながら頑張っているのに、なぜか経済や生活環境は、あまり向上しません。努力と結果の不釣合いは、日本だけでなく、世界でも起きていて、今や、地球全体がすっぽりと、漠然とした不安や不満が覆われている状態です。

 もうそうなってくると、それぞれ自分を保つのに精一杯で、本来ならば他者へ贈るはずだった愛情や思いやりを、自分に注いであげないと、「やってらんないよ」な状況になってきます。そんな少し窮屈な時代の中、10月4日(金)に、映画『ジョーカー』が、日米同時公開されました。日本国内では、公開初日から3日間で、49万8071人を動員し、興行収入7億5567万円を叩き出すという大ヒットを記録しています。

 本作は、DCコミック「バットマン」の悪役ジョーカーの誕生を描いた物語。これまでに、シザー・ロメロやジャック・ニコルソン、そしてヒース・レジャーなど、様々な俳優がジョーカーを演じてきましたが、ホアキン・フェニックスが演じたジョーカーは、唯一無二の存在として描かれています。

アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス) 2019 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved.TM&(C)DC Comics
 本作で映るほとんどのシーンのジョーカーは、ぎりぎり人間の心を保っているアーサー・フレック時代。アーサーは、貧困や失業、精神疾患、家庭問題など、犯罪に手を染めず、真っ当に生きた人間でさえも、衝突しうる問題を抱えた人物です。凡人には思いつかない狂気を提示してきた従来のジョーカーと違い、今回のジョーカーは、あまりにも一般人との共通点が多く、それゆえ彼の堕ちていく姿に、大きな共感を得てしまう危険な魅力を持っています。

 『アベンジャーズ/エンドゲーム』などでサノスを演じたジョシュ・ブローリンは、自身のInstagramで、「『ジョーカー』の良さが分かる人は、過去にトラウマを抱えたり、本当の思いやりを心のどこかで理解している人だと思う」と綴っていましたが、まさにその通りで、この映画はアーサーへの共感を通して、社会の問題をあぶり出します。決して、貧困層や社会のはみ出し者の光として、悪事を称賛しているわけではありません。

ジョーカー(ホアキン・フェニックス) 2019 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved.TM&(C)DC Comics
 生きづらい社会の中で、他者への思いやりが薄れてきていると先程書きましたが、人が他人への共感や思いやり、愛情をなくした世界が、映画の中のゴッサムシティです。また、『ジョーカー』が生み出す共感は、倫理観の崩壊のためではなく、社会に蔓延する問題を、どう対処するかを考えるきっかけのためにあります。

 「誰もがジョーカーになりうる」で思考を留まらせるのではなく、「誰もがジョーカーを誕生させる可能性がある」というところまで展開させていくのが、本作の巧妙さです。生きづらい世の中でも決して忘れていけないことを問いかける『ジョーカー』は、2019年に生きる今のわたしたちに、必要な作品だといえるでしょう。

次ページ:『ジョーカー』『IT/イット』に共通点?

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