『ジョーカー』『IT/イット』、秋はピエロ映画が見逃せない!

特集・レポート
2019年10月11日 08:00

■ペニーワイズ、パワーアップの『IT/イット THE END』

 実は、『ジョーカー』と『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』には、大きな共通点があります。それは、両方のピエロが大きな孤独を抱えていることと、大人と子供の極端な描写があるという点です。

大人に成長した“ルーザーズ・クラブ” (C)2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
 『IT/イット THE END』は、2017年に公開された『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編。前作では、“ルーザーズ・クラブ”の仲間たちが、ペニーワイズと戦い、生き延びる様子が描かれ、今回は、大人に成長した“ルーザーズ・クラブ”が、ペニーワイズの息の根を完全に止めるべく、再び“それ”に立ち向かうことになります。

「帰ってきて!」 (C)2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.ALL RIGHTS RESERVED.
 今回の、ペニーワイズは前回より非常にやっかいに成長しました。子供の恐怖心を喰ってきたペニーワイズは、前作で、恐怖に打ち勝つ強い心に、初めて出会います。そのせいで、ペニーワイズは、“ルーザーズ・クラブ”に強い執着心を持つようになり、今回は「早く帰ってきてよ!」と、まるで飼い主の帰りを待つ従順な犬のようになっています。さらに、子供を喰らう手口も、前作からパワーアップし、もっと卑劣なものに進化しました。

 さて、先程述べた共通点ですが、『ジョーカー』で子供は、アーサーに唯一差別的な目を向けない純な存在として登場します。大人はアーサーを邪険に扱いますが、子供たちはアーサーのパフォーマンスを見つめ、素直に楽しむのです。

 一方、『IT/イット THE END』では、大人になり都会に出て成功し、すっかり負け犬ではなくなった“ルーザーズ・クラブ”が、子供時代にペニーワイズを倒した強い心を、すっかり失っているという悲しい事実が明かされます。

 共感する力を喪失した大人たちがモンスターを生み出すきっかけとなってしまう『ジョーカー』と、勇気を忘れた大人たちが、一生懸命取り戻そうと奮闘する『IT/イット THE END』。子供の頃は持っていたはずなのに、成長するに連れ失ってしまった大切な何かを、偶然にもピエロを通して、この2作品は問いかけます。もちろんアプローチの仕方も、最後に残るメッセージも異なりますが、この秋は2体のおぞましいピエロは、怖いだけではなく、心にしみる熱い想いを届けてくれる、意外な魅力を持っていました。

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