『凶乱令嬢ニア・リストン』井上ほの花、“最強令嬢”を演じる葛藤「本当に先輩方に勝てているのか」
神殺しの大英雄が、病弱な貴族令嬢へと転生――。南野海風の人気ライトノベルを原作とするテレビアニメ『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』。可憐な少女の姿に歴戦の武人の魂を宿す主人公・ニアを演じるのは、声優の井上ほの花。「この子を私に演じられるのかな」と不安を抱いた彼女に、ニアの“圧”や戦いへの高揚感を表現する難しさ、共演者に支えられた収録、そして声優として大切にする生き方までを聞いた。
【写真】井上ほの花、柔らかな笑顔に癒やされる撮り下ろし(全20枚)
■「この子を私に演じられるのかな」かわいらしさと武人のすごみの間で
――最初に原作や台本を読んだ際、主人公・ニアにどのような印象を抱きましたか?
井上:「すごいギャップのある子だな」と思いました。見た目はとてもかわいらしいのに、中身は武人。「この子を私に演じられるのかな」と、最初は不安もありました。単純な力強さなら、声を「バーン」と出すことで表現できるかもしれません。でも、ニアが持つ独特の圧や、戦いを前にして内側からふつふつと湧き上がる高揚感、「戦うのが楽しい」という気持ちを、どう声に乗せればいいのだろうと悩みました。
オーディションのときから、「サイコパスにはしないでほしい」とディレクションをいただいていたんです。狂気じみた雰囲気や不敵さはありつつも、決してサイコパスにはしない。そのさじ加減が本当に難しくて。特に収録の序盤は自分でも正解が分からなくなり、「これでニアになれているのかな」と迷いながら演じていました。
テレビアニメ『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』キービジュアル(C)南野海風・ホビージャパン/凶乱令嬢ニア・リストン製作委員会
――幼い令嬢と歴戦の武人。ニアが持つ二つの顔は、どのように演じ分けたのでしょうか?
井上:音響監督の菊田浩巳さんからは、「ニアが今どこにいるのか、場所を意識してほしい」と言われていました。ヒルデやレリアと学院で過ごしているときのニアは、とても子どもらしいんです。そういう場面では、武人としての顔はあまり表に出しません。二つの要素を常に同じように混ぜるのではなく、ニアがいる場所や向き合う相手によって、どちらの顔を前に出すのかを考えるようになりました。
一方、弟子たちに何かを教える場面では、自分の中に一本の芯が通っていなければ、教える立場としての説得力が生まれません。そこでは内側にぐっと強いものを持ちながら、歴戦の武人としてのニアを演じるようにしました。
――ニアは作中で圧倒的な強さを誇ります。その強さを、経験豊かな先輩方との芝居の中で成立させる難しさもあったのではないでしょうか?
井上:やはり実際にお芝居でぶつかると、その迫力にどうしても自分が負けてしまっているように感じることがあって。物語の上では、ニアが勝つと分かっています。でも、声の芝居として、私がニアとして本当に先輩方に勝てているのだろうか……。そう不安になることも多かったです。
その迷いをくみ取ってくださったのか、先輩方や音響監督の菊田さんが、「ここにもっと力を入れてみよう」と、体の使い方まで丁寧に教えてくださいました。周りの皆さんに支えていただきながら、ニアの強さや「氣」の表現をつかんでいくことができたので、本当に恵まれた収録現場だったと思います。

――魔法映像(マジックビジョン)ひろめ隊として、ヒルデ役の本泉莉奈さん、レリア役の日高里菜さんとエンディングテーマも歌唱されています。どのような楽曲になっていますか?
井上:ニア、ヒルデ、レリアの3人が過ごす日常を、そのまま一曲にしたような楽曲だと思います。3人でお茶を飲みながら作戦会議をする場面がよくあるのですが、その空気感が曲にも詰まっているんです。
セリフのようなパートもあって、作品の時代感を感じられるところも面白いです。とてもかわいらしい曲なのに、『ニア・リストン』の世界観からは離れていない。学院で過ごすニアの日常を切り取ったような、等身大の彼女を感じられる曲なので、歌っていてすごく楽しかったです。
セリフの部分からも、「ニアはヒルデとレリアに、こんな言葉を口にできるほど心を許しているんだな」と感じられて。私自身、とても好きなエンディングテーマです。
――楽曲から伝わる3人の距離の近さは、実際の収録現場にも通じるものがありましたか?
井上:本泉さんと日高さんは、本当に優しくて。3人でいるときは、お菓子や食べ物の話ばかりしていました(笑)。「あそこのお菓子がおいしい」と話していたら、日高さんが次の週にわざわざ買ってきて、皆さんに差し入れしてくださったこともあります。朝早くから2時間ほど並んで、「みんなに食べてもらいたかったから」と持ってきてくださって。その優しさが本当にすごいなと思いました。
お二人は収録のたびに、「本当にすごいよね」と私のことを褒めてくださったんです。その言葉を聞くと、自分の中で背負っていた荷物が、すっと下りていくような感覚がありました。作品の中だけでなく、収録現場でもお二人に支えていただいていたと思います。
テレビアニメ『凶乱令嬢ニア・リストン 病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録』シチュエーションビジュアル(C)南野海風・ホビージャパン/凶乱令嬢ニア・リストン製作委員会
