カンヌ国際映画祭・審査員特別賞受賞のサスペンススリラー『The seed of the sacred fig』2.14日本公開&場面写真到着
第77回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞したイランのモハマド・ラスロフ監督による映画『The seed of the sacred fig』(英題)の日本公開日が2025年2月14日に決定。併せて、これまでの自作映画でイラン政府を批判したとして複数の有罪判決を受け、本作を世界に問うため同国を脱出したラスロフ監督が、世界での公開にあたり発表した声明文、およびシーン写真9点が解禁された。
【写真】劇中に走り続ける不安と緊張を印象的に映し出した『The seed of the sacred fig』場面写真ギャラリー
本作は、イランで2022年に実際に起き、社会問題となった、ある若い女性の不審死に対する市民による政府への抗議運動を背景に、“家庭内で消えた一丁の銃を巡って家族も知らない家族の顔があぶり出されていくサスペンススリラー。第97回アカデミー賞国際長編映画賞・ドイツ代表に選出されている。
国家公務に従事する一家の主イマンは、20年間にわたる勤勉さと愛国心を買われ、夢にまで見た予審判事に昇進。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。報復の危険が付きまとうため国から家族を守る護身用の銃が支給される。しかしある日、家庭内から銃が消えた―。最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、次第に疑いの目は、妻ナジメ、娘のレズワン(姉)、サナ(妹)の3人に向けられる。誰が? 何のために? 捜索が進むにつれ、互いの疑心暗鬼が家庭を支配する。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能に壮絶に狂い出す―。
解禁されたシーン写真は9点。暗く沈む表情のレズワンを心配そうに見守るナジメとサナを捉えたカットのほか、家族であるにもかかわらず、父イマンから不審な視線を投げかけられる姉妹、本作で重要なキーワードとなる“銃”をイマンから手渡されるナジメ、目隠しをされたまま取り調べを受ける女性の姿など、いずれも劇中に走り続ける不安と緊張を印象的に映し出したシーンだ。
監督は、本作を含め『ぶれない男』『悪は存在せず』など8本の長編映画を製作、カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭などの国際映画祭でも高く評価されているモハマド・ラスロフ。だが、ラスロフの映画は「国家安全保障を危険にさらす」と目を付けられ、いずれも検閲のためイラン国内では上映されておらず、監督自身は何度も投獄された。
本作も2022年の投獄中、ヒジャブの着用をめぐり警察に拘束された女性の死をきっかけに起きた「女性、命、自由」を掲げた抗議運動で、社会的な変化を目の当たりにしたことがきっかけで製作を決意したという。
治安部隊との激化する衝突など実際の映像もとりいれ、テヘランに住む2人の娘と両親というひとつの家族の姿を描き出した本作。しかし、本作が第77回カンヌ国際映画祭コンペティションに選出されるや、イラン政府はラスロフ監督に有罪判決を言い渡し、出国を禁止。本作の上映見送りを求めて圧力をかけたが、ラスロフ監督は数名のスタッフとともにイランを脱出、28日間かけてカンヌへたどり着いた。
その後、声明文を発表。「イスラム共和国の諜報機関が私の映画製作について情報を得る前に、なんとかイランを脱出することができた俳優も多数います。けれども、今もイランには俳優や映画のエージェントがたくさん残っていて、諜報機関から圧力がかかっています」「それでもなお私は、イスラム共和国政府の検閲による介入を受けない、より現実に近いストーリーを目指しました。表現の自由の制限や抑圧は、たとえそれが創造性を刺激するものであったとしても正当化されるべきではありません」「道がなければ、作らなければなりません」―と、今なおイランにいる俳優やスタッフ達の身を案じている。
映画『The seed of the sacred fig』(英題)は、2025年2月14日より公開。
モハマド・ラスロフ監督による声明文全文は以下の通り。