ベルリン銀熊賞受賞『アニカの伝言』11.27公開 動物と話せる少女と家族の旅路をモノクロで綴る
第75回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員賞)を受賞したアルゼンチン映画『El Mensaje』(原題)が、邦題『アニカの伝言』として11月27日より全国順次公開することが決定。あわせて、予告編とポスタービジュアルと場面写真が一挙解禁となった。
【動画】映画『アニカの伝言』予告編 全編モノクロのロードムービー
本作は、魔法のような子どもの成⻑と、家族のきずなを全編モノクロで綴ったロードムービー。
土ぼこりが舞い、とうもろこし畑が広がるアルゼンチンの片田舎。動物と意思疎通ができる“特別な能力”を持つアニカは、祖母ミリアムとそのパートナーのロジェとともに、古びたキャンピングカーで各地を巡っている。
彼らは道ゆく先々で、アニカの能力を活かしたセラピーを行い、その報酬で生計を立てていた。アニカが心を通わせるのは、引きこもりの猫、死期の近い犬、兄弟を探すハリネズミ、そして道中で出会ったカピバラ。アニカの純粋な心が、彼女と関わる動物や人々の孤独をそっと癒していく──。そんなある日、アニカたちは事情があって離れて暮らす母親のもとを訪れる。
アニカの能力は、本物なのか詐欺なのか──。確かなのは、動物たちと向き合うアニカの真摯な姿勢に偽りはないということだ。目的地なき家族の旅路は、声を持たぬ者たちの内なる思いを掬い上げ、かけがえのない存在へ“メッセージ”を紡いでいく。
監督は、カンヌやヴェネツィアなど国際映画祭で注目を集めてきた気鋭の映像作家、イバン・フンド。即興を取り入れながら、実の家族や過去作を共にした仲間など、信頼で結ばれたキャスト・スタッフあわせて10名ほどの少数体制で撮影を行なった。劇中歌には、ペット・ショップ・ボーイズの「Always on my mind」を使用。アンドリュー・ヘイ監督作『異人たち』(2023年)でも印象的に使われたポップ・アンセムが、静謐な世界に鮮やかな瞬間を刻み込む。
2023年12月に自由至上主義を掲げるハビエル・ミレイ政権が発足以降、極度の緊縮財政により経済不安が広がるアルゼンチンの現代社会を背景に制作された本作。映画支援の予算も大幅に削減され、厳しい状況にある国内の映画業界に対して、フンド監督は「今の社会を生き延びるための一つの方法を描きました。現代に<詩的な>映画を作ることは、一種の政治的抵抗になっていると思います」と語る。広大な大地から生み出される詩的なリズムと、まばゆいばかりの映像美──混沌とした時代に生きる人々の心に光を灯す<映像詩>が、忘れられない映像体験となって、観る者の心へと響く。
アニカ(アニカ・ブーツ)が「私の兄弟はどこ? すごく寂しい」とハリネズミの言葉を代弁する場面から始まる予告編では、地平線まで続く自然風景や、登場人物を捉えた親密なクローズアップを重ねた映像美によって、アニカと祖母ミリアム(マラ・ベステリ)、そのパートナーのロジェ(マルセロ・スビオット)の旅路が描かれている。
手狭なキャンピングカーの中で食卓を囲み、川の字になって眠る家族の営み。そして、ロジェがアニカの⻭を抜くシーンや、母親エロイーサ(ベタニア・カッパート)が「大きくなったわね」とアニカを抱き寄せる場面も差し込まれ、アニカが旅を通して成⻑していく姿が映し出される。また、アニカが心を通わす猫や⻲、犬、馬、カピバラなど、さまざまな動物たちも登場。アニカたちのセラピーよって、声なき者たちの内なる想いが“メッセージ”として飼い主へと届けられる。
映像の後半には、アニカが「鳥と話したの」とミリアムに駆け寄る姿も。涙をぐっと堪えるミリアムの意味深な表情が印象に残る。愛らしい動物に癒されるのと同時に、アニカたちが紡ぐ言葉や家族の姿、そして圧倒的な映像美に胸打つ予告編に仕上がった。
あわせて解禁されたポスタービジュアルは、ハリネズミを手のひらに乗せたアニカの口元をクローズアップで捉えた写真に、「心を澄ませて」というコピーが添えられたもの。チャーミングなハリネズミが目を惹くのと同時に、劇中でアニカがどんな言葉を紡ぎ出すのか期待を感じさせる。場面写真では、アニカとカピバラが対峙する神秘的な場面や、アニカ、ミリアム、ロジェそれぞれの横顔、さらに「El Cielo」(天国)と書かれたペットたちの墓地の看板前でポーズを決めるアニカの姿が捉えられている。
映画『アニカの伝言』は、11月27日より全国順次公開。
