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『駆け抜けたら、海。』はLGBTQの枠を超えた作品に 国内外の映画祭に多数ノミネートされた話題作

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P R: MIRRORLIAR FILMS PROJECT

『駆け抜けたら、海。』場面写真
『駆け抜けたら、海。』場面写真(C)2024 MIRRORLIAR FILMS PROJECT

 クリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)』。Season1~4では、俳優や映画監督、漫画家、ミュージシャンなど総勢36名のクリエイターたちが、個性的な短編映画を発表した。そんなプロジェクトも新たなステージを迎え、Season 5~8は新たに一般公募作品も加わるなど、さらにバラエティに富んだ短編映画が集まった。今回クランクイン!では、シーズン5を彩る6作品の監督、キャストたちにリレー形式でインタビューを実施。第1回目は『駆け抜けたら、海。』の十川雅司監督、出演者の松原怜香さん、嶺結さんに、公募作品として選出されたときの気持ちや本作の注目ポイントを語ってもらった。

■純粋に人が人を好きになることに向き合う作品

 女子大生の綾瀬みつき(松原)は、親友の星野うみ(嶺結)に片想いをしている。合コンを抜け出してきた2人は閉店間際の銭湯に駆け込む。いつものようにうみの恋愛話を聞かされるみつき。次第にみつきは自身の想いがあふれてしまう。


■見どころは「主演二人の胸迫るお芝居」

――ミラーライアーフィルムズに応募したきっかけを教えてください。

十川監督:この企画自体は知っていて、先輩なども参加していたので、とてもいい舞台だなという思いはありました。でも選ばれた人たちだけのものだと思っていたので、自分にその場所に行けるのか……という半信半疑な気持ちで応募したのを覚えています。

――実際に採用されて劇場公開されると知ったときはどんなお気持ちでしたか?

十川監督:純粋に嬉しかったです。短編映画って映画祭に出品して終わりというのが多いなか、こうして商業映画として劇場公開される。しかも第一線で活躍されている方々と一緒に作品の一部になるというのは、とても励みになるなと思いました。

――みつき役の松原さん、うみ役の嶺結さんは本作がシーズン5の1作品として劇場公開されると聞いたときはどんなお気持ちでしたか?

松原:最初に聞いたときは信じられなかったです。十川監督も仰っていましたが、なかなか短編映画が劇場で上映されることはないので奇跡だなと(笑)。しかも公開される6作品のなかで最後が『駆け抜けたら、海。』であることも嬉しかったです。

嶺結:私もすごく嬉しかったです。十川監督をはじめ、この作品を作ったメンバーが商業映画でも活動されている方たちなんですよね。そんな方々が才能をスパークさせて作った作品だったので、それが認められて、大きなスクリーンで上映されるということも、とても感慨深かったです。


――『駆け抜けたら、海。』は同性の親友を好きになる葛藤や切なさを多彩な表現方法で描いていますが、どんなきっかけで作品を作ろうと思ったのですか?

十川監督:十川監督:数年前、新宿の飲み屋街を歩いていたら、同性のカップルが手を繋いで車道の真ん中を「世界一幸せ」と言わんばかりに笑いながら走ってたんです。その後ろ姿(バックショット)が素敵だなと思っていつか映画にしたいなと。そのイメージで脚本を書いて知り合いに見せたら「なんで同性愛なの?」と言われて…。具体的な理由はなかったのですが、その言葉に違和感を持ちました。同性愛を描くことに何か理由が必要なのかな…と。そこで映画自体にのめり込んでもらえれば、同性愛という設定すら意味のないものになる。そこに到達できるような映画を作りたいと思ったのが出発点です。

――松原さんと嶺結さんは本作にどこに惹かれて出演したいと思ったのですか?


松原:私は企画の最初の段階からお話を聞いていました。以前私がいとこの女の子に対して特別な感情を抱いたことがあったお話をしていたので、そういう部分も脚本に反映されているのかなと思って興味を持ちました。

嶺結:私はSNSで監督と繋がっていたのですが、作品にコンテンポラリーダンスを取り入れたいというのをストーリーで呟かれていたのを見て、私もずっと踊りをやっていたので直感的に「この作品に出たい!」と思って連絡しました。

――現場での十川監督の演出はいかがでしたか?

嶺結:とても穏やかでした。結構繊細なお話ではあるのですが、とても配慮してくださっていました、キャラクターの気持ちの流れなどもしっかり話をしてくださる監督だなと。

松原:すごくタイトなスケジュールだったので、どの部署も気合が入っている現場でした。その意味でちょっと穏やかな気持ちではなかったのですが、それが映画を作っているんだなと思えて良かったです。でも時間がないなか焦らされることもなく、安心してお芝居に臨める空気感を作ってくださったのはとてもありがたかったです。


――いよいよ作品が公開されますが、今回ミラーライアーフィルムズに参加して、映画というメディアに対して改めてどんな思いが?

十川監督:これまで自分の作りたいものを……という感覚で、どうやって届けようという意識はあまりなかったのですが、今回上映までの流れを経験してすごく刺激を受けました。劇場で映画を流してもらえるためにはどうしたらいいのか。それは脚本や企画も含めて、いろいろなことを考えるきっかけになりました。

松原:劇場公開作品というのは、こうやって宣伝をして多くの人に知っていただけるんだなというのを実感しました。私も劇場公開されるような作品に出演できるようにもっと頑張らなければという思いも強くなりましたし、そのための芝居の仕方とかもいろいろ考えるきっかけになりました。

嶺結:お芝居の仕方っていろいろあるんだなと改めて感じました。ニーズに合わせてもっと器用にお芝居ができるようになったらいいなと思いました。今回ご一緒した作品には、第一線で活躍されている俳優さんたちもたくさん出演されていて、とても面白かったです。そういう視点でお芝居の勉強をしていきたいです。


――最後に本作の見どころをお願いします。

松原:迷ってしまうぐらい好きなシーンがたくさんある映画です。そのなかでも、私は人に何かを打ち明けたとき、うまくいったときのイメージと、悪くいくリスクなど、いろいろ考えると思うのですが、そんな人間らしい葛藤が技術部さんたちの力で、とても魅力的に映し出されていると思うので、人の気持ちの動きなどを観てほしいです。

嶺結:エンドロールまですべてが見どころです。自主映画なのですが、カメラさんはもちろん、メイクさんも衣装さんも皆さんプロの方にやっていただいたんです。細部に渡るこだわりを是非ご覧になってほしいです。

十川監督:見どころは全てのシーンです。ネタバレになるため多くは言えませんが、二人のお芝居が生々しくて素晴らしい。鬱屈とした現代を生きるつかみどころのない若者たちの不安がしっかり出ている、胸迫るお芝居と映像的仕掛けを盛り込んだ演出が見どころです。

『MIRRORLIAR FILMS Season5』は、5月31日(金)より2週間限定公開。

※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正します。

『MIRRORLIAR FILMS Season5』予告映像

取材・文:磯部正和、クランクイン!編集部

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