「セリフの緊張感がすごい…」 予想不能な復讐劇『アマチュア』、字幕&吹替で“二度”見たくなる理由とは
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「スパイ映画」と聞くと、派手なアクションや銃撃戦、国家規模の陰謀をイメージする人も多いだろう。しかし、『アマチュア』は、その常識を“静かに裏切る”一作だ。主人公は武器の扱いも肉体戦も不得意な、控えめでデスクワーク専門のCIA職員。そんな彼が、ある悲劇をきっかけに復讐を誓い、行動を起こす──ただし、暴力ではなく、頭脳と覚悟を武器にして。そして復讐が進む中で明るみになっていくCIAの陰謀。表情や一言一言のセリフに緊張感が走るタイプのスパイ映画では「言葉」がこの作品の核になっている。今回はバイリンガルライターの視点から、英語版(≒字幕)と吹替版、それぞれの魅力を語ってみたい。
【動画】仲間0・戦闘経験0のアマチュアスパイが復讐に挑む! 『アマチュア』本予告■ラミ・マレックが殺し能力ゼロの“アマチュア”を熱演!
主演は、『ボヘミアン・ラプソディ』で伝説のロックスター、フレディ・マーキュリーを熱演しアカデミー賞主演男優賞を獲得、その後も『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』『オッペンハイマー』など話題作に数多く出演し続ける実力者ラミ・マレック。
ラミ演じるチャーリー・ヘラーはCIAの分析官。普段はCIAの地下に作られた日の光も入らない部屋でデータ解析に勤しみ、空いた時間には妻がプレゼントしてくれたプロペラ機を修繕し、いつか自分で飛ばすのをささやかな楽しみにしている、平凡な男だ。
だが、そんな彼に突如として不幸が訪れる。妻が出張先のロンドンでテロに巻き込まれ殺されてしまったのだ。チャーリーは建物に仕掛けられた無数のカメラ映像と衛星がとらえたデータを確認し、テロリストの手がかりを得た。その過程で妻が殺される瞬間も目撃したチャーリーは復讐を固く決意する。しかし、殺しの基礎すら持ち合わせていない彼は上司に「たとえ老女が相手でも君に勝ち目はない」と笑い飛ばされてしまう。それでも諦められないチャーリーは、上司を脅迫するようにしてなんとか訓練プログラムに参加させてもらう。だが、教官のヘンダーソン(ローレンス・フィッシュバーン)からも、殺しのセンスが皆無だと見放されてしまった。
それでもなんとか復讐を成し遂げたいチャーリーは訓練を抜け出し、単身ロンドンへ──。その頃、チャーリーの暴走に気づいたCIAは、密かにうごめく陰謀が明るみになることを阻止すべくヘンダーソンを刺客としてチャーリーの元に送り込む。“殺しのプロVS殺せない復讐者”の行く末は誰も想像できないものだった。
■字幕版で味わう、“生の言葉”のリアル
字幕版の最大の魅力は、なんといっても登場人物たちの言葉が“そのまま”伝わる点と、俳優の演技を包括的に楽しめる点だ。特に『アマチュア』のように、セリフの抑揚、間合い、言葉選びの妙が緊張感を生むサスペンス作品では、原語での鑑賞は作品の深みに直結する。
中でも、CIA職員同士のやりとりは原語ゆえの面白さを感じられた。というのも、内部では一部上層部職員による策謀が行われており、勘付いた人との間で繰り広げられる腹の探り合いが発生する。このシーンにおける言葉選びとセリフ回しは、表層的な親密さの中に脅しとけん制が見え隠れしている。字幕だけを読んでいると平和に感じられても、俳優たちの声色から静かな殺意さえ伝わってくるのだ。
また、俳優らの生の声を聞けるのも良い。特に主役であるラミ・マレックは、その外見から想像するよりも低音ボイスでかなり落ち着いた印象を有する意外性が魅力。親しみやすい外見と振る舞いから、作中では彼を「殺しなんてできやしない」「単なるコンピューターオタク」とみくびる者が多いが、彼は強い復讐心と自分の強みへの高い理解を持ち合わせており、静かな狂気を解放していく。また、彼独特の落ち着いた声が、明るく振る舞っている中にも暗部を感じさせ、一筋縄ではない人間性を作り出しているだろう。
■吹替版で味わう、“わかりやすさ”と“没入感”
一方で、吹替版はわかりやすさに重きを置いているように感じられた。日本語ならではのリズムのよさで、台詞を「理解する」ものから「受け取ることに集中」できるものにし、ストレスなく物語に没入できるようになっている。本作のような心理戦を描くサスペンスでは、ちょっとした目線や口元の動きに注目すると理解が深まる。
特にラミ・マレックの豊かな表情を堪能するなら、吹き替え版は最適だろう。中でも冒頭の妻との些細なやりとりの中で見せる純粋な表情は、短時間にも関わらず、いかにチャーリーが妻を愛しているのかを視聴者に理解させるだけの力を持っている。
ラミ・マレックの声優を務めたのは、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』や『オッペンハイマー』でもラミを担当した中井和哉。その声は、他者からみくびられがちな控えめなチャーリーに純粋さをもたらした。復讐に燃えながらも、その原動力があくまで妻への深い愛情と喪失感であるということに説得力を与えている。
また、吹替翻訳だと、原語の皮肉や曖昧な言い回しを日本語らしい自然なトーンに落とし込む工夫が感じられた。一回鑑賞しただけでも物語をしっかり理解できるし、字幕版の鑑賞時に聞いた原語でのセリフもよりわかりやすいアレンジがあった。
■何度も見たくなる『アマチュア』の奥行き
筆者は英語版と吹替版、両方を観たが、驚くほど印象が異なった。一度目は字幕版だったが、静かでヒリヒリとした緊迫感が流れ、映画好きを満足させる考察幅を残したハードスパイ映画に感じられた。吹替版は、一度目で理解しきれなかった部分を答え合わせできたように思う。単体でも十分楽しめるが、両方見てもフレッシュな驚きが得られるはずだ。
もちろん、どっちの言語を選んでも楽しめるのは、地に足のついた脚本と俳優陣の素晴らしい演技にも起因する。殺しのセンスがない復讐者というのは、アクション満載のスパイ映画に慣れ親しんだ映画ファンにとって新鮮味が感じられるだろう。しかも、訓練して殺しのスキルを習得するのではなく、自分の強みを最大限活用して成功体験を重ねて自信をつけていくのは教訓的でもある。目的をかなえるための手段は必ずしも一つではない、というメッセージは、鑑賞者をハッとさせるかもしれない。
“殺せない男”の選んだ、静かで直接手を下さない戦い方。『アマチュア』は、観る人の価値観を問い直すスパイ映画だ。字幕でも、吹替でも――この映画の本質は、必ずあなたに届くだろう。
映画 『アマチュア』は4月11日(金)全国劇場公開。
(C)2025 20th Century Studios.All Rights Reserved.
文:中川真知子
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