『ムーミン』が世界で愛される理由とは? ハンナ・へミラ監督に聞いてみた

原作は44言語に翻訳され、1000万部以上を売り上げた『ムーミン』。生みの親トーベ・ヤンソンの生誕100周年を記念し、母国フィンランドとフランスで初の劇場用長編アニメ『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』(2月13日公開)が製作された。本作はスイス、イスラエル、中東、香港での公開も決定している。ムーミンは、なぜこれほどまでに世界で愛されるのだろう。本作で監督兼プロデューサーを務めるハンナ・ヘミラに聞いてみた。
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「まさか私がムーミンを手がけるとは思わなかった」。ハンナ監督から思いもよらない言葉を耳にした。フィンランド出身のハンナ監督は、これまで数多くのドキュメンタリーやアニメ映画などのプロデューサーを務めてきた。「ムーミンはフィンランドにとってもあまりにも大きすぎる存在。私が手を出せるものではないと思っていた」。ハンナ監督は当時の心境をそのように明かす。
しかし、そのプロジェクトは思いがけない形でハンナ監督の眼前に現れることになった。トーベの姪で、ムーミンの著作権管理会社の会長も務めるソフィア・ヤンソンとは一緒に水泳に行くほどの友人。そのソフィアが「ムーミンの小説を元にしたものはあるが、コミック版からの映像化がないのは残念だ」とハンナ監督にこぼしたのだ。その話をフランスのグザヴィエ監督に持ち掛けたことからプロジェクトが動き出した。
「この作品はトーべさんが描いたムーミンのオマージュとして作った」とハンナ監督は振り返る。本作は全編手書きということでも話題になっており、作画は原作に近いものになっている。「トーべさんの絵は線がとてもきれいなんです。手書きでないと、そのアート性を表現することはできない。彼女の持っている才能や世界観を映画を通して伝えたいと思った」。
本作への思いを熱く語るハンナ監督に、ムーミンが世界各国で愛されている理由を聞いてみた。「その理由はたくさん考えられるのだが、言えることは一つ。時代に縛られていないということ。ムーミンは時代を特定するような機械や機器が登場することが少ない。そして、うわべだけではなく何層にも深い意味が読み取れる。そういったところが年齢問わずにどこか共鳴するところがあったのだろう」。
また、フィンランドの地球の裏側にある日本で愛されている理由については、「フィンランド人と日本人はとても価値観が似ていると思う。両国とも自然を大切にし、内省的に生きている。他人事ではなくて、自分たちに近いものと受け取ってくれたのではないだろうか」。ハンナ監督はムーミンのような柔和な表情でそう答えた。(取材・文・写真:梶原誠司)
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