話題の深夜ドラマ『雪女と蟹を食う』の魅力とは? 重岡大毅が“自殺を決意した男”役で新境地
人生に絶望し、自殺を決意した男と謎多き人妻の奇妙な二人旅を描いたドラマ『雪女と蟹を食う』(テレビ東京系/毎週金曜24時12分)が現在放送中だ。初回放送日にTwitterトレンド1位を獲得するなど大きな話題を集めている本作は、役者として新境地を開拓する重岡大毅の演技力など、さまざまな魅力が詰まった作品となっている。本稿では、そんな作品の魅力をひも解いていきたいと思う。(文=菜本かな)
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■内田英治監督による演出が刺さった第1話
初回放送日にツイッタートレンド1位を獲得するなど大きな話題になった本作の数々の名シーンのなかでも、筆者がとくに印象に残っているのは、第1話の冒頭シーン。さすがは、『全裸監督』シーズン1(Netflix)や、映画『ミッドナイトスワン』などを手掛けた内田英治監督による演出だ。胸にグッと突き刺さってくるものがあった。
自殺を決意した北が、吊るしたロープを見て、笑ってみたり、泣いてみたり。ロープのなかに首を入れたかと思えば、やっぱりやめてみたり。“自殺をしようとする人”のシーンだけで、冒頭の3分弱を使う思いきりのよさ。監督の信頼に応える重岡の表現力もすごい。
ああ、この人はいま、自分の人生を走馬灯のように振り返っているのかもしれない。つらいだけの人生だと思っていたけど、楽しいこともあったではないか。いや、やっぱりこのまま生きていてもつらいだけだ…。“死”の間近にいる人間のリアルを、重岡は全身全霊をかけて体現していた。だからこそ、北が考えていることが鮮明に伝わってくるのだ。
■“死”をゴールとする奇妙な関係性も魅力
また、本作の魅力は北とセレブ妻・雪枝彩女(入山法子)の奇妙な関係性にもある。「北海道で、カニを食べてから死のう」と決めた北は、お金のために強盗を決意。その家に住んでいるのが、彩女…というわけだ。普通ならば、北は警察に突き出されていてもおかしくない。というより、大抵の人はそうするだろう。
だが、彩女は「私も北海道に行きたい」と言い出し、二人はなぜか一緒に旅に出ることになる。この旅は、“死”をゴールとしているはずなのに、食欲や性欲など“生”を感じさせるシーンが多いのも面白い。二人の逃避行は、“死”ではなく、他者に奪われた“希望”、つまりは“生”を取り戻すためのものになっていくように思えてくる。
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