話題の深夜ドラマ『雪女と蟹を食う』の魅力とは? 重岡大毅が“自殺を決意した男”役で新境地
■本作が重岡にとってターニングポイントに?
北を演じる重岡は、陽のイメージが強い俳優だ。実際にこれまで演じてきた役柄も、“底抜けに明るいいい奴”が多い。これまで、『これは経費で落ちません!』(NHK総合)や、映画『溺れるナイフ』など、ピュアな恋模様を描いた作品で魅力を発揮してきた重岡。『知らなくていいコト』(日本テレビ系)では闇落ちした姿を見せていたが、やはり“陽”の印象が強い。
とくに、『これは経費で落ちません!』で演じた山田太陽は、役者・重岡大毅としての強みを見つけた作品だったように思う。筆者の周りでも、同作を通して重岡に“沼落ち”している人が続出していた。
恋愛に奥手な森若沙名子(多部未華子)のことを、愛おしそうに見つめる表情。かわいい年下男子でありながら、男らしい頼りがいも感じさせるような…。重岡だからこそできる絶妙なサジ加減で、山田太陽というキャラクターを、より魅力的に昇華させていたのを覚えている。
そのため、『雪女と蟹を食う』での演技を見た時には驚かされた。重岡が演じている北は、痴漢の冤罪(えんざい)をかけられて失業した元サラリーマン。どうしようもないやるせなさを感じている役柄だ。
いつもはバイタリティにあふれている重岡だが、北にふんしている時は目に光がない。普段の姿とギャップがあるからこそ、“絶望感”が切に伝わってくる演技を見せている。
また、新たな魅力を開花させた本作で重岡は、快楽を求めるだけの自暴自棄なキスなど、大人な表情も披露。「ピュア」「少年」といった印象がある重岡に、「色気」「妖艶」など新たなワードを追加した『雪女と蟹を食う』は、重岡にとってのターニングポイントになるのではないだろうか。
いよいよ、北海道に足を踏み入れることになりそうな第4話。この奇妙な旅を通して、北が自分だけの“生”を手に入れられることを願っている。