「ダイソー」なぜ100円で本格派トレカ販売? 『イジンデン』開発担当者に聞いた発売までの道のり
「DAISO(ダイソー)」は、2023年7月から、構築済みデッキを110円で購入できるトレーディングカードゲーム(以下TCG)『イジンデン』を販売中だ。本作は、偉人をテーマにしたカードゲームで、歴史になぞらえたカード性能、スタイリッシュなデザイン、平均15分とほかTCGと比べて短いプレイ時間、そして「ダイソー」ならではの安価な価格設定で、子どもから大人まで幅広いユーザーを獲得。全国各地で公認大会が開かれるなど、着実に人気を集めている。そんな『イジンデン』はどのようにして開発されたのだろうか? 今回クランクイン!トレンドは、『イジンデン』発売までの道のりを、「大創産業」の子会社でトレーディングカードゲームの開発を担当する大創出版に聞いた。
【写真】左下には解説も記載! 担当者イチオシのカードは“尾張を統一”した戦国武将
■『イジンデン』とは?
『イジンデン』は、歴史上に実在した“偉人”をテーマに、遊びながら歴史を学べるオリジナルトレーディングカードゲーム。アタッカーとなる「イジン」に加えて、さまざまな効果を持つ「マホウ」、場に置くことで持続的な効果をもたらす「ハイケイ」、カードを使うコストとなる「マリョク」を組み合わせて戦う。
販売開始時は、上杉謙信率いる「伝説の武将デッキ」、レオナルドダヴィンチによる「知と美の革命デッキ」、出雲阿国をはじめとする「日本の大天才デッキ」から成る3種類の「スターターセット」と、デッキを強化して遊べる拡張パック「ブースターパック」を販売。現在は第二弾として、新しいブースターパックと、諸葛亮がパッケージになった「三国の英傑デッキ」も追加された。いずれも110円で購入することができる上、「ブースターパック」は、5枚の内必ず1枚のレアカードが封入される仕様というのだから驚きだ。
そんな『イジンデン』はどのように開発されたのか? 「大創出版」の代表取締役の西田大氏に話を聞いたところ、発売までの苦労と喜びを語ってくれた。
■遊びながら「学べる」ことが大事
――110円で構築済みのデッキを販売することで、購入してすぐにバトルが楽しめる『イジンデン』。その価格の安さはもちろん、ゲームのクオリティーの高さ、イラストの格好良さに大変驚きました。まずは開発の経緯について教えてください。
2019年ごろからさまざまなアナログゲームの販売を検討する中で、その一つとしてトレーディングカードゲーム(以下TCG)の構想がありました。簡単に制作できるものではないことは重々承知していましたが、『ダイソー』発のオリジナルTCGを制作したいという思いは、日に日に強くなり、その中でボードゲーム&カードゲームの企画・開発をしている有限会社ワンドローの木皿儀さんより開発可能であるとのお話をいただき、企画がぐっと前に進むことになりました。
その後、(大創出版ではもともと)トランプを製造していたこともあり、110円という価格設定で、55枚までは1箱に入れられるということが分かっていたため、40枚入りの構築済みデッキ、そしてブースターパックを各110円という価格で販売することに決めました。同時に1枚はキラキラしたカードが封入されているという「期待」や「楽しさ」を大切にしたいという担当者の思いを込め、ブースターパックには必ずキラカードが入る設定にしたんです。
スターターセット「日本の大天才」デッキ
――『イジンデン』の面白さの一つに偉人で戦うことが要素としてあるかと思います。なぜ“偉人”をテーマにしたゲームにしようと思ったのでしょうか?
一言でいうと「学び」の要素を入れることが“絶対に必要である”と考えていたからです。ゲームとなると、拒否反応を示す親御さんたちがいるのも事実で、「遊びながら偉人や歴史を学ぶ」という体験はとても重要だと考えました。
私自身、中学生くらいのころに戦国武将の「国盗りゲーム」で歴史に興味をもちました。とはいえ歴史に深くのめり込んだわけではなかったんですが、ゲームを通じて歴史に興味をもった経験から、遊びながら学ぶためには偉人をテーマにすることが良いと判断しました。また、バトル要素を入れても違和感なく、カードの種類も豊富にできる歴史上の人物を題材に、フレーバーテキスト(カードの文章欄に書かれている、ルール・テキストでない文)には教科書のような解説を掲載しています。歴史で起きたことを遊びを通して理解してもらえるとうれしいです。
――子どもが「ほしい!」と感じるデザインの格好良さや、簡単にプレイできるゲーム性の単純化が『イジンデン』の魅力。発売にあたりこだわったポイントを教えてください。
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