東京国際映画祭で出会った“運命の5本” 『ミッドサマー』から隠れた傑作まで

特集・レポート
2019年11月5日 08:00
東京国際映画祭で出会った“運命の5本” 『ミッドサマー』から隠れた傑作まで
『ミッドサマー』  (C)2019 A24 FILMS LLC.All Rights Reserved.

 10月28日(月)から11月5日(火)まで行われている「第32回東京国際映画祭」。今年もアカデミー賞候補のハリウッド映画や、もう二度と見られないかもしれない小さな作品、さらにはNetflix作品まで、幅広く六本木に集結しました。クランクイン!トレンドでは、“運命”を感じた5作品をご紹介します。


■異色!昼間のホラー『ミッドサマー』

「シン・ファンタ」
 昨年『ヘレディタリー/継承』で世界に衝撃を与えたアリ・アスター監督の最新作。本映画祭では、1985年から2005年まで行われていた伝説の「東京国際ファンタスティック映画祭」の復活イベント「シン・ファンタ」で、ジャパンプレミア上映されました。

 ストーリーは、主人公のダニー(フローレンス・ピュー)を含めた5人が、スウェーデンの夏至祭(ミッドサマー)を訪れるというもの。暗闇からヌッと化物がでてくる従来のホラーと違い、『ミッドサマー』 では、白夜の太陽の下、堂々と恐怖が映し出されます。

 夏至祭でのグロテスクな描写が恐ろしいのはもちろん、本作では、アスターが、目を背けることすら忘れてしまう小さなトラウマを繊細に掘り起こすのが上手い監督であることを再確認しました。夏至祭への旅は、当初男4人で行く計画だったのですが、ひょんなことからダニーも同行することに。

 冒頭で繰り広げられる同シーンでは、誰しも経験したことあるような“場違い”や“お荷物感”が、映像の中で表現されています。身に覚えがあるトラウマが、じわっと記憶から引っ張り出され、肺が内側から蝋で固められていくように、徐々に息が詰まっていく感覚を覚えます。この感覚がなんとも不快で堪らない…! 日本公開は来年2月とまだ先ですが、美しいグロテスクに虜になってしまい、何度でも観たい魅力と謎が込められています。

■ダメな親子が生む傑作『人生、区切りの旅』

『人生、区切りの旅』 (C)2019 Berserk Films
 若者に響く魅力的な作品を集めた「ユース」部門で上映された『人生、区切りの旅』。「ユース」は、作年の『ジェリーフィッシュ』など、心にずしりと刺さる良質な作品が揃う部門です。

 『人生、区切りの旅』は、どうしようもなく不仲な父と息子が、病気で亡くなった母親の最後の願いを叶えるべく、一緒に旅をするというストーリー。その願いというのが、“遺灰をアイルランドのとある湖に撒く”というものです。

 これだけ聞けば、ありがちな感動作のように感じられますが、とんでもない。登場人物が全員ことごとくダメなやつなのです。息子のショーン(ローガン・ラーマン)は、窃盗罪で服役経験があり、他人を思いやれない自分勝手な性格。父フランク(ジョン・ホークス)は、過ぎたお人好しが原因で、つけ込まれてばかりの人生を送っていました。ダメな2人で行く旅は、もちろんハプニングだらけ。さらに、フランクは旅の途中で、妻の知らなかった過去を知り、複雑な心情を抱えていきます。

 映画には、少しピリリと痺れる笑いが全体的に散りばめながらも、じんわり涙が滲み出る部分も。そこに素敵な音楽とアイルランドの風景が相まって、非常に美しい物語に仕上がっていました。日本公開は未定。もう見られないかもしれない傑作に、偶然出会うのも本映画祭の醍醐味です。

次ページ:283分の衝撃作からトンデモホラーまで!

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