『恋あた』注目すべきは“四人の視線” 中村倫也×石橋静河のシーンが切なく映るワケ
■語らずにはいられぬラストシーン
徐々に打ち解ける里保&樹木 (C)TBS
望まぬ形で選ばれた樹木。やっと掴んだチャンスの尾を離してしまった里保。どちらも“選ばれなかった苦しみ”を知る二人だからこそ、この結果に不完全燃焼な想いを抱える。それでも里保は、周りに気を使わせないようにと気丈に振る舞った。樹木の素直さに眩しさを覚えながら…。
そんな第3話だったが、最も胸を締め付けたのは、あのラストシーンだろう。発売した「リラックシュ~」を社長の浅羽拓実(中村倫也)に届けようと、樹木は嬉しさいっぱいで会社に戻った。そこで、SEKAI NO OWARIの「silent」が鳴り響く。
抱き合う浅羽&里保 (C)TBS
樹木の軽快な足取りとは裏腹に、しんしんと積もる「silent」の音色と歌声。エレベーターとともに樹木の気持ちも上昇していくが、残念ながら社長室は真っ暗。がっかりしながら帰ろうとした矢先、目に飛び込んだのは、泣く里保を両手で優しく包み込む浅羽の姿だった。
■注目すべきは“視線”の演出
第3話の演出を手掛けたのは、『私の家政夫ナギサさん』や『凪のお暇』、『中学聖日記』、『花のち晴れ~花男 Next Season~』と、数々の名作TBS系ドラマを手掛けてきた坪井敏雄。彼の手腕が、四人のあまりにも切ない四角関係を加速させる。
特に注目すべきは、四人の“視線”だ。樹木と里保の仕事仲間としての視線、新谷誠(仲野太賀)と浅羽の友情の視線、樹木の服装を少し軽蔑したような目で見る浅羽の視線など、シチュエーションに合わせて丁寧に演じ分けられた目を、カメラはすかさずキャッチする。
楽しそうにスイーツ分析する里保&樹木 (C)TBS
例えば、樹木と里保は、スイーツプレートやアイスなどのスイーツを一緒に食べたとき、目を合わせ、アイコンタクトで美味しさを共有する。浅羽の歪んだ考えに呆れ、新谷が「拓兄、友達いる?」と冗談で聞いた時、浅羽はじっと上目遣いで「お前」と言わんばかりに新谷を見つめる。これには、新谷も照れ笑いを見せる。このように視線を送る長さや場所、タイミングで、それぞれの関係性が巧みに表現されるのが本作の魅力の1つではないだろうか。
さらに面白いのが、浅羽の目の使い方。第3話では、浅羽が、樹木と里保のそれぞれとエレベーターで二人きりになるシーンがあった。浅羽は、樹木を前にした時は、じっと見つめながらアドバイスを与え、また、少し目を細めて冗談交じりの皮肉も披露する。一方、里保には、ほとんど目を合わせない。背中を向けたまま話し、時々振り返るも、まるで肩と会話するかのように、すこし下を見る。一度だけ目を見た時があったが、すぐにそらした。