実は『イカゲーム』は新境地 “韓国トップ俳優”イ・ジョンジェってどんな人?

特集・レポート
2021年10月30日 10:00

■文学的な世界が似合う一面も

 2000年というと、『JSA』などの韓国の大作が続々と生まれて注目された頃で、日本でも『イルマーレ』は上映された。こうしたファンタジックなラブストーリーというのも、韓国映画の得意なジャンルのひとつなのだ知ることのできた作品でもあった。もしかしたら、こういう作風が、韓流ブームのころのドラマや、日本でも興行的に成功を収めた『私の頭の中の消しゴム』などにもつながっているのかもしれない。

 物語の中心には、イルマーレと呼ばれる海辺の建物がある。そこに住んでいたウンジュ(チョン・ジヒョン)は、1999年にその家を引っ越す際に、郵便受けに1通の手紙を置いて去っていった。しかし、不思議なことに、その手紙はなぜか2年前の1997年にそこに住んでいたソンヒョン(イ・ジョンジェ)の元に届く。そこから、二人の時空を超えた手紙のやりとりが始まるのだった。

 イ・ジョンジェはこの映画で、アクション映画で見せる強い男性像でも、『イカゲーム』で見せるちょっと情けなくてそこに親しみやすさが見いだせる中年男でもなく、建築を学ぶ学生ながら、卒業まであとわずかというときに休学を申し入れるような、知的でありながら、ここではないどこかを目指しているような雰囲気の人物を演じている。この映画には、あるシーンで村上春樹の小説が移るところがあるが、村上春樹の世界的なものを(あからさまではないにしても)目指していたのだとも思える。

 20年以上前ということで、若かりし頃のイ・ジョンジェが見られるが、どこかイ・ジョンジェが文学的な世界も似合う人であったのだなということが思い出される作品である。

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西森路代(ライター)

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