実は『イカゲーム』は新境地 “韓国トップ俳優”イ・ジョンジェってどんな人?

特集・レポート
2021年10月30日 10:00

■韓国映画ファンにとって重要な作品にも登場

 イ・ジョンジェを語る上で欠かせない作品といえば、2013年の『新しき世界』だろう。この作品は、韓国ノワールというジャンルが確立するきっかけとなる作品でもあったと思う。

 舞台は、とある犯罪組織。その組織に8年前から捜査官として潜入している警察官のイ・ジャソンをイ・ジョンジェが演じている。

イ・ジョンジェ(2013年撮影) (C)Zeta Image
 8年の間、組織で正体を知られないために、非道なことも、なんでもないかのようにこなしてきた彼は、組織内での信頼も得てきたし、特にナンバー2のチョン・チョン(ファン・ジョンミン)との間には、お互いに情や絆も芽生えていた。しかし、組織の会長が交通事故で急死。ジャソンの警察の上司は、これを組織壊滅の好機と考え、新たな作戦を立てるのだが…。

 この映画でのイ・ジョンジェの良さは、なんといっても、警察組織という表向きの善と、犯罪組織という悪の間で苦悶する姿だろう。

 表向きと書いたが、警察組織が目指すものは善でも、そこに警察組織の人間――ここではジャソンの上司――の常軌を逸した執念が加われば、ジャソンを脅かす脅威にもなり替わる。反対に、犯罪組織のやっていることは悪だが、そこで8年を共に過ごしたチョン・チョンとの間に生まれた情をジャソンが切り離そうとしても、そうそう簡単なものではない。

 そんな警察と犯罪組織の狭間で苦悶を重ねに重ねたジャソン=イ・ジョンジェの行きつく先がどうなるのかを見守ることがこの映画の最大の魅力と言ってもいいだろう。

イ・ジョンジェ 『ただ悪より救いたまえ』より 写真提供:AFLO
 この『新しき世界』は、韓国映画ファン、韓国ノワールファンにとっては重要な作品になっているが、この映画で共演したイ・ジョンジェとファン・ジョンミンという二人が、7年ぶりに共演した『ただ悪より救いたまえ』が12月24日(金)から日本でも公開されることが決定した。この作品でのイ・ジョンジェは、冷酷無比な殺し屋で、ファン・ジョンミン演じる暗殺者に復讐を誓うという、『新しき世界』とは真逆の関係性の役を演じている。

 ここで紹介した3本の映画も、これから公開される『ただ悪より救いたまえ』も、『イカゲーム』でイ・ジョンジェが気になった人にとって、彼のまた違った姿を堪能できる作品になっているのではないだろうか。

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西森路代(ライター)

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