強烈! エロ・グロ・サイコな異常作が多発したイタリアン・ホラーを“再発掘”
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『笑む窓のある家』は“ジャッロ”と呼ばれるイタリア製スリラーにジャンル分けされる。ジャッロは殺人と犯人探しを描くミステリーの形式を用いながら、ロジカルな謎解きよりも殺人の恐怖やスリル、映像的快楽を優先させる。『笑む窓のある家』には禁忌の儀式を思わす凄惨な殺人シーンが登場するが、犯人が殺しの手口に独自の儀式的執着を見せるのもジャッロの特色だ。
●『サスペリアPART2』(1975)ダリオ・アルジェント
『サスペリアPART2』 (C)1974 RTI/Rizzoli COVER ART (C) MALLEUS Rock Art Lab/ in collaboration with Dark City
本作はまさに“殺人の芸術”を極めた傑作で、殺しの達人、ダリオ・アルジェント監督の悪魔的センスが冴える。割れた窓ガラスが喉元を突き通し、熱湯で顔面がとろけ、机の角にぶつけられた歯がへし折れる、超絶な激痛感覚。殺人現場にわざわざ不気味に笑う少年人形を仕込んだりと、凝り性の犯人は手間暇を惜しまず、恐怖の絶頂を愉しむために一切の妥協を許さない。常人の理解を超えたこだわりはまさに、異常。
●『悪魔の性・全裸美女惨殺の謎』(1972)セルジオ・パストーレ監督
肉感的な美女が狙われるエロスとスリルも“ジャッロ”の特色のひとつ。ファッションサロンで起きた連続殺人を、恋人のモデルを殺された盲目の作曲家が素人探偵となって推理する本作は、日本ではテレビ放映のみながらジャッロを代表する1本。猫が興奮する薬品に浸したショールをモデル譲に贈り、爪に毒を塗った猫を控室に放したり、電車待ちの女性に猫を投げつけたり(ひどい!)と、犯人のサイコ度はかなり高め。浴室の美女が剃刀で乳房をザックリ切り裂かれるグロ描写も鮮烈だ。
少数派の田舎系ジャッロ、閉鎖的な社会の怖さ
“ジャッロ”は都会で起きた猟奇殺人の捜査に、華やかな芸能・芸術関係者らが入り乱れ、現代人が抱える心の闇をあぶり出す作品が多い。それゆえプピ・アヴァティ監督の故郷である北イタリアの田舎を舞台にした『笑む窓のある家』は異色の少数派だ。
●『マッキラー』(1972)ルチオ・フルチ監督
同じく数少ない田舎系ジャッロがこちら。イタリア南部、迷信深い小村を残忍な連続少年殺人魔が震撼させる。監督はイタリアン・ゾンビの名作『サンゲリア』(1979)で知られる鬼才ルチオ・フルチ。閉鎖的な社会でつまはじきにされる者たちが疑惑の目を向けられ、少年を呪い殺したと自白したジプシーの女性=マッキラーが、寂しい墓地で村人から壮絶なリンチに遭うシーンは残酷帝王フルチの真骨頂。やがて判明する犯人像も反道徳的で、血にまみれたその最期も凄まじい。

