瀬戸康史、アートを愛する素顔と尽きない創作欲 「子どもが寝てから石粉粘土でいろいろ作っています」
――ご自身も絵を描かれるとのことで、作り手だからこそ気になる部分もあるのでしょうか。色使いや筆使いなど、作品を見る時に注目しているポイントがあれば教えてください。
瀬戸:例えば、すごく暗くて、ほとんど黒でできているような油絵の中に、少しだけ黄色や緑が入っていたりすると「なんでこの色なんだろう?」と考えたりしますね。「最初は緑だったところを上から黒く塗ったのかな?」「もしかして塗り忘れ?」「でも、そもそもなんで最初に緑を選んだんだろう?」とか。そういうことを想像するのが、僕はすごく好きなんです。だから、作品を見る時もそういう見方をしているかもしれません。
あとは筆使い一つをとっても、荒々しく描かれているものをネガティブに受け取る人もいれば、そこからすごくいいエネルギーを感じる人もいる。見る人のその時の心理状態によっても、受け取り方は変わるのかもしれないので、そういうところも絵を見る楽しみの一つだと思います。
――先ほど「抽象的な作品が好きだと気づいた」とおっしゃっていましたが、もともと好きな作家はいたのでしょうか。
瀬戸:今回の展覧会にはないのですが、1番好きなのはエゴン・シーレです。シーレは人間の肉体を描いているのに、どこかコンテンポラリーな要素があって、人を描いているのに人ではないように見える作品がたくさんあると僕は感じるんです。シーレ自身を描いた自画像も、人なんだけど人ではないように見える部分がたくさんあって、そこにすごく惹(ひ)かれました。ウィーンのレオポルド美術館で実際に作品を見たのですが、“ああいう感覚”になったのは初めてでした。「人を描いた絵として見られない」というか…。うまく説明するのが難しいんですけど、それがすごく衝撃的で。そこからシーレの作品が好きになりました。
――これまで訪れた中で、特に印象に残っている美術館はありますか?
瀬戸:やっぱり、レオポルド美術館になってしまいますね。ちょうどシーレの展示をやっていて、彼との出会いのきっかけをくれた場所なので、特に印象に残っています。
――もともとシーレの作品を目当てにレオポルド美術館を訪れたわけではなかった?
瀬戸:『グレーテルのかまど』(NHK)というお菓子を作る番組に出演させていただいているのですが、その特別企画でオーストリアのパティシエのもとへ修行に行ったことがあり、その時にレオポルド美術館を訪れました。実はその様子もオンエアされる予定でカメラが回っていたのですが、放送はされず。結果的に、僕がただ美術館に行っただけみたいになりました(笑)。でも、そこでシーレを知ったので、その時の衝撃はすごく大きかったですね。
