ヴィム・ヴェンダース監督、主演・役所広司とのタッグは「夢のようでした」 映画『PERFECT DAYS』、カンヌで公式上映
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役所広司主演のヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS(原題)』が、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、レッドカーペット、公式上映に役所、ヴェンダース監督らが登場した。
【写真】役所広司、ヴィム・ヴェンダース監督らがレッドカーペットに! 中野有紗、アオイヤマダもドレス姿で登場
ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが新たに手がけたのは東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画。日本の公共トイレのなかに small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見い出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡ぐ。
平山を演じるのは、ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまない俳優、役所広司。共演は、平山のもとに突然訪れるめい役に新人の中野有紗。その母、平山の妹に麻生祐未。平山と奇妙なつながりをもつホームレスに、ダンサーの田中泯。同僚の清掃員に柄本時生。そのガールフレンドにアオイヤマダ。平山が休日に訪れる居酒屋のママに石川さゆり。その元夫に三浦友和。そのほかにも、豪華キャストが登場する。
現地時間5月25日、『PERFECT DAYS』のコンペティション上映を直後に控えたヴィム・ヴェンダース監督、主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯がレッドカーペットに登場した。大きな声援と祝福を受け、ゆっくりとレッドカーペットを進むと、劇中で使用されている楽曲Lou Reedの「Perfect Day」がかかり、監督が思わず踊りだす場面も。
レッドカーペットの前に実施された取材では、「編集ではみんなの顔を見ていたけど、カンヌで実際に会うことができてとても嬉しい」と顔をほころばせていた監督。役所について聞かれると「彼の作品は、かなりの数を見た」という。「警官としても侍としても素晴らしい、なんという役者なんだと思っていた。役所さんと仕事するのは夢のようでした」と役所への思いを語る。他キャストについても「この作品にはスピリチュアルなレベルがあって、みなそれを感じてくれていた」とキャストへの厚い信頼を明かした。
役所は監督から学んだことについて話題が及ぶと、「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」という。平山のめいを演じた中野は「本当にありのままのわたしとキャラクターを重ねて演じるような環境をヴィムが整えてくださったので、自然に演じることができた」、ホームレスを演じた田中は「映像にとらえたものは全部その場でやったもの。わたしはスピリットそのものです」、アオイは「ヴィムさんも、役所さんも周りを引き立ててくれる人だなと思った」と語った。
直後に実施されたコンペティションでは、2300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレにて、満員の観客の中上映された。会場に監督とキャストが現れると、観客は総立ちで迎え、約5分間におよび拍手が鳴りつづけ期待の大きさを感じさせる。その後静寂に包まれ上映が開始。2時間5分の上映が終了するや否や、会場は一気に熱を帯び、観客は一斉に立ち上がって約10分に渡るスタンディングオベーションが起こった。感激につつまれる監督を役所、中野、アオイ、田中が優しくつつみこみ、映画同様、あたたかく感動的な上映となった。
熱気はそのままに、キャストのみ上映後の囲み取材を実施。熱いスタンディングオベーションを受けた気持ちについて聞かれると、役所は「みなさん褒めるの上手ですよね(笑)」と照れつつも「監督が言ってたんですけど、褒められても自分がうまいと思わないで、けなされても自分がダメだと思わないで、映画で語りなさい。と。まさにそうだなと。でも今日みたいな暖かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ。良かったな。と単純に思いました」と顔をほころばせた。
中野は「どういう反応がくるのかなと不安だったけど、きっと感じるものがあるんじゃないかという望みはありました。スタンディングオベーションで拍手と喝采を感じた時にそれが確信に変わりました。」と言う。田中は「映像のお仕事で(スタンディングオベーションを受けたのは)初めてです。嬉しいというよりも『役所さん、やったね!!』という気持ちで、抱きつきたかったです」と、主演の役所を気遣った。最後にアオイは「役所さんが爆発するわけでも、変身するわけでもない映画なんですが、日常の幸せ、平和の象徴が描かれた映画が評価された、ということがとても嬉しく思いました」と締めくくった。
また26日(現地時間)には、フォトコール、公式記者会見にも登壇した。