濱口竜介監督、『偶然と想像』ベルリン映画祭銀熊賞に「金よりは銀が似合う映画」

濱口竜介監督の新作『偶然と想像』が、世界三大映画祭のひとつ、第71回ベルリン国際映画祭にて審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞した。受賞から一夜明けた6日、オンラインで行われた記者会見で濱口監督が喜びを語った。
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本作は、「偶然」と「想像」をテーマにした3話オムニバスから成る濱口監督初の短編集。濱口監督自身が『ハッピーアワー』等のプロデューサー高田聡と共に企画立ち上げを行い、2019年夏から約1年半をかけて製作された。脚本もすべて濱口監督自身が手掛け、撮影は3話ともに『うたうひと』『ひかりの歌』の飯岡幸子が務めている。キャストは、第1話に古川琴音、中島歩、玄理。第2話に渋川清彦、森郁月、甲斐翔真。第3話に占部房子、河井青葉が出演する。
濱口監督は受賞に際し、「本当にうれしく思っています。本当に小さなチームで、会議室のような部屋でリハーサルをすることから始まった映画です。2019年から製作が始まり、コロナの影響も受けながら、撮影の体制も変えながら完成したものが、こうしてベルリン国際映画祭という大きな映画祭で賞をいただけたことを本当にありがたく思っています」と感慨深くコメント。
続けて「メインキャスト8名のみなさんが本当に素晴らしい形で画面に映ってくれて、それが海外の映画祭にも伝わったんだと思います。その演技を支えてくれたスタッフにもとても感謝しています。とても小さなチームでしたが、一人一人の献身的な姿勢がなければ決して成立しないものでした」と感謝を述べた。
最高賞の次点となる銀熊賞を受賞したことについて「コンペティション部門に入ることも受賞することも期待していなかったので、このような結果が得られて本当に驚いています。ついでにいうと、金よりは銀が似合う映画ではないかと思っています」と口に。その真意を「徒歩圏内10分の会場でリハーサルをしたり、自分の生活範囲と近い映画が、世界の大舞台の映画祭に出るということがちょっと信じられないし、こんなことがあるんだなと。ですが、映画祭はそういうことが起きる場なんだなと改めて思わせてくれた」と語った。
濱口監督は1978 年、神奈川県生まれ。『ハッピーアワー』(2015)でロカルノ国際映画祭、ナント三大陸映画祭で主要賞を受賞するなど世界の注目を集めた。『寝ても覚めても』(2018)が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品。待機作に、村上春樹原作・西島秀俊主演『ドライブ・マイ・カー』(2021年夏公開)がある。『偶然と想像』の劇場公開は未定。