親権とワイナリー…“泥沼”離婚の行方は? ブラッド・ピット、いつまでもすっきりしないアンジェリーナ・ジョリーとの“複雑”な関係【ハリウッド最前線「第8回」】
文:猿渡由紀
米ロサンゼルスを拠点に様々なメディアで活動している映画ジャーナリスト・猿渡由紀さんの連載がクランクイン!でスタート。第8回は、『ウルフズ』でジョージ・クルーニーと16年ぶりの共演を果たした「ブラッド・ピット」にフォーカスしたコラムをお届けします。
■親権とワイナリーを巡る裁判の行方は…
ブラッド・ピットとジョージ・クルーニーが、本日9月27日よりApple TV+で配信開始される『ウルフズ』で、久々に共演する。
(左から)ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー(2024年撮影) (C)AFLO
彼らが最初に組んだのは、ピットがジェニファー・アニストンと結婚していた2001年に公開された『オーシャンズ11』。最後に『バーン・アフター・リーディング』で組んだのは、アンジェリーナ・ジョリーと家庭を築き、“ブランジェリーナ”として世界に注目されていた2008年だ。それから16年。ピットは、『ウルフズ』が世界プレミアされたヴェネツィア国際映画祭に、ジョリーと別れた後に交際を始めた女性イネス・デ・ラモンを同伴し、カップルであることを公にした。23年もの年月が流れたのだなと、あらためて感じる。
とは言え、ピットは、まだ完全にすっきりと前を向くことができていない。ジョリーによる離婚申請から8年も経つのに、元夫婦の間の揉め事は解決していないのだ。引っ張り続けているのは、ジョリー。元夫に未練があるわけではなく、その逆。ピットが憎くてたまらないらしいジョリーは、ピットにとって一番大事なものを彼から取り上げようとし続けているのである。
(左から)アンジェリーナ・ジョリー、ブラッド・ピット(2015年撮影) (C)AFLO
2016年10月、離婚申請をするにあたり、ジョリーは単独親権を要求した。共同親権が一般的であるアメリカでは、珍しいことだ。ジョリーとの間に持つ3人の実子と3人の養子を何よりも愛するピットは、異議をとなえ、共同親権を主張。しかし、ジョリーが離婚申請をする直前に、プライベートジェットの中で酒を飲んでいたピットと口論になり、間に入った長男マードックス君にピットの手が当たってしまう出来事があったことは問題だった。その事件は調査され、DVはなかったと判断されたのだが、反省したピットは酒をすっぱりやめ、抜き打ちの飲酒チェックも承諾。しばらくの間、子供たちとの面会は監視付きだったが、2021年5月、裁判所は共同親権を言い渡した。
しかし、受け入れたくないジョリーは、この件を担当した判事がピットの弁護士とビジネス関係にあったと指摘し、利益相反を理由に、この判決を無効にしてほしいと要請する。それは通ってしまい、親権争いは振り出しに戻ってしまった。現段階で、6人の子どものうち、まだ親権が必要なのは、16歳の双子ヴィヴィアンちゃんとノックス君のみ。この子たちも親権がいらなくなるまで引き伸ばすのがジョリーの狙いだと思われる。親権の対象外となったほかの子供たちは、父とすっかり疎遠だ。
もうひとつは、南仏のワイナリー。カップルだった時にピットとジョリーが共同で購入した不動産にはワイナリーがついており、ピットはここでロゼを作ることに情熱を注いできた。そのワイン「シャトー・ミラヴァル」は、今ではロサンゼルスのほぼすべてのスーパーで見かけるほどメジャーになっている。所有権は50/50ながら、これは完全にピットのプロジェクトで、ジョリーはノータッチだった。しかし、離婚後、ジョリーは、自分の所有分をピットに断りなく、ストーリウォッカなどを持つロシアの会社に売ってしまったのだ。
これを知ったピットは、直ちにジョリーを提訴。受けて立ったジョリーは、この機会を使ってピットに受けたというDVの話を出してきた。ジョリーによれば、自分の所有分を最初はピットに売ろうとしたのだが、条件としてピットが秘密保持契約に署名することを出してきたため、彼には売らなかったとのこと。だが、ピットは、秘密保持契約はあくまでビジネスの内容についてのごく一般的な内容で、ジョリーがいうような過去の私生活についてのものではなかったと反論している。
この裁判がいつまでかかるのかは不明。ピットが勝訴したとしても、ジョリーは控訴するかもしれない。ヴェネツィア国際映画祭にはジョリーも主演作『Maria』のために訪れていたが、映画祭側はピットとジョリーがはち合わせないよう配慮してスケジュールを組んだ。しかし、顔を合わせたくもない相手のために、ふたりはこれからも高い弁護士代を払い続けることになる。次にまたクルーニーと共演する時までに、ピットはここから解放されるだろうか。
猿渡由紀(L.A.在住映画ジャーナリスト)プロフィール
神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「週刊SPA!」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイ、ニューズウィーク日本版などのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。
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