宮崎吾朗監督「父はスーパーマン」 宮崎駿のジブリから離れての“武者修行”に手応え
吾朗監督の描くものには、父と子、命をつなげていくというテーマが通底しているようにも感じる。すると「何せ、父が宮崎駿ですから」と苦笑い。「この歳になっても、息子であるということを意識させられ続けてしまう。そうすると、宮崎駿、高畑勲がやってきた時代、僕らが何かやろうとしている時代、そしてまた次の世代があるだろうと、常に上と下を意識してしまうところはある」。
武者修行に出た意味を聞いてみると「非常に良い修行になっている」と充実感をみなぎらせる。「僕は、やっぱりスタジオジブリは宮崎駿のスタジオだと思っていますから、ジブリにいる限りその影響下からは逃れられない。宮崎駿のセオリーや考え方がスタジオのベースにあって、僕の求めることと食い違う瞬間もどうしてもあります。それを突破できる力は、自分にはまだない。でも今、やっているスタッフとは、ゼロの関係から始めて、お互いに“ああだこうだ”と言う中で“一緒に作っている”という感覚が非常に強くなっています。僕にとってはそちらのやり方のほうが、性に合っているとは思いますね」。
「自分の土台を否定してもしょうがない」と偉大な父のもとに生まれた葛藤・苦悩は、常につきまとうものだろう。しかし、若い、新しいスタッフとの共同作業に「3作目にして、アニメーションを作るというのは、こういうことなんじゃないか。そして何をやれば良いのかというのがやっとわかってきた」と清々しい笑顔を見せる。森の中へと冒険に旅立つローニャのように、未知なる可能性を切り拓き始めた吾朗監督のこれからが、実に楽しみだ。(取材・文・写真:成田おり枝)
『山賊の娘ローニャ』は、NHK BSプレミアムにて10月11日19時より放送スタート。
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