32名で力を合わせ、世界初上演の新作を演じ切る! ネルケプランニング「夏休み!オン・ワークショップ2026」レポート【最終日】

ワークショップは、成果発表をして終わりではない。公演後の振り返りでは、講師陣がそれぞれ子どもたちに声をかけていく。「うまくできたときと、できなかったとき、何が違ったかを考えてほしい」と伝えるのは末原だ。6日間をともに過ごした講師陣の言葉を受け止める子どもたちの表情は、公演を終えてホッとしながらも、まだどこか気を張った面持ちのまま。そこには、作品を創り上げた役者としての自覚が滲んでいた。その後、子どもたちは通常の舞台と同じくバラシと打ち上げを終えて、ワークショップの全日程を終える。
公演を終えた末原に、今年のワークショップについて聞くと、まず口をついたのは「初日は本当にどうなるかと思った」という言葉だった。昨年は、末原が過去に上演した作品の再演。全員が同じ役で、主要な相手役はほとんど末原や、同じく劇団おぼんろ所属のわかばやしめぐみが担う、簡略化された構成だったという。それでも手応えを得た末原は、今年、新作を書き下ろし、あえて難度を上げた。小学1年生から中学3年生までという年齢差のあるカンパニーで、末原が出ないシーンを作り、子どもたちのセリフを増やし、物語も複雑にした。「子どもたちが自立しないといけないし、挑戦でした」。しかも日程は昨年より1日少ない。挑戦は、いくつも重なっていた。
ところが、子どもの成長は大人の想像を上回る。「彼らは自分の限界をまだ知らないから、どんどん伸びていく。昨日まで不安だったシーンが、翌日には見違えるほど仕上がっていて、その連続でした」と末原は振り返った。
「子どもは楽しむ天才」と末原は語るが、末原はその楽しさを引き出す天才だろう。そんな彼が徹底したのは「全部のシーンを楽しくすること」。「動きが硬いなと思ったら、そのシーンに喜びがないんです。じゃあここはこうしてみようって、どんどん色を塗っていってあげる」。その積み重ねが、子どもたちのキラキラとした表情を引き出していた。
「子どもと作品を作るとき、普段はオーディションで歌って踊れる子が集まる。でも、このワークショップはそうじゃなく、いろんな子が集まって、“こんなに素敵なものができる”と提示する場でもある。それ自体が、僕らにとってのアートだなという気持ちで作っていました」。できそこないたちが自分を認め、祈る物語は、そのまま、まだ完璧ではない可能性を秘めた子どもたち32名がひとつの舞台を作り上げる姿にも重なっているように思えた。
最後に、今後の展望を尋ねると、末原は「これはもうライフワーク」と即答した。思い描くのは、子どもたちが一年中逃げ込んでこられる遊び場だ。「来て、大きな声で歌って、お芝居をして、解散する。そういう場所を作っていくことが、これから5年、10年の自分の人生かなと思っています」。
6日間という短い日程で、32名の子どもたちはひとつの舞台を作り上げ、堂々と演じきった。「子どもたちは仲良くなるのに、理由なんていらない」末原の言葉通り、この短い期間が、確かにひとつのカンパニーを生み出していた。初日、床に輪になって台本を読んでいた彼らは、いま役者の顔でこの場所を後にする。この夏の記憶が、いつか彼らのなかで大きな花を咲かせる日を、楽しみに待ちたい。(取材・文・写真:双海しお)