演劇団体「いいへんじ」2年ぶり新作長編『あたたかいなみだ』来年上演 “男性同士のケア”のあり方を問う
いいへんじを結成して十年が経ちました。
これまでの作品では、自分自身の経験をもとに、感じていることや考えていることを言葉にしたり、目の前の相手とどのように関係を築けるのかを模索したりしてきました。
今回は、自分とは異なる経験を持つ人々の関係性について、とりわけ、男性同士のケアについて考えてみたいと思っています。
どうして男性同士のケアについて書こうと思ったのか、と問われると、ずっと気になっていたから、というのが答えになります。
「ここで泣くのはダサい」「男同士で話すのは恥ずい」「相談できる人がいない」「あいつは彼女がいるから大丈夫でしょ」
身近な男性からそのような言葉を聞くたびに、どうしてそうなってしまうのだろう、弱さを見せることが許されないと感じてしまうなんてどれだけ苦しいことだろう、どうしたらお互いの感情を押し込めずに言葉を交わすことができるのだろう、と思っていました。
さまざまな場面でそのような言葉に遭遇するということは、問題の原因は、個人の性格ではなく、社会の構造にあるはずです。そしてそれは、自分自身にとっても無関係なものではないからこそ、ずっと気になっていたのだと思います。
振り返ってみると、過去のいいへんじの作品でも、社会に要請される「男らしさ」に適応できず、精神的な不調を抱えている男性の登場人物たちを描いてきました。
どうして女性である自分が、それを描いてきたのか、描きたかったのか、描かざるを得なかったのか、このタイミングで改めて考えてみたいと思っています。
今回の舞台となるお笑いの世界も、身近なところで「男らしさ」を感じる場所のひとつです。
わたしはお笑いが好きです。子供の頃から日常にあるものでしたし、何も考えずに笑えるということに救われてきたことが何度もありました。その一方で、引っかかりを感じる瞬間が増えているのも事実です。
つらい経験も笑いに変えることが求められる。本人のNOよりも場の空気が優先される。一生懸命に物事に取り組む人を茶化したり、マイノリティを揶揄したりすることで、場の一体感が生まれる。
そして、違和感を持ちつつも、その場では笑ってしまう自分、お金を払ってその構造を支えている自分がいることに、何よりも引っかかるのです。
どうにかしたいけれど、どうにかできることなのか。いつの間にか、お笑いのコンテンツからは少し距離を置くようになってしまいました。いまでも答えは出ないままです。
そういう意味では、やっぱり今回も、自分自身の経験をもとに作品を作ることになるのかもしれません。
今回の作品は、ただ「男らしさ」をまなざすだけではなく、女性として、作家として、消費者として、まなざす立場にある自分に向き合う機会でもあるのだと思います。
自分が覗くことができるのは、彼らに見えている世界のほんの一部かもしれない。だからこそ、どんなことを感じたのか、言葉にすることをあきらめたくない。その言葉に対して返してくれた声に耳を傾け、想像することを忘れたくないと思います。
演劇という形で問いを開くことで、稽古場や劇場で、みなさんとそれぞれに見えている景色を共有し合えることを楽しみにしています。
自分の傷を笑ってごまかすのではなく、素直に涙を流せますように。誰かの涙を笑って茶化すのではなく、受け止められる社会でありますように。
願いを込めて、丁寧に作ります。
【公演概要】
舞台『あたたかいなみだ』
■作・演出
中島梓織
■出演
櫻井成美 遠藤雄斗 大宮二郎(コンプソンズ)
藤田恭輔(かるがも団地) 冨岡英香(マチルダアパルトマン) 瀬安勇志(南極)
横手慎太郎(シンクロ少女) もりももこ(劇団かもめんたる)
飯尾朋花(いいへんじ) 小澤南穂子(いいへんじ)