廣野凌大らが体現するロックで不器用な青春が熱い!/舞台『IF』ゲネプロレポート
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廣野凌大 10周年記念企画 舞台『IF』が、東京・IMM THEATERにて開幕した。痛々しいほどにまっすぐで、どこまでも不器用な男たちの青春の物語だ。俳優・音楽アーティストとして活動する廣野が、「もし俳優をやっていなかったら」という“IF”から着想を得たオリジナルストーリー。原案・廣野、脚本・私オム、演出・福澤侑で立ち上げた、10周年の節目にふさわしい一作だ。初日に先立って行われたゲネプロの様子をレポートする。
【写真】俳優陣が挑む生演奏の熱量に心奪われる!舞台『IF』ゲネプロの様子
開演前、客席に流れていたのは、洋楽ロックの有名なナンバー。廣野はかつて、バンドをやりたくて上京しながら、その“青春”をすっ飛ばしてきたとインタビューで語っていた。原案・プロデュースも兼ねる彼が忍ばせた、果たせなかった青春のサウンドなのかもしれない。
物語は、高校軽音楽部に集った若者たちが、周りを巻き込みバンド「FISTS」を結成するところから始まる。だが本作は、キラキラした青春物語ではまったくない。生々しい感情がぶつかり合い、ざらつくような手触りが、観終えたあとに長く心に残る作品に仕上がっていた。本作が描くのは、高校時代と、それぞれが20歳を超えた5年後の姿。進学や就職を経て、改めて自分を見つめ直す時期に差しかかった男たちの、人生の選択が交差していく。
物語の中心にいるのが、廣野演じるリョウタ。複雑な家庭の事情を背負い、決してイージーとは言えない人生のなかで、音楽だけが唯一、自分の存在を肯定してくれるもの――そんな青年だ。感情にまっすぐで、嫌なことは嫌、許せないことは許せない。それが仲間を鼓舞することもあれば、トラブルの引き金にもなる。バンドがこれからというときに、彼自身の起こした行動が原因で、仲間は散り散りになってしまう。以来、リョウタの時間はそこで止まったまま。今を生きているようで、その実、過去にすがり続けている。廣野は、行き場のない憂いや、処理しきれない苛立ちを、瞳に灯すのがうまい。もがくリョウタと、彼自身の名を冠した役を生きる、俳優・廣野凌大。役と役者が「IF」を通じて重なり合う、その曖昧なグラデーションこそ、本作最大の見どころだろう。
そんなリョウタの腐れ縁である真下 陸を、石川凌雅が懐の深さを感じさせる芝居で演じる。高校時代の年相応なヤンチャさと、暴走しがちなリョウタの手綱を握る包容力。その塩梅が絶妙だ。社会に出て大人としての役割を背負っていく陸は、メンバーのなかでも変化が大きい。それゆえ、多くの観客が最も自分を重ねやすい人物かもしれない。熱量のある芝居が似合う石川の熱が、同じく激情を宿す廣野のリョウタと交わることで、二人のぶつかり合いは、そのまま作品の核として膨らんでいった。
軽音部仲間のケイこと白井啓二を演じるのは小坂涼太郎。ケイは、陸とは正反対のベクトルで、この5年間に大きく変わった人物だ。一歩引いているように見えるケイは、控えめな笑顔を浮かべることが多いが、その裏に抱えるものは、かつてとはまるで違う。小坂が、その機微を繊細に演じ、とりわけ笑顔の奥にふとにじむ喪失感が印象に残る。
メンバー不足からスカウトされる形でバンドに加わる四条昌利を演じるのは田中涼星。人や自分に期待したい気持ちと、裏切られることへの怯え。その狭間で揺れる四条を、“期待”というキーワードを軸に丁寧に立ち上げる。ニコニコとした笑顔の裏に、一度は夢を諦めかけた者の痛みと、それでも燻る熱がのぞく。人の心をぎゅっと掴む田中自身の芝居が、この役とどこか呼応していた。
そして、リョウタの3つ年下の幼馴染・クルこと来島哲平を演じる持田悠生。中学生から大学生へと成長するクルは、メンバーのなかで最も下の世代。大人になる苦悩も、等身大の大学生のそれだ。ただ、クルがリョウタに向ける感情は複雑である。誰よりも「許せない」という思いが強く、しかしそれだけではない。リョウタに救われたという、相反する想いも抱えており、その割り切れなさを、持田が絶妙に滲ませていた。
それぞれの群像劇も見応えがあるが、やはり5人が揃ったときの爆発力が素晴らしい。芝居の引き算も、遊び心の足し算もできる顔ぶれだからこそ、5人がスタジオでわちゃわちゃとじゃれ合うシーンは、たまらなく心地がいい。そこには、作品の肝である廣野と、彼らの役者仲間でもある演出・福澤 侑が生み出す、カンパニーそのものの心地よさが透けて見えた気がする。
もう一人、忘れてはならないのが、青柳塁斗演じる伊木田だ。バンドメンバーしか会いたい相手がいない、そんなリョウタの狭い世界に、保護司として優しく寄り添う役どころ。その柔らかな眼差しが、閉じた世界をそっと押し広げていた。
そして、作品を貫くのが、リョウタのロックなソウルとサウンドだ。メンバー全員が挑戦として挑んだ生演奏によるパフォーマンスは、巧拙を超えて、心の内の吐露としてのロックとして完成されていた。思うようにいかない日々のなかで、それでも、もがくことをやめない男たち。彼らの不器用な衝動が、最後にどんな音を鳴らすのか。その目で、耳で、確かめてほしい。
(取材・文・写真:双海しお)
廣野凌大 10周年記念企画 舞台『IF』は、10月28日まで東京・IMM THEATERにて上演。
【公演概要】
廣野凌大10周年記念企画 舞台『IF』
・10月22日~28日:東京・IMM THEATER
◆出演
廣野凌大
田中涼星
持田悠生
小坂涼太郎
石川凌雅
青柳塁斗
◆原案
廣野凌大
◆演出
福澤侑
◆脚本
私オム
【公式サイト】https://ryotahirono-10th-if.com/
【公式X】https://x.com/10th_If_