時を超えて愛される『君に届け』 “爽子のすごさ”は大人になった今だからこそわかる
■南沙良&鈴鹿央士の演技も魅力的
青春を終えた今、爽子は“あの頃”の私がなりたかった自分であり、なれなかった自分なのかもしれないと思った。学生時代は、友だちがたくさんいて、誰からも嫌われない人がすごいと思っていたけれど、大人になったいまなら分かる。誰に何を言われても環境のせいにせず、自分を持ったままでいられる。そして、その生活のなかで幸せを見つけていける爽子こそが、本当にすごい人なのだと。高校1年生にして、それに気づいていた風早もさすがである。
Netflixシリーズ『君に届け』より (C)椎名軽穂/集英社・「君に届け」テレビ東京
そんな魅力的な2人を演じたのが、南沙良と鈴鹿央士。まず、南は爽子の純粋でかわいらしい部分を全面に出していたのが印象的だった。もちろん、じめっとした空気感はしっかりと表現されているが、どこか手を差し伸べたくなるような、守ってあげたい魅力を持った爽子…という感じ。『ドラゴン桜』(TBS系)の早瀬菜緒のようなちょっぴり勝ち気で明るい役柄から、闇を潜めたキャラクターまで、表現の幅が広い南だからこそ、新生・爽子を生み出すことができたのだと思う。
そして、昨年のドラマ『silent』(フジテレビ系)でブレイクを果たした鈴鹿は、“主成分優しさ”の戸川湊斗から、“主成分爽やか”の風早に。鈴鹿が作り上げた風早は、原作と比較すると少し大人っぽい。だからこそ、爽子に恋をして余裕をなくしていくシーンのときめきを、より一層強く感じることができた。
そのほかにも、櫻井海音や久間田琳加、中村里帆など期待の若手キャストが勢ぞろいしている本作。“君に届け”と願う高校生たちの純粋無垢な恋心が、忘れかけていた“あの頃”の輝きを思い出させてくれる。