『ハリポタ』スタジオツアー東京の“クリスマス装飾”が楽しみすぎてロンドンまで行ってきた! 小道具を作る“秘密の工房”に大興奮<「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」裏側レポ>
■職人たちがいい人すぎる
取材日はせっせと雪だるまを作っていたアランさん
今回の「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」は20人ほどで制作を進めているという。作業中の忙しい時間にもかかわらず、職人たちは手を止めて優しくインタビューに応じてくれた。
まずは、デスクにくまモン柄のお酒を置いているアランさんを紹介。彼は、型から出した個々のアイテムを組み立てる前に準備するという作業を担当。この日はケーキの上にのせるスノーマンの準備をしていた。「表面を滑らかにしつつ、それぞれが少し違って見えるようにしています。各々異なる性格なので、表情が違います。鼻もまたそれぞれ微妙に違うのです。退屈そうにしているのや、後ろを振り返っているのなど、パーソナリティが異なります」とこだわりを明かす。作業時間は7時30分から17時30分まで。やりたいアイテムを選ぶのではなく、テーブルにやってきた小道具にひたすら向き合う仕事だ。ピエールは「これはやりたくないとは言わせないのです」とまた笑った。とにかく工房の雰囲気がずっと良い。
冗談を交えながらもピエールは「小道具作りのいいところは、仕上げの作業なのですが、そこに行くまでにはさまざまなことをやらなければなりません。それは人生の全てにも言えることで、地味な側面とワクワクする側面があるものです。全ての工程をやらなくてはならないのです」と小道具制作の仕事の深さも語る。
「完璧なものでなくてはなりません」と小道具への熱意を語る職人さん
それから女性のスタッフにも話を聞いた。彼女はクリスマスツリーに飾るヤマウズラ230個を担当中。「(わたしの作業は)カフスを付けて、その周りに印をつけ、両面にヤスリをかけて完璧になるようにすることです。それから接着剤を使い、金箔を貼り付けていきます。羽もその上に乗せ、先端にティンセルの尾もつけますし、模様もつけて素晴らしいものとなります」と話す。230個は他の人と分担で作業。互いに忙しい時は互いの作業を手伝うそうで、各々が集中して作業に取り掛かっているが、全体を見たチームワークも必要な仕事のようだ。加えて「試行錯誤を繰り返し、失敗を何度も経験してうまくいくようになるのです。スタジオツアーが映画の時と全く同じであることが重要なのですが、スタジオツアー東京でも完璧なものでなくてはなりません」と小道具一つひとつへの熱意を明かす。
そしてこれらの小道具たちは、スタジオツアー東京で組み立ての作業に入る。「部品は全て作りますが、地元のチームがツリーを制作しますので、そのツリーに各アイテムが飾られます。“ドレス”と呼ばれる工程で、全てのアイテムを大広間で組み立てていくのです。かなり大勢のチームですね。これはロージーに聞いていただければと思いますが、数十人のチームがドレスを手掛けるはずです」とボハナは言う。ロージーというのは、スタジオツアー ロンドンとスタジオツアー東京のセットデコレーターを務めるロージー・グッドウィン。ということで、ボハナの工房を離れ、スタジオツアー ロンドンにも行ってみた!
■スタジオツアー東京ではココを見て!
スタジオツアー ロンドンで話を聞いたグッドウィンは、映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』からセットデコレーターを担当し、現在はロンドンと東京のスタジオツアーのセットデコレーターを務めている人物。大学でアートとデザインの学位を取得したものの、卒業したての頃は映画業界はさっぱりだったそう。ところが友人から「この人に連絡を取ったらいい」と教えられた人に履歴書を送ると電話があり、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で使用する三代魔法学校対抗試合のバナーを作ってほしいと依頼があったのだという。なんという強運。それから次の制作物のため「もう少し長くいて」と言われ、結局映画の制作期間のほとんどで仕事をすることに。さまざまな部署を転々としたと言い、「美術とセット装飾部門がいかに小道具部門その他全ての部門と連携しているのかを目の当たりにすることができ、素晴らしい学びの機会だったのです」と懐かしそうにグッドウィンは話す。加えて、2013年に亡くなった、シリーズ全作を手掛けたセットデコレーターのステファニー・マクミランさんともこの仕事を通して出会えたと言い、「彼女は人としても素晴らしく、われわれはこのスタジオツアーの仕事を通して彼女の作品に敬意を表しているのです。これは彼女の遺産です」と思いを語った。
スタジオツアー ロンドンとスタジオツアー東京のセットデコレーターを務めるロージー・グッドウィン
ボハナたちが小道具制作を手掛けるのに対し、セットデコレーターの部門は必要なもの全てを確認した上でかなり長いリストを作り、何を作るのか、何を購入するか、何を外注して作ってもらうのかを判断する。ボハナたちに制作を依頼するだけでなく、チームでアンティーク・フェアやマーケット、オークションなどにも足を運ぶのだそうだ。仕事を始めた頃は「品数がこんなにある中から一体どうやって選んだら良いのだろう」と悩むこともあったそうなのだが、「セットに何が必要なのかを理解するようになると、引き寄せられるものなのです。まるで物に話しかけられているかのような感覚というのは不思議なものですね。『自分は大切な存在で、あなたは私を必要としているでしょ』なんてね」と話す。
今回スタジオツアー東京に初上陸する、『ハリー・ポッターと賢者の石』の大広間のクリスマス装飾は、伝統的なイギリスのクリスマスと魔法界の世界観が融合するように作られている。注目すべきポイントは、とにかくビッグサイズなところ。「全てがとにかく大きく、分量も多いのです。ポテトも山盛りになっていますが、それこそがホグワーツの魔法的なところです。全てが温かくほっこりして、特別感があり、それでいて装飾にひねりを加え、少し大きくなっています」と話す。とはいえ「大きすぎても小さすぎてもいけません」と、全体のバランスの難しさも語る。わずか2mmですべてが変わることがあるそうで、セットデザインは小道具単体のクオリティーと全体のバランスの2つの完璧を追及しなければならない。またもや気が遠くなりそうな作業だ。
ところでグッドウィンの小道具のお気に入りはクラッカーやプレゼントとのこと。「映画でクラッカーを作った時も、実は中におもちゃが入っていて、振るとカサカサと音がしていたのです」と裏話を交えつつ、「われわれの仕事の一部は、ディテールを全て与えるのではなく、『このプレゼントの中には何が入っているのだろう』と、少し想像してもらう機会を与えることだと思っています。リアリティー全てを提示するのではない。そういう要素を紹介し、想像してもらう機会を提供するというのがいいのです」と話す。セットデコレーターの仕事は奥が深い。
スタジオツアー ロンドンの「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」の様子 Warner Bros. Studio Tour London ‐ The Making of Harry Potter.
ところでグッドウィンの小道具のお気に入りはクラッカーやプレゼントとのこと。「映画でクラッカーを作った時も、実は中におもちゃが入っていて、振るとカサカサと音がしていたのです」と裏話を交えつつ、「われわれの仕事の一部は、ディテールを全て与えるのではなく、『このプレゼントの中には何が入っているのだろう』と、少し想像してもらう機会を与えることだと思っています。リアリティー全てを提示するのではない。そういう要素を紹介し、想像してもらう機会を提供するというのがいいのです」と話す。セットデコレーターの仕事は奥が深い。
スタジオツアー ロンドンの「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」の様子 Warner Bros. Studio Tour London ‐ The Making of Harry Potter.
『ハリー・ポッター』や『ファンタスティック・ビースト』シリーズは何度も見返している人も多いと思うが、ディティールに注目することで第1作目から20年以上経った今でも新たな気付きや発見が得られる。『ハリー・ポッターと賢者の石』のクリスマスと言えば、ハリー・ポッターにとっても初めての大切なクリスマスだ。あの時ハリーが味わった感動が、いよいよ日本でも同じように体感できるようになる。さまざまなプロフェッショナルの仕事が詰まった大広間の光景は、思わず息を呑むことだろう。イギリスから何人もの思いを乗せた「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」は間もなく東京にやってくる。 ※ワーナー ブラザース スタジオツアー東京のチケットは公式ホームページにて、事前に購入する必要あり。
【「ホグワーツ・イン・ザ・スノー」概要】
日程:11月9日(土)~2025年1月5日(日)
ワーナーブラザース スタジオツアー東京 ― メイキング・オブ・ハリー・ポッター