ゾクゾクしてクスっと笑える不倫モノ 黒木華×柄本佑『わたとな』に心地よく振り回される

特集・レポート
2021年9月19日 19:00
ゾクゾクしてクスっと笑える不倫モノ 黒木華×柄本佑『わたとな』に心地よく振り回される
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』より  (C)2021『先生、 私の隣に座っていただけませんか?』 製作委員会

 全く新しい形のホラーコメディ作品が誕生したかもしれない。9月10日から全国公開された『先生、私の隣に座っていただけませんか?』は、不倫を題材にしているのに、ゾクゾクしてヒヤヒヤして、クスッとしてしまう、一風変わった作品だ。(文=嘉島唯)


■観ている側がハラハラする展開

 本作は、『嘘を愛する女』(2018)や『哀愁しんでれら』(2021)などを輩出してきたオリジナル作品の企画コンテスト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」 で2018年に準グランプリに輝いた作品。1988年生まれの堀江貴大監督がメガホンをとる。

 物語はの主人公は、連載を持つ人気マンガ家の早川佐和子(黒木華)と、それを手伝う夫・俊夫(柄本佑)。結婚5年目を迎えた夫婦は、二人三脚で仕事と生活をやりくりし、仲良く暮らしているが、ある日突然、亀裂が入る。夫は、佐和子の担当編集者と不倫していたのだ。信頼する二人の裏切りを前に、佐和子に芽生えたのは、悲しみよりも創作意欲だった。

描いてやる──。

 SNSの普及によって、誰もが作品や情報を発信できるようになった今、こんなことを考えた経験がある人は少なくないのではないだろうか。ひどいことが身に起きたら、全部描いてしまえばいい、と。

 佐和子にそんな思惑があるかは謎だが、彼女は夫の不倫をマンガとして昇華していく。「された側の妻」の視点で、夫がコソコソと女と連絡をとりあっているところ、夫の電話に出る甘い声、夫の額からにじみ出る脂汗…すべてをペンで描く。

 佐和子も佐和子で、単なる「された側の妻」にとどまらない。自動車教習所の先生(金子大地)と、まるで少女マンガのような恋を始めてしまうのだ。もちろん、この恋も詳細に作品に落とし込む。

『先生、私の隣に座っていただけませんか?』より (C)2021『先生、 私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会
 無断で佐和子のマンガを読んでしまった俊夫は、ひどく動揺する。自分が不倫しているのがバレている上に、愛する妻もまた別の男と不倫しようとしている様子が緻密に描かれているからだ。

 これってオレのこと? バレてる? ただの妄想? っていうか、この男、誰? 不倫って隠すものだよね? いや、そもそもマンガだから。フィクションだから──。

 慌てふためく俊夫と共に、観ているこちらも最後の1シーンまで心地よく振り回される。

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嘉島唯(ライター)

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