『最愛』に寄り添う“宇多田ヒカル主題歌”のすごさ 苦しい物語に光を灯す存在に

特集・レポート
2021年12月17日 07:00
『最愛』に寄り添う“宇多田ヒカル主題歌”のすごさ 苦しい物語に光を灯す存在に
真田梨央(吉高由里子) 『最愛』第10話より  (C)TBS

 吉高由里子主演ドラマ『最愛』(TBS系/毎週金曜22時)が、12月17日(金)に、ついに最終回を迎える。それぞれが、“最愛”の存在に抱く思いが明かされるたび、胸がギュッと締め付けられる本作。そんな苦しい物語に“光”を灯してきたのが、宇多田ヒカルが歌う主題歌「君に夢中」である。本稿では、「君に夢中」の魅力とともに、宇多田が担当したドラマ主題歌を振り返っていきたい。(文=菜本かな)


■物語をより切なくさせる「君に夢中」

 <君に夢中/Oh 人生狂わすタイプ>というフレーズに、真田梨央(吉高)と宮崎大輝(松下洸平)の関係を連想した人は多いのではないだろうか。15年ぶりに、再会した二人。15年前といえば、梨央にとっては、何もかもが輝いて見えた時代だ。父の朝宮達雄(光石研)も生きていて、弟の優(柊木陽太)とも一緒に暮らしていて…。そして、大好きな大輝もそばにいた。そんな輝いていた時代を、「楽しかったね」と懐かしむことさえ、二人には許されない。なぜなら、梨央は事件の“容疑者”で、大輝はそれを追う“刑事”だから。

 序盤では、お互いの立場を考えて距離を取ろうとする二人の葛藤が描かれた。「友だちとして、話せたらいいのに」と切なくなった日。苦しみのあまりに、「もう、会わんようにする」と決意したこともある。それでも、二人は引き合ってしまうのだ。まるで、磁石のS極とN極のように。

宮崎大輝(松下洸平) 『最愛』第10話より (C)TBS
 特に、第6話は苦しかった。自分の存在が、大輝の邪魔になると思った梨央は、“会うのは最後”と決めて、大輝の顔を遠くから目に焼き付けようとする。だが、大輝は「勝手に決めんな」と言い、逃げる梨央を追いかける。そして、抱き合った二人を包み込むのが「君に夢中」だ。<Ah 許されぬ恋ってやつ?/分かっちゃいるけど 君に夢中>――。刑事が、容疑者に恋に落ちてしまうなんて、もってのほか。真面目な大輝のことだ。そんなことは痛いほど分かっている。けれど、気持ちを抑えることができない。苦しみに寄り添う宇多田の歌声が、物語をより切なくさせる。

 “最愛”の存在は、恋愛関係にある人物だけとは限らない。家族、友人、会社、かつての自分を“最愛”だと感じている人もいる。「君に夢中」は、それぞれの“最愛”の気持ちがMAXになった時に流れる。第4話では、梨央が弟の優(高橋文哉)に再会した瞬間に鳴り響いた。その優が第5話で警察に連行される場面で流れた「君に夢中」は、梨央と大輝のシーンとは違った意味に聴こえてくる。やっと再会できた優と、もう離れたくない。たとえ、彼が罪を犯していたとしても…なりふり構わず、優を追いかける梨央の姿。第5話では流れなかったが、本楽曲にある<ここが地獄でも天国>というフレーズは、二人の姉弟愛に重なって苦しくなる。たとえ正義ではなかったとしても、“最愛”の存在が幸せならばそれでいい。そんな狂おしいほどの愛にも、「君に夢中」は寄り添っていた。

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菜本かな(ライター)

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