“自分は会社に残れるのか” 『大丈夫じゃない大人たち』中年社員のシビアな問題とエンタメ性を見事に融合
アジアドラマ
作りものであるはずのドラマや映画を見終わった後で、時々「あの人たちは今、どうしているかな」と、作品に登場したキャラクターたちのことを思い出すことがある。たぶん、彼ら彼女らのことを身近に感じすぎて、簡単には忘れられなくなってしまったからだろう。大手電機メーカーの事業所を舞台にした『大丈夫じゃない大人たち～オフィス・サバイバル～』も、そんなドラマのうちの1本だ。韓国を代表する映画誌「CINE21」が『イカゲーム』などの話題作を抑え、2021年シリーズベストドラマ第4位に選出した本作。その魅力を、日本でのDVDリリースにあわせて改めて紹介していきたい。
【写真】映画『三姉妹』での好演も記憶に新しいムン・ソリが“人事部の魔女”に！
ハンミョン電子の本社人事チームの中心人物として、忙しく働いていたタン・ジャヨン（ムン・ソリ）。女性であるというハンデを背負いながら、役員昇進を目指してきた彼女に、ある日、地方都市チャンインにある生活家電事業部の人事チームに異動せよとの辞令が下る。会社の意向を受けて仕事を始めようとする彼女だが、同じ事業部の開発1チームに元夫のハン・セグォン（イ・サンヨプ）がいることが頭痛のタネ。さらに、数々の業績を残してきたベテラン開発者のチェ・バンソク（チョン・ジェヨン）が、セグォンと衝突し、人事チームにやってきたことから、彼女の会社での毎日は波乱続きとなる。
『大丈夫じゃない大人たち～オフィス・サバイバル～』Vol．1～5 4月6日（水）リリース （C）2021MBC 発売・販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント
■ 奮闘する大人たちの姿をリアルな筆致（ひっち）で描く
韓国での放送時に「ハイパーリアルなお仕事ドラマ」として注目を集めた本作。社会人生活を詳細に描いているという点で、日本でもリメイクされたヒット作『ミセンー未生ー』（14）の“大人版”と評する意見も多かった。会社生活を始めたばかりの若者たちが「インターンから正社員を目指す」姿を追った『ミセン』に対し、『大丈夫じゃない大人たち』では、正社員として長年働いてきた40代の社員たちが、「会社に残れるかどうか」という、シビアな問題がテーマとなっている。
実際、今年3月に韓国の未来アセット投資と年金センターが共同で発表した調査結果によれば、2021年55～64歳だった人々が「主に働いていた職場を退職した年齢」の平均は49．3歳で、法律で定められている定年の年齢である60歳を大きく下回っている。退職理由は「事業不振・操業中断」が16．0%と最も多く、続いて「勧告辞職・名誉退職・整理解雇」（15．6%）となっている。こうした数字を見ると、人事担当のジャヨンが希望退職者の面接をしているシーンから始まる『大丈夫じゃない大人たち』が、今、韓国の多くの会社員たちが直面している生々しい状況を描いているということがよくわかる。
脚本を手掛けたチョン・ドユンは前作の『魔女の法廷』で女性や児童に対する性犯罪というテーマに果敢に挑んだ経験を持つ。個性豊かなキャラクターたちの魅力を生かして重めの内容をコメディタッチで見せる手腕に定評がある脚本家らしく、本作でも「リストラ」というシリアスな題材を、泣き笑いのヒューマンドラマとして軽快に進めていく。
■ 韓国エンタメ界が誇る2大カリスマ名優チョン・ジェヨン＆ムン・ソリが初共演
リアリティあふれる脚本に命を吹き込んだ実力ある俳優たちの好演も見逃せない。「会社があってこそ会社員として生き残れる」という信念を持ち、社員たちから批判されながらも自らに課された業務をやりとげようとするタン・ジャヨン役はデビュー作の『ペパーミント・キャンディ』を筆頭に、多くの名作に出演してきたムン・ソリ。昨年は本作の放送に加え、映画『三姉妹』でも数々の映画賞に輝き、その演技力を改めて感じさせる1年となった。
『大丈夫じゃない大人たち～オフィス・サバイバル～』チョン・ジェヨン （C）2021MBC
そんな彼女と同じ部署で働くことになるチェ・バンソクに扮しているのは、映画だけでなく『ラスト・チャンス！～愛と勝利のアッセンブリー～』（15）、『ジャスティスー検法男女』シリーズ（18、19）といったドラマでも活躍しているチョン・ジェヨン。一見、さえない“おじさん”に見えながらも、同僚たちを気遣い、技術者としてのプライドをなんとか守り通そうとする強靭な意志の持ち主を自然体で演じている。
そんな2人と様々な局面で対立しながらもどこか憎めないハン・セグォン役を『一度行ってきました』（20）のイ・サンヨプ、彼の現在の恋人で、ジャヨンの存在に動揺するソ・ナリを『まぶしくてー私たちの輝く時間ー』のキム・ガウンが演じている。そのほか、バンソクと同世代で1日でも長く会社に残るために右往左往するチーム長たちに扮したアン・ネサンやパク・ウォンサン、ジャヨンの親友ジョンア役のチャ・チョンファらが、人間味のあるキャラクターを生き生きと見せている。
“会社”という大きな組織の中で、自分たちの人生を守ろうと必死に生きるジャヨンやバンソクたち。ドラマを見ているうちにその一喜一憂が、まるで自分や友人たちに起こった出来事のように思えてくるはずだ。
『大丈夫じゃない大人たち～オフィス・サバイバル～』は、本日4月6日（水）よりDVDレンタル開始。
