『踊る大捜査線』1997年の第1回を見てみたら…刑事ドラマの“お約束”覆す名作だった
どんなにヒットし、どんなに長く続いたシリーズにも必ず「第1回」が存在する。長く続いたシリーズであればあるほど、紆余曲折を経て今の姿があるはず。長い歴史をまだ知らない第1回は、いったいどんな形でスタートを切ったのか? 知られざる名作の第1回を振り返る「第1回はこうだった」。今回は1997年1月期に連続ドラマとしてスタートした織田裕二主演の人気シリーズ『踊る大捜査線』第1回をピックアップ!
【動画】ユースケ・サンタマリアらおなじみのメンバーも集結 『踊る大捜査線 N.E.W.メトロポリスを駆け抜けろ!』予告
『踊る大捜査線』は、主人公の刑事、青島俊作(織田)と仲間たちの物語を、時に熱く、時にユーモアを交えながら描いた人気シリーズ。連続ドラマ終了後も人気は根強く、スペシャルドラマが放送されたほか、劇場版はいずれも大ヒットし、スピンオフ映画もすべて興収10億円を超える。中でも2003年公開の第2作「レインボーブリッジを封鎖せよ!」は、昨年『国宝』に抜かれるまで、22年にもわたって実写邦画歴代興行収入第1位に君臨し続ける空前の大ヒット173億円を記録した。そんな『踊る大捜査線』の主人公・青島が14年ぶりに帰ってくる待望の劇場版第5作、『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』が、いよいよ公開された。そんな『踊る』シリーズのスタートはどんな形でスタートを切ったのか?
■ 青島くんの様子が変?
記念すべきシリーズの第1話では、冒頭から早速、織田演じる青島俊作が登場する。しかし、何やら様子が変である。取調室らしき部屋にて、被疑者らしき男に対して、ブラインドごしに室外を見やりながら、どこかぶっきらぼうに話す青島。くわえタバコで男に向かって「お前がやったってことは全部分かってんだ」「デカなめんじゃねえぞ」とスゴめば、「あんまりおふくろさん悲しませんなよ」などと泣き落としにかかる。
初登場から約30年。これだけ「青島俊作」という軽くてひょうきんなキャラクターが浸透したあとからすれば「青島くんどうしたの?」「体調悪いの?」と視聴者がけげんに思うことだろうが、もちろんこれは“素の青島”ではない。これは湾岸署に配属される前の取り調べ試験のようなもので、刑事(デカ)ドラマへの憧れが強すぎな青島の取り調べは、このあと湾岸署幹部らにこっぴどく叱られる、というオチがつく。
裏を返せばこのシーンは、「太陽にほえろ!」や「西部警察」、あるいは「あぶない刑事」など戦後を彩った名作刑事ドラマの数々の流れを踏襲しつつも、それらはとは一味違う作品である、という高らかな宣言と言えるわけだ。
■理想と現実のギャップに苦悩する青年
第1話では、街のヒーローになるという夢をもって刑事になった青島が、理想と現実のギャップに何度もぶつかる様が描かれる。事件に急行するのにパトカー1台使うのにも書類の申請と上司のハンコがいるし、殺人事件のような凶悪事件は、管内で起きたとしても警視庁=「本店」が主役で「所轄」は小間使い。事件が起きてやっと出番かと現場に急行したら、“容疑者”は未就学児だった…などなど。
その中で、深津絵里演じるすみれや、当時まだ無名だったユースケ・サンタマリア演じ、スピンオフ映画では堂々の主役を飾る真下正義、いかりや長介さん演じる和久さん、そして、少年漫画でいうライバル的なエリート、柳葉敏郎演じる室井管理官など、長きにわたってシリーズを共にするメンバーたちが第1話で早くも登場する。
「なんかサラリーマンみたいだな…」と愚痴る青島に、すみれが「警察はヒーローじゃない。公務員」「警察署はアパッチ砦じゃない。会社」とピシャリと言い放つ。これが、第1話で提示される本作の当初の方向性のように感じられる。実際の警察が本当にこうした場所かは、筆者は警察官になったことはないので分からない。重要なのは、それまでの「太陽へほえろ」を始めとする自由な刑事ドラマを逆手に取り、そうした理想像の中の刑事と現実のギャップに苦悩する等身大の青年=青島を描く。それが何より当時は斬新であり、面白かったというのが、30年が経った今でもひしひしと伝わってくるし、30年経っても文句なく面白いのだ。
