『踊る大捜査線』1997年の第1回を見てみたら…刑事ドラマの“お約束”覆す名作だった
■ほのぼの脱力系刑事ドラマと思いきや…終盤にゾワッ!
そんな中でも、第1話はメインとなるのは殺人という凶悪事件だ。のちに自らも警察官の道を歩むことになる柏木雪乃(水野美紀)の父親がホテルで何者かに殺害される。先述したように、管内で起きた凶悪事件に意気揚々と現場に急行する青島だったが、「本店」の刑事たちに軽くあしらわれてしまい、刑事1日目からさまざまな雑用を押し付けられ、思い描いていた理想の刑事像は早くも崩壊する。
その雑用の一つとして押し付けられる形で、事件とはまるで関係なさそうな男・田中(近藤芳正)の取り調べをする青島。相手が以前の自分と同じサラリーマンということでシンパシーを感じたのか、自分は営業マンとしてマンネリした毎日に耐えられなくなり警察官になったが「ここは前と変わんないよ…」と本音を愚痴るのだった。
その後、殺人事件の容疑者が逮捕される。一件落着と思われたが、連行されていくその男が…田中だったのだ。初見の視聴者なら誰もがゾワッとするこのシーン。青島が思わずつめよると、田中は「本当は僕も毎日刺激なかったんだ…」とポツリ。刺激を求めて空き巣を繰り返し、見つかってしまい誤って相手を殺めてしまったのだ。刺激を求めて警察官になった青島と、刺激を求めて犯罪を繰り返した田中。実は2人はネガとポジの関係にあり、青島が田中のようになっていてもおかしくなかった、と言える。
コメディパートが多く、ほのぼの脱力系刑事ドラマとしても完成しそうだが、こうしたエッジの効いたサスペンス要素も盛り込まれる。これが『踊る大捜査線』が歴史的な大ヒットシリーズになった一因だろう。
■大ヒットがもたらした“皮肉”な展開
先述したとおり、本作はこの連ドラシリーズをきっかけに社会現象的な大ヒットを記録。ユースケや水野美紀など、本作以後に人気俳優となった逸材も少なくないし、またいかりやさんは本作での和久さん役で、コメディアンとしてのみならず俳優としても評価を高めた。
ただ、皮肉なことにシリーズの人気拡大とともに、劇場版などで起きる事件のスケールは拡大していき、青島自身の名ゼリフ「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」「どうして現場に血が流れるんだ!」などが示す通り、青島自身、事件にしっかりと絡んでいくことになる。依然として「本店VS所轄」という対立構造は残すが、当初にあった「ヒーローでない公務員刑事ドラマ」のイメージは瓦解してしまったように思える。
亡くなった和久さんは、第1話当時で定年まで後3ヵ月の60歳。気づけば58歳の青島も織田自身も、もうすぐ和久さんの年齢に追いつくことになる。『踊る』サーガに美しいフィナーレがあるとしたら、青島が和久さんのように、ヒーローになろうと気持ちがはやっている新人刑事を、冷静にいさめつつも引っ張っていく、そんな姿なのかもしれない。
(文:神尾祐介)
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』は公開中。
